極道恋事情

一園木蓮

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狙われた恋人

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 その後、少しすると張と冰の二人はカジノでの視察を終えて邸へと戻ったとの報告が入ってきた。と同時に鐘崎が仕掛けてきた盗聴器から、またもや彼らの会話が聞こえてくる――。
『雪吹君、夜まではまだ充分に時間がある。キミの部屋へ案内するから、少し休むといい。大事な勝負だからな。とにかく身体を休めて万全の態勢で迎えてくれたまえ』
『ありがとうございます。お借りしてきたルーレットの盤で少し練習させていただいたら、お言葉に甘えて休ませてもらいます』
『ところで、今夜のルーレットの位置だが、俺はどこに賭ければいいかな? 一応打ち合わせておいた方がいいと思うんだが』
『はい、張さんのお好きな箇所を教えてくだされば、そこにボールをはめられるようにがんばります』
『そうか。では……縁起のいい番号がいいな。黒よりは赤の方が幸先がいい。赤の一番あたりでどうだろうか。一目賭けで構わないか?』
『ええ、大丈夫です。どちらにせよ、一目賭けの方がはっきりと勝敗がつきますから……。赤の一番ですね! 上手くそこを狙えるように精進します!』
『キミなら大丈夫さ。期待しているよ』
『はい! がんばります!』
 その後は応接室を後にして、冰は用意された部屋へと向かったようだった。張も仕事があるということで、自身の書斎へと引っ込んで行ったらしい。
 ホテルでは、盗聴器の音声を聞きながら、周と鐘崎が頭を痛めていた。
「おいおい、張の賭ける位置が赤の一番だと? 言わんこっちゃねえ……」
 鐘崎がやれやれと眉根を寄せてみせる。赤の一番は周が賭けようとしていた目だからだ。
「冰もまったく動じねえで快諾していたところをみると、お前さんの目論みは外れてたってことになるが……」
 この際、冰がどこにボールを落とすつもりなのかを探るよりも、やはり最初から実力行使の方向で準備を手厚くすることに重点を置いた方がいいと鐘崎は思っていた。
 だが、周は思いの外、落ち着いている。
「――まだ手はある。冰が服だの小物だのを買い集めたってことは、そこに何らかのメッセージが込められているに違いねえ」
「メッセージだ?」
「ああ。さっきあいつが様々な方法で俺たちに危険を知らせてよこしたように――だ」
「冰が買ったってのは中華服と刺繍のアップリケ、イミテーションのアクセサリー小物だったな? あとは花束か……。そこから何か想像できるってのか?」
「正直なところ今はまだ分からん……。分からんが、おそらくそれらを使って何かするつもりなのは確かだろう。だがまあ、俺がそれを読み解けなければアウトだ。勝負に負けた時のことを踏まえて安全且つ迅速に冰を連れてカジノを脱出する手立てはしっかり準備しておく」
「脱出経路の導線はファミリーの側近方に任せるとして、俺と親父と源さんでお前ら二人を完璧に援護するから心配するな。当然カジノの入り口では持ち物検査をされるだろうが、別ルートで銃器類を持ち込む算段は親父がつけている。お前は冰を連れて安全にカジノを出ることだけに集中してくれればいい」
「ああ。すまねえな、カネ」
「構わん。任せておけ」
 二人は今一度覚悟を新たにうなずき合ったのだった。



◇    ◇    ◇


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