極道恋事情

一園木蓮

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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)

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 周から鐘崎の居場所を発見したとの報告を受けて、清水はすぐに源次郎に言って現地に飛んでもらっていたわけだが、無事に救出を終えた報告を源次郎がしてよこした時には、既に事務所に道内が乗り込んで来て暴れているまさに最中だった。二人はそのまま通話を切らずにいたので、携帯電話を通して鐘崎は全ての経緯をライブで知ることができたというわけだ。
 一部始終を知られてしまった道内には言い訳すらままならない。鐘崎は静かな口調ではあったが、道内にとってはその方がより恐ろしかったに違いない。
 企みは全て娘の口から暴露されてしまった上に、何より裏の世界では右に出る者はいないという鐘崎組に喧嘩を吹っかけた以上、行く末は決まっているからだ。先程までの威勢はかけらもなく、がっくりとうなだれながら組員たちに抱えられて事務所を後にしていった。
 そうして道内らが引き上げて行った組事務所では、若頭の帰還に歓喜で湧いていた。紫月は周にも改めて礼を述べたのだった。
「氷川、マジで世話になった。お前がいてくれなかったらどうなってたか……。本当に助かった……!」
「構わねえ。お互い様ってやつだ。それよりカネのことは頼んだぞ? とりあえずの処置は済ませたが、こいつはまだ薬が抜け切ってねえ状態だ。後のことはお前がしっかり面倒見てやれよ?」
 周はニッと企んだように瞳を瞬かせると、『後でちゃんと報告しろよ』と言って李らと共に引き上げて行った。
 ちょうど駆け付けて来た紫月の父親の飛燕も、鐘崎の無事を知るとホッとしたように安堵の表情を浮かべた。
「遼二坊、良かった……。遅くなってすまない」
 飛燕は紫月に今夜はここに残って鐘崎の面倒を見るように言うと、自らは荒らされた事務所の後片付けを手伝うと言って、若い衆らと共に作業に取り掛かっていった。
「では紫月さん、若をよろしく頼みます」
 源次郎もそう言って鐘崎を紫月に託す。二人は組員たちに見送られながら事務所の裏側に位置する住まいの方へと向かったのだった。



◇    ◇    ◇



「具合はどうだ? 歩きで氷川ンとこに向かってたんなら寒かったろうによ。先ずは風呂か。そうだ、風呂入れてくっからちょっと待っとけ」
 肩を貸しながらそんなことを言っている紫月を、鐘崎は思い切り抱き締めた。
「紫月、すまなかったな。心配かけた」
「いいって。お前が無事に戻ってくれただけで俺りゃーもう……」
 突然のきつい抱擁の中で所在なさげにモゾモゾと動く。
「俺が不在の間、道内の対応をしてくれたな。源さんと清水の通話越しに全部聞いていたんだが……お前は本当によくやってくれた。あの場にいた全員がそう思ったろうぜ?」
「……ッ、そりゃまあ、お前も親父さんもいねえんだ。道内ってヤツは怒鳴り散らしてるし、とにかくは何とかするっきゃねえと思ってよ……」
 視線を泳がせながら紫月は頬を染めた。そっけなく聞こえる口調は彼が照れていることの裏返しだ。鐘崎にはそんな紫月が心底愛しくて仕方なかった。
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