極道恋事情

一園木蓮

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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)

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「クソ……ッ! どうすりゃいんだ」
 せめてスマートフォンを持って移動していてくれればGPS機能で捜し当てることも可能だが、それもままならない。

(落ち着け……! 落ち着いてよく考えろ)

 紫月は自分に言い聞かせながら、どう動くべきかを頭の中で整理する――。と、その時だった。幹部・清水のもとへ道内組の事務所へ赴いていた若い衆らから新たな情報が上がってきたのだ。
 はたしてそれは耳を疑うような内容だった。
「……何だとッ!? 間違いないのか……?」
 焦燥感あらわな清水の様子に、心拍数が一気に跳ね上がる。
「紫月さん、事の次第が分かりました……。どうやら若は会食の席でいかがわしい薬を盛られたようなんです!」
「……!? いかがわしい薬だと?」
 若い衆からの報告によると、今夜の会食は鐘崎と自分の娘を縁組みさせる為に、既成事実を作ってしまわんとする道内組組長の罠だったというのだ。若い衆らが相手の組員をとっ捕まえて聞き出したところ、宴席で鐘崎に勧めた酒の中に催淫剤を混ぜて飲ませた後、座敷の次の間に待機させていた娘と肉体関係を持たせて、あわよくば子供を儲けてしまえばいいと目論んでいたらしいことが判明したそうだ。
 鐘崎にその気がなくとも、催淫剤によって惑わされた彼の目の前に女を当てがえば、意思とは関係なくその気にさせてしまうことができると思ったらしい。浅はかなことこの上ないが、何せ薬で強制的に欲情を促すわけだ。組長にしてみれば存外上手くいくと踏んだのだろう。
「畜生ッ! 汚ねえ手を使いやがって!」
 荒れる橘の傍らで、清水も唇を噛み締める。
「若はお身体の異変に気付いてご自分から料亭を飛び出したのかも知れません……。その際にスマートフォンも落としてしまわれたのでしょう」
 だとすれば、鐘崎は今なお催淫剤に苦しめられながら、たった一人で何処かを彷徨っているということになる。タクシーを拾うにしても、誰かに助けを求めるにしても、そこまで身体と頭がいうことを聞くかどうかは不安なところだ。逆に変質者扱いされて、通報されないとも限らない。彼自身もそれが分かっていて身動きがとれずにいるのかも知れない。
「おい……その料亭の場所ってのは何処なんだ?」
 ふと、思いたって紫月は訊いた。
「勝鬨です。一見、料理屋には見えない造りになっているようで、道内組では秘密の会合などによく使っていたようです」
 清水によると、鐘崎の組では馴染みがなく、相手側が贔屓にしているとのことで初めて訪れた店だそうだ。
「勝鬨か……。だったらひょっとして……」
 紫月はすぐさま携帯を取り出すと、とある人物へと連絡を入れた。相手は汐留に社を構える周焔こと氷川白夜である。
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