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復讐の旅、開始!
34.胸の奥で感じた謎
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寒い…息苦しい………。水の中にでも入ってるみたいだ。
そんな感覚で目が覚めると、そこは図書館の管理人室だった。あれ?なんでここで寝てるんだ?
「おはようございます、ヤト様」
管理人の爺さんがベッドのすぐ横で挨拶をした。うっすらと汗が滲んでるし、どこか安心したような顔をしている。もしかして寒いのって俺だけか?
「お、おはよう…ございます………?爺さん、俺、ここで寝てたか?」
「いえ、様子がおかしかったので、ヴィンセント陛下が貴方をここに連れてきたのですぞ」
様子がおかしかった、か………。寝てる間にどうなってたんだろう、俺。
その俺を運んだらしいヴィンスの方を見ると、口を開けてポカーンとしていた。いやどういう心情だ?
「ヴィンス?その…どうしたんだ?」
「おっ、おまっ、おまっ……!」
「………?」
「お前、心臓は大丈夫なのか!?」
え、心臓?心臓が何か…………
………………?
うごいてない…………?
「えぇッ!?なんでッ!?お、俺死んでんの!?」
「やっぱ死んでんのか!?」
「そんなはず無いでしょうが。ヤト様が人間で無いと言うのなら、心臓が動かずとも生きられる種族なのでしょう」
そんな種族があるのか?でも、心臓が動いてなくとも体が動いて意識はある。それは事実だ。寒さも息苦しさも感じたし、俺自身に大きな変化があるようには感じられない。
むしろ、心臓が止まってる方が『当たり前』のような……
「……確かに、確信は無いけど大丈夫な気がする」
「マジかよ…」
感覚的に心臓の動かし方が分かる。いや、正確に言うとオンオフの切り替えが出来るの方が正しいか?胸の辺りに意識を集中すると、もう一度心臓は動き出した。
本当に、人間からどんどん離れていくな。あの時、この部屋で倒れそうになる程気持ち悪くなった時に感じた恐怖はきっと、俺がだんだんと人間から離れてバケモノの体と力が現れ始めたことへの恐怖だ。
一度落ち着いたところで管理人室を出ようとした時、俺がドアを開けようとドアノブに触れる前に勝手に開いた。開けたのは濃い紫の髪に桃色の目の女悪魔。黒いレースや宝石をあしらった豪華なドレスを着ている。俺よりも年下に見えるが、悪魔だからどうだろうな……
「あら、お客様がいらしてたのね」
「おや姫様、また爺を困らせにきたのですかな」
「違うわ、カウンターにお仕事が溜まってるから何かあったのかと思ったのよ」
あ、そっか。急に俺達が来たから仕事の邪魔になってたのか。そしてこの人はお姫様だったのか。高い身分の人なんだな…って、それを言うならヴィンスもグルーも王様か。
………ん?何か引っ掛かるな。
その引っ掛かりの正体は、次のヴィンスの一言で判明した。
「姫様ってことはグルージアの娘か?」
「はい!貴方はもしかして…獣人の国のヴィンセント陛下では?」
ぐ、グルーの娘!?子供がいたのか!?いやその前に奥さんいたのか!?えっ、えっ………?いやまぁ、王様だもんな!(?)跡継ぎを作るのは一応義務なのかもしれないけど…よく子持ちで俺に惚れてるとか言えたな……。
もしかして、グルーが俺に知られたくなかったのってこの事か?
部屋に戻って夕飯を食べた。正直さっきのことが気になって味どころじゃない。俺の心臓のことと、グルーの子供のこと。
正直俺の方はどうでもいい。動かせるし止められるし、それだけ。今のところデメリットも何も無いし、考えるのは後回しで全然問題無い。
それよりもグルーの事だ。子供がいるなら配偶者も…王妃もいるはずだ。もしかしたら側室だっていてもおかしく無い。そんな人が会って間もない俺に『惚れてる』なんて簡単に言ってもいいものか?
