極道恋浪漫

一園木蓮

文字の大きさ
42 / 159
極道恋浪漫 第一章

40

しおりを挟む
「――で? 女衒ぜげんからはいくら巻き上げたんだ」
 羅辰ルオ チェンが不機嫌をあらわに真っ昼間から酒を煽っている。
「はい、向こう一年の報酬の半分ということで納得させました」
「向こう一年の半分だと? そんなものでは当然足りまい! あの周焔ジォウ イェンがそれで首を縦に振るとは思えんな!」
「いかにも。ですが、女衒ぜげんとてあまり締め上げたところで逆効果でしょう。ウチではなく、もっと利のいい他所に話を持って行かれても困ります。かねてからのお約束通り、不足分は私が客を取って当てがいたいと存じます」
「ふん! お前が――ね?」
「はい」
「お前がちょっとその気になれば、あの周焔ジォウ イェンの首を縦に振らせるだけの金を稼ぎ出すのも朝飯前と言いたいわけか? 相変わらずに尊大というか殊勝というか」
「恐れながら事実でございますゆえ。既に太客への手回しも済んでおります」
「は! いったい一晩でいくらぼったくるんだか! 言っておくが上がりを全部周焔ジォウ イェンに渡せばそれで済むという話ではないぞ? 珍しくもお前が客を取るというからには――少しはこの私のふところも温めて欲しいものだな」
 要はバックマージンを流せという意味だ。言葉をそのまま返すわけではないが、『相変わらずに』図々しいのはどちらだと舌打ちのひとつもしたくなる。だが、そんな思いは微塵も顔に出さないままで紫月ズィユエは平静を装った。
「心得ております。父と私がこうして安泰に暮らしていられるのも、すべてお頭目かしらのご慈悲ゆえでございますから。とにかくは一刻も早く謝罪に上がったという事実こそが重要です。むろん頭目あなたがおっしゃるようにそれで皇帝様のお気がおさまるかどうかは何とも言えません。周家の出方によっては改めてご報告を申し上げ、対応を考えたいと存じます――」
「……チッ! 女衒ぜげんも余計な手間を増やしやがって! 万が一その謝罪金で周家が引き下がらなかったらどう落とし前つけてくれようか!」
 羅辰ルオ チェンとて周一族の婚約者に手を出してしまった手前、簡単に事が済むとは思っていない様子だ。この苛立ちようから察するに、こちらが思っている以上の要求をされるかも知れないと危惧しているように受け取れた。
「それはそうと紫月ズィユエ――。分かっているとは思うが、お前さんが客を取ることについては親父に漏らしてくれるなよ? 奴さんの耳に入れば面倒事が増えるからな。周焔ジォウ イェンにふんだくられた上に、おめえの親父にまで恨まれたんじゃ割に合わん話だ」
「もちろん、承知いたしております……。此度のことは男遊廓を預かっているにもかかわらず、見落としました私の責任ゆえ、父とは無関係の話。当然口を挟むことではございません」
「ふん、分かっているなら良い」
「は――。ではこれにて失礼を」
 ともかくは一番の危惧であった頭目・羅辰ルオ チェンに偽の婚約話が疑われるという点に関してはなんとか無事に乗り切れそうなことにホッと胸を撫で下ろす。
 と同時に、周家にある程度莫大な謝罪金を支払ったという前例を作れば、この頭目も少しは懲りて、今後女衒ぜげんによって無理やり拉致されて来る若者たちを少しでも減らすことが叶うかも知れない。遊郭街の現状を憂う紫月ズィユエにとって、それもまた重要なことのひとつといえるのだった。



◇    ◇    ◇


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

朔望大学医学部付属病院/ White Dictator

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』 <ホワイト・ディクテイター> ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。 ___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。 ※ごめんなさい!悩みすぎて遅れてます!

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...