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復讐の旅、開始!
35.悪魔の王
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俺とヴィンスが隣に座り、グルーは目の前のソファーに座って項垂れていた。何かに怯えるような…不安そうに揺れる目を俺に向けて。
「グルー、何がそんなに怖い?」
「っその…私はこの期に及んで貴方に嫌われる事が怖いのです。情けない話ですが……」
「つまり、俺が嫌悪するようなことをしたってことだな?」
「はい………」
姿も口調も出会った時の、旅をしてた時のものだ。それでも雰囲気は違って酷く怯えていることが分かる。人から恐れられるグルーが、俺に嫌われることを恐れている。
「そう…とりあえず話してもらおうか。俺がどう思うか、聞かないことには始まらない」
「そうですね、どこから話しましょうか………」
ーーーーーグルーーーーーー
かつての私は王家の直系に生まれただけの、ずっと下の王子だった。王位継承権も無く、ただ『義務』として教育を受けるだけ。
そんな日常が変わってしまったのは私が二十歳を迎える前の頃だった。
悪魔は老いは遅いが成長は人と大差無い。既に二次性徴を迎えていた私に次に来たのは、『魔王の器』にのみ現れる『三次性徴期』だった。
体は一回り大きくなり、肌は血色の悪い褐色肌に、体中に魔力の刻印が刻まれ、支配の力に支配された。
ある日突然に起こった体の変化に耐えきれず、言葉も発せぬ程の苦痛に苛まれた私は一番身近にいたメイドを襲い孕ませた。
長く生きる悪魔にとって二十歳程度の歳の差は兄弟より近いことだってある。現に第一王子である兄は私と三百余年も先に産まれている。ただ、私の暴力で出来た赤子は産まれることはなかった。
自身の身に起こった悲劇に嘆き、理性を失った私が母体諸共灰にしたからだ。
私が『魔王の器』であることは瞬く間に知れ渡り、私は王となるべく教育を受け始めた。
兄達を抑え王になる宿命を負った私にいい顔をしなかった兄達。特に王位継承権を持ち王となるべく幼少から育てられた第一王子は私を目の敵にした。
だから今度は、上の兄弟全てを殺した。
兄も姉も見境無く殺し、生きてる中では私が最も年長者になった。ユーリが産まれたのは、ちょうどそれから一年後。生き残りの兄弟は二人だけになった。
新たな王子は産まれなかった。それはーーー
ーーー私が王である父すら殺したから。
かつて、悪魔の力を蓄え他種族を侵略しようとしていた先王は私の手で葬られ、私は新たな王となった。
それからは政務に追われ、先王に従う者どもを屠り、たまの休みは『魔王の器』の直系を作るために使われた。そうして行くうちに私生児ばかりが増えたが、その子供を産んだ女は正妻にせず全て側室にした。
ただ、私の意思で誰かのところへ訪れることは無かった。側室の女も、その女が産んだ子も、等しく興味が無かったから。
そんな『魔王の器』の義務を果たすばかりの日々が変わったのは、私の最後の兄弟、ユーリの政策が私の域を遥かに超えていたことがきっかけだった。
いくら『魔王の器』と呼ばれても、それは力の問題だ。政は確実に私よりユーリが才覚を発揮していた。
私は彼を補佐官として側に置き、王の仕事を覚えさせた。次代の王にするために。
私は悟った。いくら強大な力があっても『王の資格がある』とは言えないのだと。
そうして私の二百年に渡る統治は終わり、兄と慕った人に利用された弟と私の子を持った哀れな女が残った。
ーーーーーヤトーーーーー
「…これが、私の隠していたことです。家族思いの貴方なら、きっと私の行いを嫌悪するでしょう」
えーっと、言いたいことは色々ある。けど、価値観が違うせいか言葉が上手くまとめられない。
とりあえず思ったこと全部吐き出すと………
家庭環境最悪にも程があるだろグルーにとってもその血縁者にとっても!しかも誰かが一方的に悪いなんて言えないし、グルーの人生その『魔王の器』ってやつに振り回されすぎだろ!そして敵対してないかもしれない兄弟まで見境無しに殺すのは後で恨まれてもおかしく無いよな!?ただその後も大変って言うか、血を残さないといけないとかあるかもしれないけどさぁ!しかも言い方的に強制させられてたみたいだし、休みくらい休ませてやれよ!いやまぁグルーにとって性行為が寛ぎになるならいい(かもしれない)けど…完全に義務的っぽい言い回しだったよな!?
