召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

40.意思を持った炎の魔法石

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 尻に尋常じゃない違和感を感じての目覚め。あー…そうだ、そういえばヴィンスとグルーで処女喪失したんだ。


 …………って冷静でいられるかッ!

 処女喪失が3Pでキメセクっておかしいだろ!?なんかこう…もっとさ……!初めてってもうちょっと緊張感あるものじゃ無いのか!?

 そんなことを考えながら飛び起きた。そこは気を失う前と同じ部屋、同じベッドだった。盛大に汚したはずだが……後始末が早いな。いや、どれくらい気絶してたかも分からないか。

「よぉ、結構早ぇお目覚めだな」
「……ヴィンス、俺、どれくらい寝てた?」
「さぁな。一時間は経って無ぇと思うぜ」

 そこまで眠ってたわけじゃ無いんだな。……よく一時間で全部片付けたな。ナカに出されたのも、びしゃびしゃになったベッドも全部片付け終わっている。そういえばあのベッド、どうやって片付けたんだ………?





 体を起こして、重い腰を何とか持ち上げて立ち上がった。水だけ飲んで、ユーリが捕まっていたところに向かった。そこにグルーもいるらしい。まぁ、俺が用があるのはユーリじゃなくて………



「おや、お目覚めですか」
「あ、あぁ…その……どんな状況?」

 グルーのスキルで拘束されたままのユーリを見下すグルー。ただ…その………ユーリがげっそりしてるんだよな。

「兄様が……こんな人だとは思いませんでした……………」
「だから何があった」
「本当に気付いていなかったのですね。貴方は兄様に騙されていたのですよ。行為中の姿も声も全てこちらには筒抜けでした」

 ………………は?

 ま、待ってくれどういうことだ。姿も声も筒抜け?声はともかく、あの大窓は壁になってたはず…………

 振り返ってみると、こっちからは窓のままで部屋の中がバッチリ見えていた。えっと、つまり、俺は処女喪失の瞬間を相手の身内にバッチリ見られてたってことか。あれだ、マジックミラー号の逆バージョンみたいなものだ。

 ……………


「何やってんだよグルー!?」
「おかげでヤトに対する誤解は解けて、私の退位も認めていただけましたよ」
「そうじゃなくてな!?」
「おい待てオレとばっちりじゃねぇかよ!?」

 流石に俺もヴィンスもグルーに怒った。ヴィンスも知らなかったのか。本当に……グルーも悪い顔を隠さなくなってきたな?

「グルーとはしばらくシない。反省しろ」
「ふふっ、『二度とシない』では無いようで安心しました」

 なっ………!本当にいい性格してるな!?




 ……っと、ここに来た一番の理由を忘れるとこだった。俺がユーリに捕まってた時、腕をガチャガチャしてたら錠が外れたけど、やっぱりそれっておかしいよな。
 床に転がる手錠を見ると、綺麗な直線で割れていた。まるで熱で切ったみたいに切り口が変形している。

 こんなこと、俺には出来ないぞ?やっぱりこれは…………


「もう一人、人の情事を覗く悪趣味なやつがいるようだな」
「あの、それじゃあ私の趣味で覗きをしたみたいな言い方じゃありませんか?というより、もう一人とは?」

 速攻で訂正するユーリ。確かにユーリは嫌でも見せられたの方が正しいか。


 だけど今はそれどころじゃ無い。

 俺は炎系の魔法は使えない。使う時は耳飾りに付いた魔法石を使う必要がある。でも、俺は魔法はあの時使っていなかった。

 ようするに、この魔法石が一人でに魔法を使ったわけだ。



 …………って、そんなことあるはずも無く。




 俺は耳飾りを外すとそのまま床に思いっきり叩きつけて破壊した。


「いってぇな!?って、あ…………」


 割れた魔法石から現れた、髪と目の色以外は俺と瓜二つな男。見たこともない乳白色のロングコートを着て、僅かに炎を纏っている。

「……………」
「……………」

 しばらくの睨み合い。ヴィンスが「だ、誰だお前……?」と言うまで誰もがポカーンとしていた。
 間違いない、コイツは………


「……アキト、どういうつもりだ?」


 十年前に行方をくらました俺の兄だ。







 この世界にいる事は気付いてた。コイツが俺の行動を見ていることも何と無く勘付いていた。が、ここまで至近距離にいるのは想定外だ。

「よ、よぉ、久しぶりだな、俺のよる………」
「久しぶりは俺だけだろうが。お前、なんでずっと隠れてたんだ?」
「隠れてたワケじゃ……ただ、会いづらかったんだ。お前、人間じゃ無いってこと忘れてたからな。聞かれても説明出来ないから、言葉を交わすのが怖かったんだよ」

 クソッ、ちょうど聞こうとしていたことを先手を打たれて聞けなくなった。

「待て、俺が忘れてたって……アキトは記憶喪失じゃ無かったのか?」
「まぁな。本当の名前も過去も覚えてる。流石に歳は数えきれなかったけどな」

 そういえば獣人の国に入ったばかりの時に見た夢、あの時にも言ってたな。やっぱりあの夢はただの夢じゃなくて記憶なのかもしれない。誕生日は満月の日だってことしか知らないとか、どこかで神官をしていたとか……
 元の世界にいた時、俺達の生まれた日なんて分からないし戸籍も見つからなくて、二人揃って八月十五日を誕生日(仮)にしていた。

「本当の名前……昔、お前が記憶を失ってから初めて発した言葉が俺の名前だ。覚えてるか?」
「あかつき………」

 なんとなく覚えてる。今覚えてる一番古い記憶だ。
 病院のベッドで目が覚めて、同じ部屋に入院してたアキトを見て思い浮かんだ言葉だ。その言葉を聞いたアキトは俺の手を握りしめて『ヨル』と呼んだ。


 そうだ、これがあの夢の信憑性を確認できるかもしれない……!


「俺の、本当の名前は………」
「お前はヨル。俺達は同じ日の別の時間に突然現れたんだ。俺は夜明けに、お前は深夜に……」
「……ヨル?よいじゃなくてか?」

「なんで、それ………」

 やっぱり当たりだ。あの夢は俺の失った記憶の一部だった。

「俺達が人じゃないことは分かった。でも、種族のこと以外は……教えてくれるんだよな?」
「長くなるから要点だけなら」

 これでようやく俺のことが少しは分かる。なのになんでだろう……少し怖い。


 きっと、アキトが見たことない怯えた笑顔をしているからなのかも。
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