極道恋事情

一園木蓮

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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)

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「な、紫月……」
「ん……?」
「信じて……くれてたんだな。俺が道内の娘に手を出したんじゃねえかって、微塵も疑わなかったのか?」
「バ……ッ、ンなこと思うかよ……! てめえに限って……ンな」
「だが俺は薬を盛られてたんだぜ? 万が一とは考えなかったのかよ」
「……ッ考えるわきゃねって!」
 真剣に想いを告げ合った直後の照れ隠しの為か、半分は冗談なのだろうが、鐘崎本人から不安を煽るような言葉を言われて、紫月はまたしても自分からしがみつくようにその胸の中へと顔を埋めた。
「……ったく! 今さっき冗談言えるユーモアなんかねえって、てめえで言っといてよー」
 舌の根も乾かない内にそれかよと、恨めしそうに見上げながら、紫月は厚い胸板をコツンと突いた。
「ンな冗談言ってっと! マジでケツ叩くぞ!」
「ああ。ああ、そうだな。思いっきりカツ入れてもらわねえとな?」
「つか、薬! そう! ンな悠長なこと抜かしてっ場合かよ? 薬……まだ切れてねえって氷川も言ってたが……」
 大丈夫なのか? と、しがみついたまま顔を見上げる。そんな仕草も愛しくて、だが確かに未だ違和感の残る身体もしんどくて、鐘崎は苦笑させられてしまった。
「……一応、氷川の車の中で一発だけ抜いたは抜いたんだが」
「抜いた……って、おま……」
「心配するな。自分で処理したさ」
「処理って……」
「氷川が背広の上着を御簾代わりにしてくれたんでな。こいつに関しちゃ解毒薬はねえっていうし、とにかく抜かねえってーと辛くて仕方ねえ。立っても座ってもいらんねえしでよ。この際、恥だの外聞だの言ってられる状況じゃねえと思ってな」
 鐘崎はまさに苦笑状態ながら、そう暴露する。
「ホントはな、お前が側に居てくれたら手伝ってもらうのによって思いながら、氷川や源さんの前で醜態晒しちまったが」
 おどけ気味に鐘崎はそう言って笑った。
 こんなふうに冗談まじりに話しているが、実際は相当辛かったのだろう。催淫剤というものの効果はよく分からないが、雑誌や何かで見聞きする限り、かなり強烈だと思える。鐘崎とて、友や側近の目の前で痴態を晒したくなどなかったろうが、それ以上に身体がキツかったということだろう。如何に心配だとはいえ、いつまでもそんなことを言わせておくのは無体というものだ。紫月はわざと別の話を探すように話題を変えた。
「そういやさ、氷川は何でお前の居場所が分かったんだ? スマホもねえし、GPSは使えなかったってのによ? それに……あの野郎ったら、すっげヘンなこと訊いてきたし!」
「……? ヘンなことだ?」
「ああ。今年のクリスマスケーキの種類がどうとか抜かしてやがったが」
 あれは一体何だったのだろう。すっかり訊くのを忘れていたことに気がついて、紫月は不思議そうに首を傾げた。
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