………と、こんな感じ。つまり、話を聞いた上でもグルーが本当に悪いとは思えないってこと。
それと、確かに俺は家族思いだけど、だからといって家族に冷たく当たる人を見境無しに嫌いになるかってそうじゃないだろ。
「グルー、お前は俺を聖人君子とでも思ってるのか?」
「え…?」
「俺はお前が思ってるより人でなしだぞ?だって、俺は確かに家族は大事だけど…血縁の両親にはまったく興味がないんだからな」
俺とアキトの両親が『何者か』は気になる。でも、それは知的好奇心でしか無くて、家族に向ける情とは全く違う。なんだったら死んでても何も思わないだろう。
「俺は、家族が『家族』だから大切なんじゃなくて、ただ拾われたとこが恵まれてただけなんだ」
例え貧乏でも、それでも幸せに生きれたのはあの人たちが俺の家族だったからだ。
本当に…グルーは俺のことを買い被りすぎなんだよ!相手に理想がありすぎて幻滅するとかは聞くけど、相手が理想的に見えすぎて自信を無くすってなんだよそれ!俺にそんな価値無いだろ!?
「やめてください…貴方に受け入れて欲しいわけでも無いのです。私がした事が人間にとってどれだけ忌むべき行為か分かってます。私のした事は人間の王がした事と変わらない…いえ、それ以上だと思う人だっているでしょう」
「だって別に、グルーは俺に危害を加えないんだろ?ならいいよ」
その言葉にグルーは目を開き驚いていた。まぁ…自分勝手な発言だよな。でも俺は大切な人のこと以外は正直なんだっていい。それだけ俺にとってグルーは大きな存在になったってことだ。
「グルー、俺に惚れてるんだよな?」
「は、はい……」
「なら…俺と堕ちれるか?」
「もちろんです」
俺の提案にグルーは嬉しそうに照れくさそうに笑った。同じ目線にいれることがどれだけ嬉しいことか、グルーにも味わって欲しい。
大切な人のためなら俺だって『悪魔』になってやるさ。
「グルー、何がそんなに怖い?」
「っその…私はこの期に及んで貴方に嫌われる事が怖いのです。情けない話ですが……」
「つまり、俺が嫌悪するようなことをしたってことだな?」
「はい………」
姿も口調も出会った時の、旅をしてた時のものだ。それでも雰囲気は違って酷く怯えていることが分かる。人から恐れられるグルーが、俺に嫌われることを恐れている。
「そう…とりあえず話してもらおうか。俺がどう思うか、聞かないことには始まらない」
「そうですね、どこから話しましょうか………」
ーーーーーグルーーーーーー
かつての私は王家の直系に生まれただけの、ずっと下の王子だった。王位継承権も無く、ただ『義務』として教育を受けるだけ。
そんな日常が変わってしまったのは私が二十歳を迎える前の頃だった。
悪魔は老いは遅いが成長は人と大差無い。既に二次性徴を迎えていた私に次に来たのは、『魔王の器』にのみ現れる『三次性徴期』だった。
体は一回り大きくなり、肌は血色の悪い褐色肌に、体中に魔力の刻印が刻まれ、支配の力に支配された。
ある日突然に起こった体の変化に耐えきれず、言葉も発せぬ程の苦痛に苛まれた私は一番身近にいたメイドを襲い孕ませた。
長く生きる悪魔にとって二十歳程度の歳の差は兄弟より近いことだってある。現に第一王子である兄は私と三百余年も先に産まれている。ただ、私の暴力で出来た赤子は産まれることはなかった。
自身の身に起こった悲劇に嘆き、理性を失った私が母体諸共灰にしたからだ。
私が『魔王の器』であることは瞬く間に知れ渡り、私は王となるべく教育を受け始めた。
兄達を抑え王になる宿命を負った私にいい顔をしなかった兄達。特に王位継承権を持ち王となるべく幼少から育てられた第一王子は私を目の敵にした。
だから今度は、上の兄弟全てを殺した。
兄も姉も見境無く殺し、生きてる中では私が最も年長者になった。ユーリが産まれたのは、ちょうどそれから一年後。生き残りの兄弟は二人だけになった。
新たな王子は産まれなかった。それはーーー
ーーー私が王である父すら殺したから。
