召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

52.誰を選ぶか、どう選ぶか、誰も選ばないか

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 はぁ……恋愛下手の自覚はあったけど、まさかここまでとは。大切な二人に想われて、どっちかを選ぶのも二人を選ぶのも誰も選ばないのも思うところがある。なんだよそんな状況。


 こんな時、宵なら答えが分かったのかな、なんて考える。日常的に身体を重ねてたらしいアカツキ、おそらく何度か交わることのあったヒイラギ…。そうなると他の龍神達とも関係があってもおかしくないんだよな。

 宵に聞いてみたい。誰かを愛するってどんな気持ちなのか、それは友愛や家族愛と何が違うのか。同じ『俺』だからこそヒントになるんじゃないかって思っても、簡単に思い出せない。
 もしかしたら宵も俺と同じで分からないかもしれないけど。だって俺だし。



 あーもー頭が痛い!出来ることなら二人に全部委ねたいけど流石にそれはダメだよなぁ。
 急いで答えを出すなんて無理だから一つずつ消化していこう。



 そもそも俺は二人のどこが『好き』なんだろう。想いに応えたいと思うくらいには二人に魅力を感じているはずだ。ならそれが何なのか上げて確認しよう。
 あ、ただし外見とかは無しで。二人とも顔、声、体格もタイプである事は分かりきってるし。 

 まずはグルー。
 グルーは俺がこの世界で生きることができるようになった恩人だ。手厚いサポートで衣食住の確保も怪我の治療もしてもらった。この世界のことも教えてもらって戦い方も教わった。
 好きは好きでも恩を感じてたり、信頼している方が強いな。悪魔の国では不安にもされたけど。それでも完璧みたいなグルーが俺に嫌われたくなくて怯えてたのは嬉しいなんて思ってしまっていた。

 次にヴィンス。
 ヴィンスは出会ってすぐ襲われかけたっけ。でも、重い発情期だったのに最後は理性が勝って抑えてくれた。もしあのまま襲われてたら、俺は誰とも肉体関係を持たなかっただろう。
 自分の特異体質のせいで本当は自分に自信の無いヴィンスだけど、俺が不安な時も怪我をした時も不器用ながら助けてくれた。素直で優しくて、ちょっと怖がりでも勇敢で、どこか可愛く感じている。


 なんだか、こうやってまとめてみると俺も大概二人のことが結構好きなんだよな。
 ……うん、やっぱ俺、片方を選ぶなんて無理だ。二人を選ぶか、二人とも選ばないかのどっちかだろう。




 二人への俺の感情は分かった。ならどう答えるか……。

 二人とも選べば、今の関係と大きく変わることなく、復讐仲間に恋人という関係が増えるだけだ。
 でも、恋人である必要はあるのか?今の関係がいいのなら応えない方が……いや、もうこの話題が出た時点で関係は変わるって考えた方がいいか。
 もし二人の想いに応えなかったら、俺は二人が俺をどう思ってるか知ってる状態で断り続けるようなものになるだろう。……正直、二人の気持ちを断れなければ無視もしたく無い。

 ならやっぱり二人に応えたほうがいいよな。グルーとヴィンスはなんて言うか分からないけど、正直に伝えた方がいい。

「どっちか一人を選んでどっちか一人を断るなんて出来ない……」

 もちろん恋人が出来たら俺も他の人と淫らな関係を持つ気はない。流石にそこまで節操無しではない…と自分でも信じたい。

 よし、明日はそう答えよう。気持ちに応えるなら俺は、二人とも…………



 あ、どうしよう……やっぱりダメだ……………
 俺は不老不死、寿命のある二人とはすぐに別れる事になる。特にヴィンスはもう、狼の獣人の一生の半分を既に生きてる。二十年は結構長い、はずだけど、不死者からすればそれはすぐに過ぎ去る時間だ。
 俺は、愛する人の最期を見届ける立場になるのか?二人に応えたとして、結局二人ともいなくなるのか?

 それは怖い、二人が俺にとって大きな存在になった頃に別れることになったら、どんなに苦しいか…………


 やっぱり明日、二人には『応えられない』って告げよう。せめて、俺が長寿でも不老不死じゃ無ければ………






 ーーーーーグルーーーーーー






 まさかこんな時が来るなんて思いもしなかった。既に振られた私にもチャンスが来てしまった。

 そう、思えたらよかったのですけどね。事態はそう簡単なことでは無いらしい。



「率直に聞くぞグルージア。お前、手を引く気は無いな?」
「当たり前でしょう?そう言うヴィンスはどうなのです?」
「愛称で呼ぶな!……じゃなくて、オレは…諦めたく無ぇよ。けど、お前に勝てる気もしねぇしよぉ………」

 そう言って耳も尻尾もぺしょりと力なく倒れるヴィンス。私に勝つ?一体ことの男は何を言っているのだろう。

「私一人が彼に選ばれても私は納得しませんよ?」
「………はぁ?どういう意味だ?」
「どちらかを選べばどちらかを見捨てることになる。ヤトもそれは分かってるでしょう。でもヤトは大切な人には甘いですから、そんな選択はきっとしないでしょう」

 彼が選ぶとすればどちらも選ぶか、あるいはどちらも選ばないか。まぁ…後者を選ばせる気はありませんけどね。


「貴方は自分一人だけを選んで欲しいですか?」
「いや番って普通は二人一組で……」
「その必要がどこに?書類で残す婚姻でも無ければ繁殖のための番でもありません。私は一夫多妻なんて当たり前ですし、抵抗も無ければむしろ………」

 私一人では満たせないでしょうから。彼は二人から愛されたって足りないでしょう。謙虚なようで強欲ですからね。

「ふふっ」
「なんだよ怖ぇな。……まぁ、アイツがオレら二人ともを選ぶならそれでも構わねぇよ。ただ、二人とも選ばない選択をしたらどうするんだ?片恋のまま体の関係だけズルズル引きずってくのか?」
「それはヤトが気にしそうな関係性な気もしますが、そもそも私は『恋人』の名目で彼を縛り付けたいと思ってますからね」

 恋人がいれば彼も不貞は避けるでしょう。でも、それが無ければ誰にでも股を開きかねなくなってきている。

「二人がかりでヤトを満足させれば、他の輩に傷つけられることも無くなるでしょうし」
「なんだ、あのマーキングのこと結構気にしてたんだな」
「………えぇ、許せません。私ですら噛んでいないのに、あんな………」

 私が今までどれだけ本能と戦って吸血行為を我慢してきたと……。叶うのであればあの白い首元に牙を立て甘い香りを漂わせる赤い蜜を啜りたいと何度も考えては押さえ込んでいたというのに。

「……あ、そういえば貴方はスキルの使用に噛んでましたっけ」
「本当に悪かったって、反省してるからあの時のことを蒸し返さないでくれ……」
「狡いですねぇ……はぁ、私だって…………」
「お前…吸血鬼だったっけ?」
「えぇそうです」

 あまり人に言ったことはありませんけどね。吸血欲求もそれほど強くありませんし。王の器だからでしょうけど。



「さて、心は決まりましたか?」
「まぁな、癪だがお前の考えには同意する。アイツが他のヤツにホイホイ引っかからないためにもオレで満たしてやる。それに……やっぱ諦め切れねぇよ」
「では明日、そのように彼に伝えましょうか」

 最初は確かに悩んで考えていたのに、今では楽しみで仕方なくなってきました。


 もう、絶対に逃しません。
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