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厄介な依頼人
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「アンタが今みてえに素直で可愛い気持ちでいれば、俺なんかよりももっとイイ男に巡り会えるさ。アンタのことをこの世の誰よりも愛しく思ってくれる――そんでもってアンタ自身も心からそいつのことを大事に思える、そんな相手にきっと巡り会う」
「……こんな……アタシでも……?」
「ああ。だから今の素直な気持ちを忘れるんじゃねえ」
「本当に巡り会えるかしら……。悪いことばっかりして……誰から見ても呆れるくらいの迷惑女よ。誰かに愛してもらえるような資格がないことくらい自分でも分かるわ……」
「そんなことはねえ。アンタは確かに迷惑も掛けた、しちゃいけねえこともした。けど、それに気がついて、ちゃんと反省できたんだ。辛くて苦しい思いもしただろうが、それはアンタが大人のイイ女になるひとつのステップだ。悔しいことも、みっともねえって思うことも、辛い気持ちも、いろんなこと乗り越えて、これまでよりももっともっと可愛くてやさしいイイ女になって、そしていつかアンタが心から愛せるこの世で唯一無二っていえるアンタだけの旦那と巡り合ったら――」
その時は――
「俺や遼二にも紹介してくれよな?」
真っ直ぐに瞳を見つめながらそんなふうに言ってくれる紫月の視線が温かかった。
「……っう……、ご……めんなさい……! あなたにも遼二さんにもいっぱい迷惑掛けて……本当にごめんなさい……」
「よしよし! 今のアンタは最高に可愛くてイイ女だぜ?」
「……う、っう……」
まるで子供のように『えーん、えーん』という声すら上げる勢いで号泣する繭の頭をやさしく撫でながらも、紫月は安堵したように微笑み返したのだった。
「よっしゃ! そんじゃ帰るか」
紫月は両腕を上げて伸びをすると、悪戯そうに笑いながら言った。
「ウチ寄ってくか? 遼は仕事で出掛けてっけど、夕方には帰ると思うし」
クイと長身の腰を屈めて繭の顔を覗き込む。
「ううん、いい。今日は帰ります」
「そっか! ンじゃ、送ってくか?」
「大丈夫。すぐ裏の駐車場に運転手さんが待っててくれてるから」
「そう。だったら安心だな。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「はい。あの……」
「ん?」
「お名前……あなたの。紫月……さんでいいのかしら?」
「ああ、紫月だ。呼び捨てでいいぜ?」
「そんな……」
遠慮がちに首を横に振った繭に、
「俺ら、いいダチになれるな?」
ニカッと、またひとたび白い歯を見せながら紫月は笑った。
「紫月さん……ありがとう……。ありがとう……本当に……!」
こんなアタシに……そんなふうに言ってくれて……!
「……こんな……アタシでも……?」
「ああ。だから今の素直な気持ちを忘れるんじゃねえ」
「本当に巡り会えるかしら……。悪いことばっかりして……誰から見ても呆れるくらいの迷惑女よ。誰かに愛してもらえるような資格がないことくらい自分でも分かるわ……」
「そんなことはねえ。アンタは確かに迷惑も掛けた、しちゃいけねえこともした。けど、それに気がついて、ちゃんと反省できたんだ。辛くて苦しい思いもしただろうが、それはアンタが大人のイイ女になるひとつのステップだ。悔しいことも、みっともねえって思うことも、辛い気持ちも、いろんなこと乗り越えて、これまでよりももっともっと可愛くてやさしいイイ女になって、そしていつかアンタが心から愛せるこの世で唯一無二っていえるアンタだけの旦那と巡り合ったら――」
その時は――
「俺や遼二にも紹介してくれよな?」
真っ直ぐに瞳を見つめながらそんなふうに言ってくれる紫月の視線が温かかった。
「……っう……、ご……めんなさい……! あなたにも遼二さんにもいっぱい迷惑掛けて……本当にごめんなさい……」
「よしよし! 今のアンタは最高に可愛くてイイ女だぜ?」
「……う、っう……」
まるで子供のように『えーん、えーん』という声すら上げる勢いで号泣する繭の頭をやさしく撫でながらも、紫月は安堵したように微笑み返したのだった。
「よっしゃ! そんじゃ帰るか」
紫月は両腕を上げて伸びをすると、悪戯そうに笑いながら言った。
「ウチ寄ってくか? 遼は仕事で出掛けてっけど、夕方には帰ると思うし」
クイと長身の腰を屈めて繭の顔を覗き込む。
「ううん、いい。今日は帰ります」
「そっか! ンじゃ、送ってくか?」
「大丈夫。すぐ裏の駐車場に運転手さんが待っててくれてるから」
「そう。だったら安心だな。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「はい。あの……」
「ん?」
「お名前……あなたの。紫月……さんでいいのかしら?」
「ああ、紫月だ。呼び捨てでいいぜ?」
「そんな……」
遠慮がちに首を横に振った繭に、
「俺ら、いいダチになれるな?」
ニカッと、またひとたび白い歯を見せながら紫月は笑った。
「紫月さん……ありがとう……。ありがとう……本当に……!」
こんなアタシに……そんなふうに言ってくれて……!
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