130 / 1,212
香港蜜月
24
しおりを挟む
「では周焔さんにはディーラーの側に居ても不審に思われないよう、フロアの黒服役に化けていただきましょう。初老の紳士に見えるように髪を銀髪にして、肌にも年齢を加えるようにメイクします。それから……ディーラー役になる冰さんでしたか? 彼のヘアスタイルも少し弄らせてください」
冰には先にディーラーの服に着替えてもらうとして、その間に周を初老の男に変えるべくメイクを施していく。その手際の良さには目を見張るばかりだ。さすがに世界のファッションショーの舞台でレイ・ヒイラギのメイクを担当しているだけあって、早技にも息を呑む。みるみる内に周は別人のような老紳士へと変貌を遂げた。
倫周が続いて冰のヘアスタイルをディーラーらしく整えている側で、今度は鐘崎からも変装の提案が持ち出された。
「まだ時間はあるな。すまないがこいつの変装も頼めるか?」
鐘崎は、自らはテーブルの近くで警護に当たるとして、伴侶の紫月をレイと共に賭けに参加させたいと言った。イカサマ師とその仲間を取り囲むように客の中にレイと紫月を配置すれば、より強固な態勢が敷けるだろうというわけだ。
「こう見えて紫月は体術にも長けている。取り押さえる時に仲間は一人でも多い方がいいだろう」
そう、紫月は幼い頃から実家の道場で鍛錬を積んでいるので、何かの役に立てるかも知れないというのだ。
カジノにとっても乗っ取りのかかった突然の事態にあって、皆が心を砕いてくれる。隼はもちろんのこと、周も兄の風も皆のそんな厚情が身に染みて有り難く思えるのだった。
そんな中、紫月を一目見たレイが「うーん」と首を傾げながらポツリと呟いた。
「えらく綺麗な男だな……。おい、倫周、彼を女性に変装させられるか?」
「――え!?」
皆が驚いたようにしてレイを見やる。
「野郎ばかりが周囲を固めるんじゃ怪しまれないとも限らねえ。美女が一人入れば周りのギャラリーたちは少なからず気を取られる。隙ができることで、敵にとってはやりやすくなって油断を引き出せる。紫月といったか、この彼には女装してもらって、俺の女として賭けに参加してもらうってのもオツじゃねえか」
突飛な発想だが、確かに奇を衒ういい考えではある。とかく、鐘崎にとっては眉根を寄せてしまいそうな提案ではあるが、作戦としては悪くない。
「了解だよ、レイちゃん! 彼、元が美男子さんだからね。とびきりの美人に仕上げてみせちゃう!」
倫周が任せてよとばかりにガッツポーズで意気込みをみせる。父親を”ちゃん”付けで呼ぶのには驚かされるが、この父子にとってはそれが通常なのだろう。いつまでも若々しいトップモデルは、”お父さん”と呼ばれるよりも友達感覚の方が心地好いのかも知れない。
「じゃあ、紫月さん用のドレスを急いで調達してください!」
言うが早いか、すぐに紫月の変装に取り掛かる倫周だった。
冰には先にディーラーの服に着替えてもらうとして、その間に周を初老の男に変えるべくメイクを施していく。その手際の良さには目を見張るばかりだ。さすがに世界のファッションショーの舞台でレイ・ヒイラギのメイクを担当しているだけあって、早技にも息を呑む。みるみる内に周は別人のような老紳士へと変貌を遂げた。
倫周が続いて冰のヘアスタイルをディーラーらしく整えている側で、今度は鐘崎からも変装の提案が持ち出された。
「まだ時間はあるな。すまないがこいつの変装も頼めるか?」
鐘崎は、自らはテーブルの近くで警護に当たるとして、伴侶の紫月をレイと共に賭けに参加させたいと言った。イカサマ師とその仲間を取り囲むように客の中にレイと紫月を配置すれば、より強固な態勢が敷けるだろうというわけだ。
「こう見えて紫月は体術にも長けている。取り押さえる時に仲間は一人でも多い方がいいだろう」
そう、紫月は幼い頃から実家の道場で鍛錬を積んでいるので、何かの役に立てるかも知れないというのだ。
カジノにとっても乗っ取りのかかった突然の事態にあって、皆が心を砕いてくれる。隼はもちろんのこと、周も兄の風も皆のそんな厚情が身に染みて有り難く思えるのだった。
そんな中、紫月を一目見たレイが「うーん」と首を傾げながらポツリと呟いた。
「えらく綺麗な男だな……。おい、倫周、彼を女性に変装させられるか?」
「――え!?」
皆が驚いたようにしてレイを見やる。
「野郎ばかりが周囲を固めるんじゃ怪しまれないとも限らねえ。美女が一人入れば周りのギャラリーたちは少なからず気を取られる。隙ができることで、敵にとってはやりやすくなって油断を引き出せる。紫月といったか、この彼には女装してもらって、俺の女として賭けに参加してもらうってのもオツじゃねえか」
突飛な発想だが、確かに奇を衒ういい考えではある。とかく、鐘崎にとっては眉根を寄せてしまいそうな提案ではあるが、作戦としては悪くない。
「了解だよ、レイちゃん! 彼、元が美男子さんだからね。とびきりの美人に仕上げてみせちゃう!」
倫周が任せてよとばかりにガッツポーズで意気込みをみせる。父親を”ちゃん”付けで呼ぶのには驚かされるが、この父子にとってはそれが通常なのだろう。いつまでも若々しいトップモデルは、”お父さん”と呼ばれるよりも友達感覚の方が心地好いのかも知れない。
「じゃあ、紫月さん用のドレスを急いで調達してください!」
言うが早いか、すぐに紫月の変装に取り掛かる倫周だった。
38
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる