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香港蜜月
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「ううん、全然! 大変どころかすごく楽しかったよ! 実はお母さんたちに言われたことがすっごく嬉しくてさ。俺、感激でまた涙出そうになっちゃったんだよ」
「ほう? いったいどんなことを言われたんだ?」
「うん、それがね。俺が小さい頃に両親を亡くしてるのをお母さんたちもご存知だったようでさ。気の毒なことだったけど、これからは私たちがあなたのお母さんだからって。遠慮しないでたくさん甘えてねって言ってくれたんだ」
「お袋たちがそんなことをな――」
会食の間、周自身は久しぶりに会う父の隼と兄との対話で忙しく、あまり冰を構ってやることができなかったのだ。すまないと思いつつも、時折ちらりと視線をやった先では、母親たちに囲まれた冰が楽しそうな笑顔を見せていることにホッと安堵していたというところだった。だが、さすがに会話の内容までは聞き取れなかった為、どんな話で盛り上がっていたのかが気になるわけだ。
「もう俺、めちゃめちゃ嬉しくて……! 本当は白龍の恋人が男の俺だなんて……って思われても当然だよなってちょっと覚悟してたんだけど、お母さんたち全然そんなこと気にしてないっていう感じでさ。もちろんお父さんもお兄さんご夫婦も、皆さん本当にやさしくしてくださって……」
男同士で恋仲であることに関しては、ここへ来る前に周からもそんなことをどうこう言う家族ではないから安心しろと言われてはいたものの、やはり実際に会ってみるまでは多少なりと不安はあったのだ。それがこんなにも温かく迎えてもらえて、皆の心の大きさに直に触れることができて、冰にとっては感激を通り越した大感動だったらしい。
「だから言ったろうが。うちの家族はそんなことを気にする狭量じゃねえって」
クスッと周は頼もしげに微笑んだ。
「うん、ホントそうだね! 俺、マジで超幸せ者だよ」
頬を染めて感激に瞳を細める様子は、周にとっても心底愛しいものだった。
「よし、冰。それじゃもっと幸せ者にしてやらねえとな?」
「え?」
これ以上の幸せなんて贅沢過ぎるよ――そう言おうとした冰だったが、周の不敵な笑みを見てその意味するところを悟った途端にみるみると頬が染まっていった。
大きくて温かい掌がやわらかな髪ごと包み込み、そっと触れるだけのキスが唇を奪う。
「白龍……!」
吐息にまじって名を呼べば、次第に深く激しい口付けが降り注ぐ。
「――な? ここならシーツがぐちゃぐちゃになったって気にすることはねえだろ?」
「白龍……ったら! ……ッ、もしかしてその為……? 家じゃなくてホテルにしたのって……」
「それ以外にねえだろ?」
耳元をくすぐる声が色香にあふれて、男らしいその美声を聞いているだけでジクジクと腹の中心がうずき出す。
しっとりとした厚みのある唇が胸飾りを掠った瞬間に、冰の形のいい口元からは赤く熟れた舌先がピクりと震えて顔を出す。
愛しい男の仕掛けた熱情に翻弄される夜が始まるのだった。
◇ ◇ ◇
「ほう? いったいどんなことを言われたんだ?」
「うん、それがね。俺が小さい頃に両親を亡くしてるのをお母さんたちもご存知だったようでさ。気の毒なことだったけど、これからは私たちがあなたのお母さんだからって。遠慮しないでたくさん甘えてねって言ってくれたんだ」
「お袋たちがそんなことをな――」
会食の間、周自身は久しぶりに会う父の隼と兄との対話で忙しく、あまり冰を構ってやることができなかったのだ。すまないと思いつつも、時折ちらりと視線をやった先では、母親たちに囲まれた冰が楽しそうな笑顔を見せていることにホッと安堵していたというところだった。だが、さすがに会話の内容までは聞き取れなかった為、どんな話で盛り上がっていたのかが気になるわけだ。
「もう俺、めちゃめちゃ嬉しくて……! 本当は白龍の恋人が男の俺だなんて……って思われても当然だよなってちょっと覚悟してたんだけど、お母さんたち全然そんなこと気にしてないっていう感じでさ。もちろんお父さんもお兄さんご夫婦も、皆さん本当にやさしくしてくださって……」
男同士で恋仲であることに関しては、ここへ来る前に周からもそんなことをどうこう言う家族ではないから安心しろと言われてはいたものの、やはり実際に会ってみるまでは多少なりと不安はあったのだ。それがこんなにも温かく迎えてもらえて、皆の心の大きさに直に触れることができて、冰にとっては感激を通り越した大感動だったらしい。
「だから言ったろうが。うちの家族はそんなことを気にする狭量じゃねえって」
クスッと周は頼もしげに微笑んだ。
「うん、ホントそうだね! 俺、マジで超幸せ者だよ」
頬を染めて感激に瞳を細める様子は、周にとっても心底愛しいものだった。
「よし、冰。それじゃもっと幸せ者にしてやらねえとな?」
「え?」
これ以上の幸せなんて贅沢過ぎるよ――そう言おうとした冰だったが、周の不敵な笑みを見てその意味するところを悟った途端にみるみると頬が染まっていった。
大きくて温かい掌がやわらかな髪ごと包み込み、そっと触れるだけのキスが唇を奪う。
「白龍……!」
吐息にまじって名を呼べば、次第に深く激しい口付けが降り注ぐ。
「――な? ここならシーツがぐちゃぐちゃになったって気にすることはねえだろ?」
「白龍……ったら! ……ッ、もしかしてその為……? 家じゃなくてホテルにしたのって……」
「それ以外にねえだろ?」
耳元をくすぐる声が色香にあふれて、男らしいその美声を聞いているだけでジクジクと腹の中心がうずき出す。
しっとりとした厚みのある唇が胸飾りを掠った瞬間に、冰の形のいい口元からは赤く熟れた舌先がピクりと震えて顔を出す。
愛しい男の仕掛けた熱情に翻弄される夜が始まるのだった。
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