極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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 その数日後、紫月は鐘崎に誘われてベイサイドにある老舗ホテルに来ていた。夕陽が落ちる寸前から街の灯りが煌めき出す絶景の時間帯にホテル上層階にあるフレンチレストランでゴージャスなディナーデートである。
「いきなしこんなトコでメシ食おうだなんてさ、どうかしたのか?」
 紫月が驚いたように瞳をグリグリとさせている。
「今回、お前には苦労を掛けたからな。日頃の感謝も込めて、たまには水入らずのデートもいいかと思ってな」
「はは! ンな感謝だなんてよぉ。大袈裟なんだから」
「それに、ちょっと話したいこともあってな」
「話? 俺に?」
 それなら家ででもいいのにと、紫月は不思議顔だ。
「大事な話なんだ」
 鐘崎が真顔でじっと見つめながらそう言うのに、ますます首を傾げてしまった。
「何だよ、改まって……」
「なぁ、紫月。俺らが伴侶として生きると決めて、披露目の宴も行ってから二年半になるな」
「ああ、もうそんなになるか」
「俺はお前と共に生きられればそれだけでいいと思ってきたんだが……」
「うん……」
「実は前々から頭の隅にはあったことなんだが、俺とお前の籍のことだ」
「籍?」
 紫月はまたひとたび不思議そうに瞳を見開きながら真向かいの鐘崎を見つめてしまった。
「俺らは伴侶としての契りは交わしたが、籍は未だにそのままだろう? お前の親父さんの気持ちを考えると、一人息子のお前を貰った上に籍まで変えちまうのはどうかと思って今日までそのままにしてきたんだが……。今回いろいろと考えさせられることもあってな。これは俺の我が侭だが、お前に鐘崎の籍に入って欲しいという気持ちがある。それを相談したくてな」
「遼……」
「もちろん、今すぐでなくともいい。ただ、俺にそういう希望があるということを伝えておきたかった。お前の気持ちもだが、親父さんの気持ちも大切にしたいと思っている」
 紫月は驚いたように鐘崎を見つめた。
「遼、それって……」
「正直、お前といられるだけで俺は満足だし、これ以上望むものなどないというのも本当のところなんだが。氷川が冰を周家の籍に入れたがった時も、俺にとっては特に自分たちに置き換えて考えることもなかったんだ。もちろん、氷川の気持ちはよく分かるし、そういった選択肢もあるな――くらいに思っていた。俺とお前の気持ちさえきちんと繋がっていられればそれで充分だし、形にこだわる必要はねえとも思っていた。だが、今回三崎社長のところの娘の件で考えさせられることも多くてな。気持ちだけじゃなく形にするというのも大事なのかも知れねえと思うようになったんだ」
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