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極道恋浪漫 第一章
53 秘密裏の試み
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それによると、彼はこの九龍城砦で医者をしている男で、名を鄧揺といった。
彼には息子が二人いて、鄧海と鄧浩というそうだ。息子たちは焔や遼二とほぼ同じ年頃だそうだが、親子三人で砦に医療所を構えているという。つまり医者だ。
彼の妻も両親も一家揃って医者だそうだが、城砦の外で開業医をしているそうだ。代々医者の家系らしい。
元々一家で医院をしていたそうだが、この九龍城砦――といっても焔が治める地下街の方ではなく、地上に建つスラム区に当たる場所――にて医者にかかることもできずに命を蝕んでいく貧しい人々がいることに心を痛め、一家が交代でここに常駐するようになったそうだ。
鄧海と鄧浩の兄弟が成長し、医師として働けるようになってからは、主に父子三人で砦内を診ているのだという。そんな鄧揺が飛燕と知り合ったのは今から二十年以上前のこと――つまり飛燕と紫月が遊郭街に拉致されて間もなくの頃だったそうだ。
それ以前から、遊郭街では病に罹り使い物にならなくなった遊女や男娼を秘密裏に葬ってきたらしい。ところが飛燕がお役目様――つまり用心棒のことだが――その役目に就くようになってから、本来であれば葬られる者たちを密かに鄧に預け、命を救ってきたというのだ。
「飛燕殿と知り合ったきっかけは遊郭街の病院で医師をしている私の同業者からの紹介でした。病に罹った遊女男娼らを義理も人情もなく葬り続けていた遊郭街の実情に心を痛めた飛燕殿は、彼らを処刑する役目を自ら名乗り出たそうでな。表向きは葬ったということにして、密かに塵のコンテナに彼らを乗せ、私の元へ送り届けてくるようになったのだ」
その者たちに治療を施し、彼らをこの九龍城砦の外へ逃すのが鄧の役目だったそうだ。
「飛燕殿は治療費の他に彼らが当座生活できるようにと金まで握らせてくれてな。あの人のお陰でこれまで何百何千という遊女男娼らの命が散らされずに済んだことか――。誠、飛燕殿は神か仏の化身といえる御方だ」
遊郭街で使い物にならなくなった者たちの始末には頭目の側近連中が監視役として付き添うのだそうが、飛燕は自らの尋常ならぬ剣術の腕を以って、始末される者たちを真の死人のように見せ掛けてきたのだそうだ。
「飛燕殿は始末されることが決まった遊女男娼ら事情を話し、しばしの間は仮死状態でいられるよう取り計らうとお伝えなさった。塵としてコンテナに積み込み、目が覚めたら九龍城砦内にいる鄧という医者の元へ行けと言って彼らを峰打ちで眠らせた。その直後に頭目の側近方が本当に死んだかどうか確かめに来るそうなのだが、その時点では心の臓も脈も動いていないかのように見せることのできる技をお持ちだった。常人には到底出来得ない神業だ」
側近たちの検閲が済んだ後は、遊郭街から出た他の塵と一緒にコンテナに詰め込まれて砦の外へと運ばれる。その途中、地下街のすべての塵が一旦集められるこの九龍城砦廃棄物集積所にて鄧一家が峰打ちから目覚めた遊女男娼らを秘密裏に引き取っていたというのだ。
事情を聞いた焔ら一行は、信じ難いような話に驚きを通り越して絶句させられてしまった。
彼には息子が二人いて、鄧海と鄧浩というそうだ。息子たちは焔や遼二とほぼ同じ年頃だそうだが、親子三人で砦に医療所を構えているという。つまり医者だ。
彼の妻も両親も一家揃って医者だそうだが、城砦の外で開業医をしているそうだ。代々医者の家系らしい。
元々一家で医院をしていたそうだが、この九龍城砦――といっても焔が治める地下街の方ではなく、地上に建つスラム区に当たる場所――にて医者にかかることもできずに命を蝕んでいく貧しい人々がいることに心を痛め、一家が交代でここに常駐するようになったそうだ。
鄧海と鄧浩の兄弟が成長し、医師として働けるようになってからは、主に父子三人で砦内を診ているのだという。そんな鄧揺が飛燕と知り合ったのは今から二十年以上前のこと――つまり飛燕と紫月が遊郭街に拉致されて間もなくの頃だったそうだ。
それ以前から、遊郭街では病に罹り使い物にならなくなった遊女や男娼を秘密裏に葬ってきたらしい。ところが飛燕がお役目様――つまり用心棒のことだが――その役目に就くようになってから、本来であれば葬られる者たちを密かに鄧に預け、命を救ってきたというのだ。
「飛燕殿と知り合ったきっかけは遊郭街の病院で医師をしている私の同業者からの紹介でした。病に罹った遊女男娼らを義理も人情もなく葬り続けていた遊郭街の実情に心を痛めた飛燕殿は、彼らを処刑する役目を自ら名乗り出たそうでな。表向きは葬ったということにして、密かに塵のコンテナに彼らを乗せ、私の元へ送り届けてくるようになったのだ」
その者たちに治療を施し、彼らをこの九龍城砦の外へ逃すのが鄧の役目だったそうだ。
「飛燕殿は治療費の他に彼らが当座生活できるようにと金まで握らせてくれてな。あの人のお陰でこれまで何百何千という遊女男娼らの命が散らされずに済んだことか――。誠、飛燕殿は神か仏の化身といえる御方だ」
遊郭街で使い物にならなくなった者たちの始末には頭目の側近連中が監視役として付き添うのだそうが、飛燕は自らの尋常ならぬ剣術の腕を以って、始末される者たちを真の死人のように見せ掛けてきたのだそうだ。
「飛燕殿は始末されることが決まった遊女男娼ら事情を話し、しばしの間は仮死状態でいられるよう取り計らうとお伝えなさった。塵としてコンテナに積み込み、目が覚めたら九龍城砦内にいる鄧という医者の元へ行けと言って彼らを峰打ちで眠らせた。その直後に頭目の側近方が本当に死んだかどうか確かめに来るそうなのだが、その時点では心の臓も脈も動いていないかのように見せることのできる技をお持ちだった。常人には到底出来得ない神業だ」
側近たちの検閲が済んだ後は、遊郭街から出た他の塵と一緒にコンテナに詰め込まれて砦の外へと運ばれる。その途中、地下街のすべての塵が一旦集められるこの九龍城砦廃棄物集積所にて鄧一家が峰打ちから目覚めた遊女男娼らを秘密裏に引き取っていたというのだ。
事情を聞いた焔ら一行は、信じ難いような話に驚きを通り越して絶句させられてしまった。
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