極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
89 / 1,212
告げられないほどに深い愛(極道若頭編)

21

しおりを挟む
 いったいどういうことなのだろう。さっぱり分からないながらも、あの周の言うことだ。間違いなく鐘崎を発見したことは確かなのだろう。
「遼二が見つかったようだ! これから氷川が救出に向かうとのことだが、俺らも行くぞ! ヤツは銀座だ!」
 紫月は清水にそう言うと、身支度を整える為、自室へと向かいながら父親の飛燕へと連絡を入れた。その間、清水にも動ける組員らを現地へと向かわせるように頼んでおく。地下へ戻ると清水が車のドアを開けて待っていた。
「紫月さん! お車へどうぞ! 我々の方は源次郎さんに言って既に現地へ飛んでいただきました!」
 各人が車に乗り込もうとした時、若い衆がまた二人、大慌てで駆け付けて来たのに驚いて足をとめた。
「た、大変です! 今、道内のところの組長がうちの事務所に乗り込んで来まして……!」
「何だとッ!?」
「娘が若に……手籠めにされたとか……ワケの分からねえことを抜かしてまして!」
「手下共を大勢連れて来て事務所に居座っちまってるんです! 若を出せって大騒ぎになってます!」
 息せき切らしながら二人が交互に言う。彼らの話では、道内組長が手籠めに遭った証拠だと言って、破れた服から下着が覗いているような格好の娘を伴って怒鳴り込んで来ているというのだ。
「娘の顔には張り手を食らったような青痣がありまして……嘘か本当か知らねえが、道内のヤツは若にやられたと言い張ってます……」
 清水と橘はもとより、紫月は言葉を失うくらいに驚かされてしまった。だが、そんなことを言っている場合ではない。気を取り直すと紫月は気丈に言った。
「遼二ンことは氷川に任せよう……。ヤツが付いてるなら遼二は大丈夫だ。俺らはすぐ事務所に向かうぞ!」
「紫月さん……ご足労掛けてすみません……! 若に限ってそのようなことは……ないと思うのですが」
 だが、催淫剤を盛られた以上、全くないとも言い切れないと思うところなのだろう。清水が心底申し訳なさそうに頭を下げる。
「構わねえ……。ンなことより行くぞ!」
 紫月は清水らと共に事務所へと急いだ。

 鐘崎組は紫月のところの道場からだと歩いて行ける距離だ。清水らは車で来ていたので、それこそ数分と掛からない内に到着した。
 玄関前の路上には車が三台ほど停められていて、一目で筋者だと分かる男たちが辺りをチラホラとしていた。手下を連れて乗り込んで来たというのは本当のところだろう。中へ入ると、道内が応接用のソファのド真ん中に陣取って、組員たちに凄み掛かっていたところだった。
「てめえら、舐めてんじゃねえぞ! 若頭を出しやがれって言ってんだ! 隠し立てするとタメにならねえぞ!」
 彼の隣には娘なのだろう、下着姿のまま破れた服で胸元を覆って、必死に肌を隠しているといった格好のまま、うつむき加減で座っている。若い衆らの報告にあった通り、彼女の唇は切れて青痣が見て取れる。紫月はその姿を見るなり眉根を寄せると、自ら進んで道内の前へと歩み出た。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...