グルーにとっては結婚も子づくりも仕事の一つ?政治的な理由だけの関係?俺に向けたような愛おしそうな目は、家族に向けているのか?
そんなことを考えながら夕飯は食べ終わった。正直何を食べたか、どんな味だったかも覚えていない。ただ、考え事をして終わった。
「お前、ずっと上の空だったな」
「ん?あぁ…、グルーに子供がいるってビックリしたから……」
「別にアイツ二百年は王様やってんだろ?なんもおかしくは無ぇよ。オレだって本当なら番がいる歳だし」
確かに、人間の寿命を越える年月を過ごしてずっと独り身なのも違うかも。二百年、か。人間からしたら相当昔のことなのに、俺はそれが長い時間だと感じる事が出来ない。
「…そう言えば、獣人の寿命って何年?」
「個人差が大きいからなんとも言えねぇが…短命のヤツは五十年、長くても二百いかないくらいか?」
「ヴィンスの…狼の寿命は?」
「どれだけ長く生きても七十が限度だな。ほとんどの狼は…五十過ぎれば長生きだ」
五十か…短いな。でも、復讐を果たした後も一緒にいられるとは限らない。これでもヴィンスは王様だもんな。
「……風呂入ってくる」
唐突に感じた不安を悟られないように、逃げるように俺はヴィンスから離れた。
風呂に入り、お湯で頭を冷やすなんて矛盾したことをして落ち着きを取り戻した。最近の俺は本当にどうしたんだ?酷く心が弱ってる。
風呂上がりにバスローブを着て濡れた頭をタオルで拭きながら部屋に戻ると、部屋には魔王の姿じゃ無いグルーがソファーの横で立っていた。
「グルー?」
「っ…!その、いくつかの報告と、私のことをきちんと説明しに来ました」
そう言って曇った顔をするグルーは『魔王』なんて言葉が似合わないくらいに弱々しく見えた。
ちゃんと聞かないと。今までのグルーと魔王のグルー、どっちが本来の彼なのかを。そして、俺に何を隠しているのかを。
そんな感覚で目が覚めると、そこは図書館の管理人室だった。あれ?なんでここで寝てるんだ?
「おはようございます、ヤト様」
管理人の爺さんがベッドのすぐ横で挨拶をした。うっすらと汗が滲んでるし、どこか安心したような顔をしている。もしかして寒いのって俺だけか?
「お、おはよう…ございます………?爺さん、俺、ここで寝てたか?」
「いえ、様子がおかしかったので、ヴィンセント陛下が貴方をここに連れてきたのですぞ」
様子がおかしかった、か………。寝てる間にどうなってたんだろう、俺。
その俺を運んだらしいヴィンスの方を見ると、口を開けてポカーンとしていた。いやどういう心情だ?
「ヴィンス?その…どうしたんだ?」
「おっ、おまっ、おまっ……!」
「………?」
「お前、心臓は大丈夫なのか!?」
え、心臓?心臓が何か…………
………………?
うごいてない…………?