かつて、悪魔の力を蓄え他種族を侵略しようとしていた先王は私の手で葬られ、私は新たな王となった。
それからは政務に追われ、先王に従う者どもを屠り、たまの休みは『魔王の器』の直系を作るために使われた。そうして行くうちに私生児ばかりが増えたが、その子供を産んだ女は正妻にせず全て側室にした。
ただ、私の意思で誰かのところへ訪れることは無かった。側室の女も、その女が産んだ子も、等しく興味が無かったから。
そんな『魔王の器』の義務を果たすばかりの日々が変わったのは、私の最後の兄弟、ユーリの政策が私の域を遥かに超えていたことがきっかけだった。
いくら『魔王の器』と呼ばれても、それは力の問題だ。政は確実に私よりユーリが才覚を発揮していた。
私は彼を補佐官として側に置き、王の仕事を覚えさせた。次代の王にするために。
私は悟った。いくら強大な力があっても『王の資格がある』とは言えないのだと。
そうして私の二百年に渡る統治は終わり、兄と慕った人に利用された弟と私の子を持った哀れな女が残った。
ーーーーーヤトーーーーー
「…これが、私の隠していたことです。家族思いの貴方なら、きっと私の行いを嫌悪するでしょう」
えーっと、言いたいことは色々ある。けど、価値観が違うせいか言葉が上手くまとめられない。
とりあえず思ったこと全部吐き出すと………
家庭環境最悪にも程があるだろグルーにとってもその血縁者にとっても!しかも誰かが一方的に悪いなんて言えないし、グルーの人生その『魔王の器』ってやつに振り回されすぎだろ!そして敵対してないかもしれない兄弟まで見境無しに殺すのは後で恨まれてもおかしく無いよな!?ただその後も大変って言うか、血を残さないといけないとかあるかもしれないけどさぁ!しかも言い方的に強制させられてたみたいだし、休みくらい休ませてやれよ!いやまぁグルーにとって性行為が寛ぎになるならいい(かもしれない)けど…完全に義務的っぽい言い回しだったよな!?
………と、こんな感じ。つまり、話を聞いた上でもグルーが本当に悪いとは思えないってこと。
それと、確かに俺は家族思いだけど、だからといって家族に冷たく当たる人を見境無しに嫌いになるかってそうじゃないだろ。
「グルー、お前は俺を聖人君子とでも思ってるのか?」
「え…?」
「俺はお前が思ってるより人でなしだぞ?だって、俺は確かに家族は大事だけど…血縁の両親にはまったく興味がないんだからな」
俺とアキトの両親が『何者か』は気になる。でも、それは知的好奇心でしか無くて、家族に向ける情とは全く違う。なんだったら死んでても何も思わないだろう。
「俺は、家族が『家族』だから大切なんじゃなくて、ただ拾われたとこが恵まれてただけなんだ」
例え貧乏でも、それでも幸せに生きれたのはあの人たちが俺の家族だったからだ。
本当に…グルーは俺のことを買い被りすぎなんだよ!相手に理想がありすぎて幻滅するとかは聞くけど、相手が理想的に見えすぎて自信を無くすってなんだよそれ!俺にそんな価値無いだろ!?
「やめてください…貴方に受け入れて欲しいわけでも無いのです。私がした事が人間にとってどれだけ忌むべき行為か分かってます。私のした事は人間の王がした事と変わらない…いえ、それ以上だと思う人だっているでしょう」
「だって別に、グルーは俺に危害を加えないんだろ?ならいいよ」
その言葉にグルーは目を開き驚いていた。まぁ…自分勝手な発言だよな。でも俺は大切な人のこと以外は正直なんだっていい。それだけ俺にとってグルーは大きな存在になったってことだ。
「グルー、俺に惚れてるんだよな?」
「は、はい……」
「なら…俺と堕ちれるか?」
「もちろんです」
俺の提案にグルーは嬉しそうに照れくさそうに笑った。同じ目線にいれることがどれだけ嬉しいことか、グルーにも味わって欲しい。
大切な人のためなら俺だって『悪魔』になってやるさ。
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