一園木蓮

文字の大きさ
14 / 35
焔(続編)

「遼ちゃんも苦労性だのう。やはり血は争えんといったところかね」
 情報屋の源さんは半ば呆れ気味でいたが、そこは長年親父とツルんでいた裏の世界の人間だ。何やかんやと世話を焼いては情報収集に一躍してくれるのは有り難かった。
 調査によって次第に冰に関する様々な事柄が明らかとなってはきたものの、正直なところ俺にとっては眉をしかめさせられる事案ばかりだった。
 紫月も言っていたが彼は雪吹貿易という大会社の御曹司で、自宅は学園近くの高級住宅街にあった。一人っ子で、母親と数人の使用人と共に住んでいるようだったが、父親の方は海外にある支社に行っきりで家を留守にすることの方が多いらしい。大会社には違いないが、各国に支社を広げ過ぎた感もあり、経営状態という点では左程悠々自適というわけではないようだ。源さん曰く、社にはかなりの借入金があり、そんな点でも父親が各地を駆けずり回って自宅に帰れない日々が続いているようだという。
「それがな、遼ちゃん。ここふた月ばかり前のことだ。雪吹貿易に資金面の援助を申し出た企業が見つかった。比較的若い企業で、主にIT関連を扱っているらしいが――」
 長いことプロのエージェントで食ってきた源さんでもあまり聞かない名の企業だという。
「少々胡散臭いニオイがするが、もうちょい探りを入れてみようと思っとる」
「すまねえな、源さん。俺もその社について経営状況なんぞを当たってみるわ」
 もしかしたら冰がいかがわしいことに巻き込まれているのは資金援助のカタという可能性も無くはない。だが、大金を援助するのに一高校生相手の色遊びで代償になるとも思えない。ただし、あれを動画か何かに残して売り捌いているというなら話は別だ。ある程度の金が稼ぎ出せている可能性も高い。
 いずれにせよ何か裏があるのかも知れないが、とりあえずのところ、ここひと月ばかりの間に関して言えば、冰があの時見せてくれた写真のような目に遭っている機会は無いはずだ。俺は転入したあの日から冰の行動をそれとなく監視してきたが、彼が単身で何処かに出掛けるといったこともなかった。
 とはいえ、真夜中未明にヤツがこっそり自宅を抜け出しているというなら俺にも知り得ない事実があるかも知れない。さすがに二十四時間ヤツに張り付いて目を離さずにいられるわけもないからだ。
 ただ、冰が俺に打ち明けたあの日以降、ヤツの態度に変わったところは見受けられなかった。酷く落ち込んでいるといった様子もないし、だとすればあれ以来ああいった目には遭っていないだろうと思われる。まあこれは俺の希望的観測に過ぎないのだが、転校初日のあの日以来ヤツの感情の変化には常々気を配ってきた中で、危機感を感じなかった己の嗅覚を信じることにする。
 そんな思いが一転することになろうとは、さすがに予測できなかった。何と、冰がそろそろ帰ると言い出したからだ。
「はぁ? もう帰るってか? つか、まだ来てから十分も経ってねえじゃん」
 紫月も驚き顔でそう言ったが、当の本人は何やら時計を気に掛けながらソワソワと落ち着かない様子でいる。

 まさか、これから例の奴らと会う約束でもあるってのか――?

 危険が迫っている――俺の本能がそう告げた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に