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復讐の旅、開始!
45.人の形した人ならざる者
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俺が寒さで凍えてる事に気付いたヒイラギはすぐに俺を引っ剥がし、ベッドに運ばれ毛布でグルグル巻きにされた。
「だから離れなさいと……」
ヒェッ、静かに怒るヒイラギの圧が凄くて怖い……。儚げ美人が怒ると怖いな……。
ヒイラギが椅子を一脚ベッドの方に向けて座ると、大袈裟なくらいに綺麗な姿勢で俺の顔をジッと見つめてきた。
それにしてもヒイラギの格好は見てるだけで寒いな……。
丈がくるぶしまである白いドレスみたいな服は光が当たると体の輪郭が見える程薄いし、何よりノースリーブだ。一応は薄水色のストールを掛けてるけどそれも薄い。ストールと同じ色の帯がウエストに巻かれてるけど、それも薄くて腹巻きにもならないだろう。サンダルも靴底以外はほとんど紐だ。
なんか……龍『神』って感じの服装だけどさ、見てるだけでも風通しが良すぎて冷える気がする。ヒイラギの場合は血色も良いとは言えないから余計に氷の側にいるみたい。
「どうかしたか?」
「いや……ヒイラギは寒く無いのか?」
「我は寒いとは感じぬ。冷気は感じ取れるが凍えることは無い。あぁだが…熱気は苦手だ。人肌以上の熱に触れれば火傷も有り得る」
本当に『冬の龍』なんだな。熱いのどころか温かいのもダメなのか。それはそれで苦労しそうな体質だ。
それにしても、神器を返そうとする素振りが無いな。もしかして預かってるってだけで返すつもりじゃ無かったとか?いやそんな事は無いか。
「なぁ、神器って……」
「説明していなかったか。お主の神器は明日の昼間に返却する。正直、お主が本来の力を取り戻した時に何が起こるのか分からぬのだ。だが恐らく体温に影響はあるだろう。これ以上凍えるようであれば日の光で緩和し、反対に人間の体温に慣れず熱を感じるようであれば我が治める」
えっ、神器を…力を取り戻すってそんなにリスキーな事なのか?何となく神器が戻れば力が戻る程度しか考えてなかったけど、最後の一つを返されて力が完全に戻ったら何かあるのか?
代償……とは違うか。後遺症?はずっと続く奴だよな。副作用が一番近いか?
ヒイラギは体温に影響があるだろうと考えてるけど、それ以外にも何があってもおかしく無いって事だよな。
酷い痛みでも感じるか、あるいは意識が朦朧とするか。体調不良として現れるかも知れないな。ともかく、それくらいは覚悟しておいた方が良さそうだ。
そんな不安定な覚悟をしてると、ヒイラギが俺をポスンとベッドに倒した。
「明日はどうなるか分からぬ。今は早く休み万全にしておくべきだろう」
「……そうだな。けど眠れそうに無い」
「ふむ…ならば眠りに着くまで話をしよう。我ら四季の龍と暁の君のことを」
確かに俺もそれは気になるな。どんな情報でもいいから欲しい。記憶を取り戻すきっかけになるかも知れないしな。
それからヒイラギは子供に読み聞かせるようにポツポツと語り出した。
「その昔、我ら龍含め人の形をした者が未だ存在していないほど遥か昔のことだ。温かな光で世を照らしていた太陽の最も当たる山頂に、一人の青年が突如現れた。四体の龍は不思議そうに彼を遠目で見ていると、あっという間に夜の帷が下りた。彼は静かな月明かりが浮かぶ湖の側、月光が照らす地に現れた青年を見つける。日光のもと現れた青年と月光のもと現れた青年。二人は鏡合わせのように瓜二つであった」
俺とアキトが誕生した時のことっぽいな。山頂と湖、俺たちが産まれた…現れた場所は違うらしい。双子って訳じゃないんだな。
「常に笑顔を絶やさぬ日の人と決して笑うことの無かった月の人。彼らは共に過ごす中で段々と中和されて行った。そしてその様子を遠目で見ていた龍達は二人の微笑ましい姿に憧れ、百余年の修行を経て人の姿を手に入れたのだ」
俺って昔は笑わなかったのか?とか気になるところはあるけど、俺達の姿に憧れて百年以上も修行する龍神達って凄いな。人型に凄い執着だ。まぁ、成功してるからこうやって人の姿でそこに座ってるんだろうけど。
「人の姿を手に入れた龍達は喜びのあまり二人に会いに行った。すると二人は『やっと』とでも言うかのように我らを迎え入れ、瞬く間に笑い合う友となったのだ。我らの監視や目論見など、とっくのとうに知られていたと言う訳だな。………それが我ら四季の龍と太陽と月の化身の邂逅で、全ての始まりだ」
ちょうどヒイラギの語りがひと段落付いたところで、俺はそのまま静かに眠りに着いた。耳触りの良い自然の音の様な声は睡眠導入にちょうど良い。
●●●
これは…夢だ。さっき、俺が眠るまでヒイラギが語ってくれた昔の記憶。
俺の……ヨイの最初の記憶。
月の光が少しずつ人の姿に変わって行く。足から身体、腕、頭………最後に黒い翼。
夜の帷を纏った、月色の瞳の人ならざる者。
最初に見たものは望月。次に見たのは、揺らめく炎の髪を持つ白い人。燃える髪と燃える瞳。俺はそれが、最初に見た月よりも美しいと感じたんだ。
