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極道恋浪漫 第四章
141 別離再び
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「頼む――飛燕殿、紫月。冰と、それから黄の爺さんを連れて日本へ逃れ、時期を待って欲しいのだ。そして今の――この苦境を覆せるその時が来たら、是非とも力を貸していただきたい」
「皇帝殿――」
「頼む。この通りだ――」
頭を下げる焔の姿に彼の――そして自分たちも含めたこの街が受けた痛みを痛感させられる。数々の苦楽を共に生きてきた仲間たちがほんの一瞬の理不尽極まりない悪意と強欲で散り散りにさせられ、平穏で温かかった生活も友情も破壊されてしまった。泣こうにも泣けず、ただただ無情を噛み締めるしかできない自分たちが情けなくて堪らない。この街の誰もが同じ思いに苦しんでいるだろう中、一番苦い思いを抱えているのはこの皇帝だろう。
「――分かりました。冰さんと共に日本へ逃れ、時期を待ちましょう」
「飛燕殿――! すまない。恩にきる」
「いいえ、皇帝。誰よりもお辛いだろうは貴方様です。例え距離がどんなに離れようと、私どもは常に貴方様と志は一緒です。その時が来たら――必ずお力になるべく戻って参りますゆえ」
「飛燕殿――。紫月も、多謝。感謝する」
「冰さんと老黄のことはお任せください。紫月と共に身命を賭してお二人をお守りいたす所存です」
力強い飛燕の言葉が今の焔にとって何よりの支えと思えるのだった。
その後、冰を呼んでその旨を伝えたところ、当然か自分も焔と共にこの地下街へ残りたいと言っては涙した。
「僕は焔さんの伴侶です! あなたがお辛い時に自分だけ安全な日本へ逃れるなど……そんなことはしたくありません!」
大きな瞳に涙をいっぱいに溜めてそう訴える。どんな苦難でも共に乗り越えたいという彼の気持ちは心底嬉しいものの、焔は心を鬼にして説得するしかなかった。
「あの羅辰の息子は俺たちが考えている以上に残忍な輩だ。俺の伴侶と知れれば必ずこの手からお前を取り上げようとするだろう。果てはお前に凌辱行為を強いたりするのは想像に容易い」
それだけは何としても避けたいのだと言う。
「もしもお前に指一本触れられたりすれば――俺は自分を保てなくなる。この地下街に生きる人々のことを守るどころか、彼らがどうなろうと即刻あの羅鵬を叩き潰さねばいられないだろう。そうなれば例えヤツの命を取ったとしても今よりもっと大きな戦に発展してしまう可能性が高い」
「焔さん……」
「砦を守る統治者として――ここに住まう人々を見殺しにすることはできんのだ。今は誰にとってもただただ苦しく辛い状況だ。皆がどれほど心を痛めているかもよく分かっているつもりだ。だが――どんなに苦しくとも時期を待たずして事は解決しないと思うのだ」
解ってくれ――と苦渋の表情を見せる焔に、冰はただただ涙するしかできなかった。
「すまない、冰――。お前を守り、幸せにすると言いながら……この始末だ」
肩を抱き寄せ頭を下げる焔の辛さがひしひしと伝わってくる。
「焔……さん」
「時期が来たら――必ずお前を迎えに行く。だから……待っていて欲しい」
不甲斐ないこんな亭主を赦してくれと云わんばかりの彼の声は震えていて、その辛い心中有り余ることが窺える。
「焔さん……焔さん――!」
待っています――。
例えどんなに遠く離れても、僕の心は常にあなたと共にあることを忘れないで――!
悲しみを胸に抱き、冰は紫月らと共に日本へ――。そして焔にとってもこの地下街にて苦渋と忍耐を噛み締める日々が待っているのだった。
「皇帝殿――」
「頼む。この通りだ――」
頭を下げる焔の姿に彼の――そして自分たちも含めたこの街が受けた痛みを痛感させられる。数々の苦楽を共に生きてきた仲間たちがほんの一瞬の理不尽極まりない悪意と強欲で散り散りにさせられ、平穏で温かかった生活も友情も破壊されてしまった。泣こうにも泣けず、ただただ無情を噛み締めるしかできない自分たちが情けなくて堪らない。この街の誰もが同じ思いに苦しんでいるだろう中、一番苦い思いを抱えているのはこの皇帝だろう。
「――分かりました。冰さんと共に日本へ逃れ、時期を待ちましょう」
「飛燕殿――! すまない。恩にきる」
「いいえ、皇帝。誰よりもお辛いだろうは貴方様です。例え距離がどんなに離れようと、私どもは常に貴方様と志は一緒です。その時が来たら――必ずお力になるべく戻って参りますゆえ」
「飛燕殿――。紫月も、多謝。感謝する」
「冰さんと老黄のことはお任せください。紫月と共に身命を賭してお二人をお守りいたす所存です」
力強い飛燕の言葉が今の焔にとって何よりの支えと思えるのだった。
その後、冰を呼んでその旨を伝えたところ、当然か自分も焔と共にこの地下街へ残りたいと言っては涙した。
「僕は焔さんの伴侶です! あなたがお辛い時に自分だけ安全な日本へ逃れるなど……そんなことはしたくありません!」
大きな瞳に涙をいっぱいに溜めてそう訴える。どんな苦難でも共に乗り越えたいという彼の気持ちは心底嬉しいものの、焔は心を鬼にして説得するしかなかった。
「あの羅辰の息子は俺たちが考えている以上に残忍な輩だ。俺の伴侶と知れれば必ずこの手からお前を取り上げようとするだろう。果てはお前に凌辱行為を強いたりするのは想像に容易い」
それだけは何としても避けたいのだと言う。
「もしもお前に指一本触れられたりすれば――俺は自分を保てなくなる。この地下街に生きる人々のことを守るどころか、彼らがどうなろうと即刻あの羅鵬を叩き潰さねばいられないだろう。そうなれば例えヤツの命を取ったとしても今よりもっと大きな戦に発展してしまう可能性が高い」
「焔さん……」
「砦を守る統治者として――ここに住まう人々を見殺しにすることはできんのだ。今は誰にとってもただただ苦しく辛い状況だ。皆がどれほど心を痛めているかもよく分かっているつもりだ。だが――どんなに苦しくとも時期を待たずして事は解決しないと思うのだ」
解ってくれ――と苦渋の表情を見せる焔に、冰はただただ涙するしかできなかった。
「すまない、冰――。お前を守り、幸せにすると言いながら……この始末だ」
肩を抱き寄せ頭を下げる焔の辛さがひしひしと伝わってくる。
「焔……さん」
「時期が来たら――必ずお前を迎えに行く。だから……待っていて欲しい」
不甲斐ないこんな亭主を赦してくれと云わんばかりの彼の声は震えていて、その辛い心中有り余ることが窺える。
「焔さん……焔さん――!」
待っています――。
例えどんなに遠く離れても、僕の心は常にあなたと共にあることを忘れないで――!
悲しみを胸に抱き、冰は紫月らと共に日本へ――。そして焔にとってもこの地下街にて苦渋と忍耐を噛み締める日々が待っているのだった。
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