「えぇッ!?なんでッ!?お、俺死んでんの!?」
「やっぱ死んでんのか!?」
「そんなはず無いでしょうが。ヤト様が人間で無いと言うのなら、心臓が動かずとも生きられる種族なのでしょう」
そんな種族があるのか?でも、心臓が動いてなくとも体が動いて意識はある。それは事実だ。寒さも息苦しさも感じたし、俺自身に大きな変化があるようには感じられない。
むしろ、心臓が止まってる方が『当たり前』のような……
「……確かに、確信は無いけど大丈夫な気がする」
「マジかよ…」
感覚的に心臓の動かし方が分かる。いや、正確に言うとオンオフの切り替えが出来るの方が正しいか?胸の辺りに意識を集中すると、もう一度心臓は動き出した。
本当に、人間からどんどん離れていくな。あの時、この部屋で倒れそうになる程気持ち悪くなった時に感じた恐怖はきっと、俺がだんだんと人間から離れてバケモノの体と力が現れ始めたことへの恐怖だ。
一度落ち着いたところで管理人室を出ようとした時、俺がドアを開けようとドアノブに触れる前に勝手に開いた。開けたのは濃い紫の髪に桃色の目の女悪魔。黒いレースや宝石をあしらった豪華なドレスを着ている。俺よりも年下に見えるが、悪魔だからどうだろうな……
「あら、お客様がいらしてたのね」
「おや姫様、また爺を困らせにきたのですかな」
「違うわ、カウンターにお仕事が溜まってるから何かあったのかと思ったのよ」
あ、そっか。急に俺達が来たから仕事の邪魔になってたのか。そしてこの人はお姫様だったのか。高い身分の人なんだな…って、それを言うならヴィンスもグルーも王様か。
………ん?何か引っ掛かるな。
その引っ掛かりの正体は、次のヴィンスの一言で判明した。
「姫様ってことはグルージアの娘か?」
「はい!貴方はもしかして…獣人の国のヴィンセント陛下では?」
ぐ、グルーの娘!?子供がいたのか!?いやその前に奥さんいたのか!?えっ、えっ………?いやまぁ、王様だもんな!(?)跡継ぎを作るのは一応義務なのかもしれないけど…よく子持ちで俺に惚れてるとか言えたな……。
もしかして、グルーが俺に知られたくなかったのってこの事か?
部屋に戻って夕飯を食べた。正直さっきのことが気になって味どころじゃない。俺の心臓のことと、グルーの子供のこと。
正直俺の方はどうでもいい。動かせるし止められるし、それだけ。今のところデメリットも何も無いし、考えるのは後回しで全然問題無い。
それよりもグルーの事だ。子供がいるなら配偶者も…王妃もいるはずだ。もしかしたら側室だっていてもおかしく無い。そんな人が会って間もない俺に『惚れてる』なんて簡単に言ってもいいものか?
グルーにとっては結婚も子づくりも仕事の一つ?政治的な理由だけの関係?俺に向けたような愛おしそうな目は、家族に向けているのか?
そんなことを考えながら夕飯は食べ終わった。正直何を食べたか、どんな味だったかも覚えていない。ただ、考え事をして終わった。
「お前、ずっと上の空だったな」
「ん?あぁ…、グルーに子供がいるってビックリしたから……」
「別にアイツ二百年は王様やってんだろ?なんもおかしくは無ぇよ。オレだって本当なら番がいる歳だし」
確かに、人間の寿命を越える年月を過ごしてずっと独り身なのも違うかも。二百年、か。人間からしたら相当昔のことなのに、俺はそれが長い時間だと感じる事が出来ない。
「…そう言えば、獣人の寿命って何年?」
「個人差が大きいからなんとも言えねぇが…短命のヤツは五十年、長くても二百いかないくらいか?」
「ヴィンスの…狼の寿命は?」
「どれだけ長く生きても七十が限度だな。ほとんどの狼は…五十過ぎれば長生きだ」
五十か…短いな。でも、復讐を果たした後も一緒にいられるとは限らない。これでもヴィンスは王様だもんな。
「……風呂入ってくる」
唐突に感じた不安を悟られないように、逃げるように俺はヴィンスから離れた。
風呂に入り、お湯で頭を冷やすなんて矛盾したことをして落ち着きを取り戻した。最近の俺は本当にどうしたんだ?酷く心が弱ってる。
風呂上がりにバスローブを着て濡れた頭をタオルで拭きながら部屋に戻ると、部屋には魔王の姿じゃ無いグルーがソファーの横で立っていた。
「グルー?」
「っ…!その、いくつかの報告と、私のことをきちんと説明しに来ました」
そう言って曇った顔をするグルーは『魔王』なんて言葉が似合わないくらいに弱々しく見えた。
ちゃんと聞かないと。今までのグルーと魔王のグルー、どっちが本来の彼なのかを。そして、俺に何を隠しているのかを。
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