極道恋事情

一園木蓮

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恋敵

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「そんじゃ、俺は何に化ければいいかな?」
「紫月さんにはロマンスグレーに化けてもらおうかなと……」
「老人か! いいね。さしずめ俺は冰君、いや――冰子嬢のパトロンって役どころかな? それとも執事と洒落込もうか!」
 紫月が面白そうに笑う。
「各テーブルで資金作りをしなければなりませんからね。両方に化けていただけると有り難いんですけど……お願いできますか?」
「もち、喜んで! 役者の経験はねえけど、相手を出し抜くって点ではそこそこやれると思うから! がんばるぜ!」
 後で氷川に焼き餅妬かれねえようにしねえと――と言って笑ってみせた。
「しかしあれだな、氷川と遼だ。夜までには奴らもこっちに到着するような気がすっけどな」
 あの二人のことだ。もしかしたら既にこちらに向けて機中の人かも知れないと紫月は思っていた。
「俺たちがマカオに着陸した時点で、もうGPSも繋がってるだろうからな。今頃は俺らを追い掛けているんじゃねえか?」
 仮にそうでなかったとしても、張からの連絡を受ければすっ飛んで来るだろう。
「俺もそう思って腕時計を彼女の会社の社長さんに預けたんです。白龍ならきっとGPSを辿って彼女の居場所を探り当てられるだろうって思って」
 なるほど。冰が腕時計を預けたのは、単に人質――この場合は抵当という方が正しいか――としてではなく、彼女の安全も考慮してのことだったというわけだ。仮に約束を反故にされ、闇市に売り飛ばされたとしても、社長らの現在地を把握できていれば行方を追えるからだ。紫月はまたしてもひどく感服させられてしまった。
「しかし冰君には本当に驚かされてばかりだぜ。例えるなら――稀代の名軍師……って感じかな」
「とんでもない! 俺なんてそんな……恐れ多いことです!」
 恐縮しつつも、
「じゃあ、紫月さんは名将軍かな。めちゃくちゃ強いですもん!」
「はは! そりゃ褒め過ぎだ」
 二人はそんな話で盛り上がりながら、アパレルショップへと向かったのだった。
 案外朗らかな冰と紫月だが、この直後には少々驚かされる事柄が待ち受けていることとなる。ひと言で”驚く事態”といっても様々あるが、いわばうれしいサプライズとでもいおうか。当初は周の元恋人だという唐静雨絡みで始まった小さな騒動は、ひょんなことからマカオの張も巻き込んでの珍計画を背負い込んで、知らずの内に大海原へと漕ぎ出していたのだった。



◇    ◇    ◇


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