召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

44.氷のような龍・ヒイラギ

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 トンネルを抜けて崖沿いの長い階段を時間をかけて下りた。トンネルを出た先が結構な高所だったから、一番下に着く頃には完全に日が落ちて外は真っ暗になった。


「さて、龍神達のところに行くが…その前に近くの宿に泊まるか」
「分かった。でもここって完全に森の中だよな?近くの宿って…………ん?」


 急に辺りが霧に包まれた。明らかに異常な霧だ。

 ついさっきまではただの暗い森で、視界も良好だった。それなのに周りの全てが見えなくなるような濃い霧が立ち込め、気付けば他のみんなを見失っていた。

「あれっ、みんな………!どこ……………!」

 マズい、服が霧を吸って重いし冷たいし…体力が奪われる…………


「久しいな、宵の君よ」


 ………え?

 やけに透き通った冷たい氷のような声と共に辺りの霧は一気に晴れた。森の中にいたはずなのにそこは湖の中央にある小島で、崖は遠目にうっすら見える程度まで離れていた。

 そして氷のような声の主。長い白髪の毛先は薄い緑色にグラデーションされていて、鮮緑の瞳に見える瞳孔は鋭く尖った獣のような…龍のような形をしている。
 龍のような?左右の額から生えている氷柱のような角と引き摺るほど大きな同色の尾。もしかして……

「四季の龍…龍神のヒイラギ、か?」
「………記憶が、戻っている訳では無さそうだな。暁の君から聞いたか」

 あ、当たってるんだ。ただ氷柱っぽい角とか雪っぽい尻尾とか、やけに白い肌とかが冬っぽいなって思っただけなんだけど。まぁ、人違いじゃなくて良かった。

「ところでここは?さっきと違う場所に来てるんだけど……」
「我が連れてきた」
「……同行者は?」
「置いてきた」

 おいっ!いきなり消えてアイツらびっくりしないか?



 そんな心配をしてる間にヒイラギが小島の小屋に俺を招き入れた。が……サッム!?え、何ここ冷蔵庫!?寒いしさっきの霧で服が濡れて余計に寒くなる。

「ひ、ヒイラギ……寒い………」
「む?あぁ…月初めだったな。だがすまない、我は火を扱えぬのだ」

 あれ、結構優しい?本当に申し訳そうな顔をしていて、吊り気味の目が垂れて見える。っていうか、コイツも俺の体温のこと知ってるんだ?

「我の体温は低くお主には分け与えられん。すまぬが毛布で今夜は凌いでくれぬか」
「は、はぁ……って、なんで俺をここに?」
「いくつか、聞きたいことがある。それと……モミジから神器を預かっているから返そうと」

 え、アキトがモミジに貸しっぱなしにしてた俺の神器?なんでヒイラギが…っていうか何でここで?わざわざ借りた本人モミジじゃなくてヒイラギがここに来て返すって何か訳と言うか裏がありそうな………

「疑問に思うのも仕方あるまい。だが我らが住まう場で……他の者がいる場で返すわけにはいかないのだ」
「そう…そっか。それより順番に消化していこうか。俺に聞きたいことって?」

 やっぱり訳アリか。他の人が居る場で返せない理由は気になるが…何か周りに迷惑を掛けるような事なんだろうとは予測できる。



 毛布を借りて椅子に座った。

 毛布もこの薄い一枚しかないようだし、見た感じ本当に小さな小屋って感じだ。小屋にあるのはベッドと暖炉、テーブルと二脚の椅子くらいだ。借りてる毛布もベッドに置かれていた物だ。

「のぉ、宵の君。お主の記憶はどれ程残っている?」
「直近の十数年、記憶を失う二千年前……?のことは何一つ思い出せない。ただ、この国に来た時に懐かしさを感じた。完全に消えてるわけじゃ無いとは思うが……」
「そうか……、暁の君に聞いた通りだな」

 一応アキトから話は聞いてたけど信じるのは難しかったのだろうか。本当のことなのか確認するように聞いてきたようだ。
 昔の友人……どんな風に付き合っていたのか見当もつかないが、それなりに仲は良かったんだろうな。俺が『思い出せない』と言ったら露骨にショックを受けていた。

「その、俺も思い出したいと思ってるんだ。アキトに…アカツキに聞いた感じ、結構酷いことがあったみたいな匂わせはされたが、それでも思い出したい。俺のためにも、お前達のためにも………」
「……そうか、お主はどうやら昔の己を失っても変わることは無いらしい。昔のままの優しい奴だ」
「俺…変わってないのか?」

 俺の問いにヒイラギは儚い笑顔を向けた。

「変わってなどおらぬ。己や友の為となれば平気で苦痛を選ぶ……。全く、変わってなどおらぬぞ」

 段々とヒイラギの声は震えていった。そして、気付けばヒイラギは静かに涙を流していた。
 どこか神秘とも取れるほどに美しい涙だ。それと同時に心が凍てつくような苦しみが伝わってくる。


 嫌でも悟ってしまう。ヒイラギが…彼らが求めている俺は『夜人』ではなく『宵』なのだと。


 こう感じるって分かってた。こうなるって、分かってた。俺が覚えてないことで旧友達は『また昔のように』なんて願いを叶えられないのだから。俺一人、昔のままじゃないから。

 ヒイラギは俺は変わっていないと言ったが、そんなわけ無い。だって俺からしたら龍神なんて存在すら知らなかった『他人』なんだから。
 ヒイラギも感じたんだろう。俺は…『宵』は未だいないと。

「ごめん、ヒイラギ……。泣かないでくれ。いつか必ず全部思い出してちゃんとみんなのとこに戻るから………」

 俺は無意識に立ち上がり向いの椅子に座るヒイラギを抱きしめた。正直、どうすればいいのかサッパリ分からない。けど、今はせめて安心させたいと思うことだけが俺のできることだ。

「離れなさい、宵の君。我の体は冷たい、お主が凍えてしまう……」
「ごめん、俺が離れたく無い。なんか、分からないけど、俺はお前を悲しませたく無いんだ。だから………」

「………氷のように冷たい我に触れるのは、今も昔もお主だけだ」

 ヒイラギは震えた手でそっと俺を抱きしめ返した。

「不安はお主もだろうに……。宵の君よ、再び我と友になってはくれぬだろうか。記憶が戻るその時まで、今のお主と友になれるだろうか?」
「……そうだな。全て思い出して元の俺になるまで、今は今で仲良くしようぜ。まぁ…多少は変わってるかもだけど……」
「ふっ、それを言うならば我もお主の前で涙を流したことなど無かったぞ?」
「そ、そうなのか………」

 凄く綺麗だったな、ヒイラギの泣いてる顔。まぁ、また見たいかと言われると泣かれるのは嫌だけど……。
 でも、わざわざこんな事を聞きたくて二人きりになろうとしたなら案外可愛い人なのかも知れないな。



 それはそうと、やっぱり寒いモンは寒い!
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