ーー彼が口を開くまでは。黙っていれば、美しいだけだったのになぁ。
なぁ?俺のアカツキ。
「だから離れなさいと……」
ヒェッ、静かに怒るヒイラギの圧が凄くて怖い……。儚げ美人が怒ると怖いな……。
ヒイラギが椅子を一脚ベッドの方に向けて座ると、大袈裟なくらいに綺麗な姿勢で俺の顔をジッと見つめてきた。
それにしてもヒイラギの格好は見てるだけで寒いな……。
丈がくるぶしまである白いドレスみたいな服は光が当たると体の輪郭が見える程薄いし、何よりノースリーブだ。一応は薄水色のストールを掛けてるけどそれも薄い。ストールと同じ色の帯がウエストに巻かれてるけど、それも薄くて腹巻きにもならないだろう。サンダルも靴底以外はほとんど紐だ。
なんか……龍『神』って感じの服装だけどさ、見てるだけでも風通しが良すぎて冷える気がする。ヒイラギの場合は血色も良いとは言えないから余計に氷の側にいるみたい。
「どうかしたか?」
「いや……ヒイラギは寒く無いのか?」
「我は寒いとは感じぬ。冷気は感じ取れるが凍えることは無い。あぁだが…熱気は苦手だ。人肌以上の熱に触れれば火傷も有り得る」
本当に『冬の龍』なんだな。熱いのどころか温かいのもダメなのか。それはそれで苦労しそうな体質だ。
それにしても、神器を返そうとする素振りが無いな。もしかして預かってるってだけで返すつもりじゃ無かったとか?いやそんな事は無いか。
「なぁ、神器って……」
「説明していなかったか。お主の神器は明日の昼間に返却する。正直、お主が本来の力を取り戻した時に何が起こるのか分からぬのだ。だが恐らく体温に影響はあるだろう。これ以上凍えるようであれば日の光で緩和し、反対に人間の体温に慣れず熱を感じるようであれば我が治める」
えっ、神器を…力を取り戻すってそんなにリスキーな事なのか?何となく神器が戻れば力が戻る程度しか考えてなかったけど、最後の一つを返されて力が完全に戻ったら何かあるのか?
代償……とは違うか。後遺症?はずっと続く奴だよな。副作用が一番近いか?
ヒイラギは体温に影響があるだろうと考えてるけど、それ以外にも何があってもおかしく無いって事だよな。
酷い痛みでも感じるか、あるいは意識が朦朧とするか。体調不良として現れるかも知れないな。ともかく、それくらいは覚悟しておいた方が良さそうだ。
そんな不安定な覚悟をしてると、ヒイラギが俺をポスンとベッドに倒した。
「明日はどうなるか分からぬ。今は早く休み万全にしておくべきだろう」
「……そうだな。けど眠れそうに無い」
「ふむ…ならば眠りに着くまで話をしよう。我ら四季の龍と暁の君のことを」
確かに俺もそれは気になるな。どんな情報でもいいから欲しい。記憶を取り戻すきっかけになるかも知れないしな。
それからヒイラギは子供に読み聞かせるようにポツポツと語り出した。
「その昔、我ら龍含め人の形をした者が未だ存在していないほど遥か昔のことだ。温かな光で世を照らしていた太陽の最も当たる山頂に、一人の青年が突如現れた。四体の龍は不思議そうに彼を遠目で見ていると、あっという間に夜の帷が下りた。彼は静かな月明かりが浮かぶ湖の側、月光が照らす地に現れた青年を見つける。日光のもと現れた青年と月光のもと現れた青年。二人は鏡合わせのように瓜二つであった」
俺とアキトが誕生した時のことっぽいな。山頂と湖、俺たちが産まれた…現れた場所は違うらしい。双子って訳じゃないんだな。
「常に笑顔を絶やさぬ日の人と決して笑うことの無かった月の人。彼らは共に過ごす中で段々と中和されて行った。そしてその様子を遠目で見ていた龍達は二人の微笑ましい姿に憧れ、百余年の修行を経て人の姿を手に入れたのだ」
俺って昔は笑わなかったのか?とか気になるところはあるけど、俺達の姿に憧れて百年以上も修行する龍神達って凄いな。人型に凄い執着だ。まぁ、成功してるからこうやって人の姿でそこに座ってるんだろうけど。
「人の姿を手に入れた龍達は喜びのあまり二人に会いに行った。すると二人は『やっと』とでも言うかのように我らを迎え入れ、瞬く間に笑い合う友となったのだ。我らの監視や目論見など、とっくのとうに知られていたと言う訳だな。………それが我ら四季の龍と太陽と月の化身の邂逅で、全ての始まりだ」
ちょうどヒイラギの語りがひと段落付いたところで、俺はそのまま静かに眠りに着いた。耳触りの良い自然の音の様な声は睡眠導入にちょうど良い。
●●●
これは…夢だ。さっき、俺が眠るまでヒイラギが語ってくれた昔の記憶。
俺の……ヨイの最初の記憶。
月の光が少しずつ人の姿に変わって行く。足から身体、腕、頭………最後に黒い翼。
夜の帷を纏った、月色の瞳の人ならざる者。
最初に見たものは望月。次に見たのは、揺らめく炎の髪を持つ白い人。燃える髪と燃える瞳。俺はそれが、最初に見た月よりも美しいと感じたんだ。
ーー彼が口を開くまでは。黙っていれば、美しいだけだったのになぁ。
なぁ?俺のアカツキ。
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