極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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 畳敷きの広い応接室で両家が向き合い、厳かな空気に包まれる。
 鐘崎は紫月の父親に向かって深々と頭を下げながら、入籍させて欲しい旨を述べた。
「親父さん、本日はお時間を作っていただき誠にありがとうございます。私と紫月さんとは、これまで皆さんの深いご理解とご厚情に支えられて生涯を共にすべく歩んで参りました。正直なところ、これ以上の贅沢を望むことは甚だ図々しいと承知しておるのですが、より一層の絆をいただきたく、紫月さんを鐘崎の籍にお迎えしたい思いがございます。我が侭を承知で申し上げます。どうかご一考賜りますれば幸甚に存じます」
 畳に手をつき、ひと言ひと言に強い信念と覚悟が滲んだ重みのある挨拶である。紫月の父親の飛燕は、そんな鐘崎の姿に感慨深げに瞳を細めながらうなずいた。
「遼二坊、ご丁寧なお申し出に感謝するよ。私の方こそ、それほどまでに紫月を想っていただけて有り難い限りだ。二人が選んだ人生ならば、精一杯応援させてもらいたいと思う。紫月を鐘崎家の籍にもらってくださるというのなら、私に異存はない。どうかこれからも紫月をよろしく頼みます」
 飛燕も深くお辞儀をしながらそう述べた。
「親父さん、ご快諾賜り感謝致します。私の命ある限り、紫月さんを大切に致します。彼を愛しみ、尊敬し、良い時も悪い時も彼を守り、支え合い、二人で努力し合っていきたいと思います。私は紫月さんだけを伴侶として生涯愛し抜き、添い遂げることを誓います」
 今一度、畳に両手をついてそう述べた鐘崎に、飛燕も、そして綾乃木も感慨深げに瞳を細めてうなずいた。紫月に至っては、思いもかけずに滲み出してしまった涙に自分自身で驚いて、慌ててグイとそれを拭う始末だ。
「は……ッ、あんまカッコいい姿見せつけんなって! つか、俺だけカッコ悪ィし……」
 一旦溢れ出したが最後、なかなか思うように締まってくれない涙腺を照れ臭そうに隠しながら紫月は鼻をすすった。
 そんな二人の様子に、鐘崎の父親の僚一も誇らしそうに微笑みながら瞳を細めたのだった。
「これからは本当の意味で我々は家族だ。姓が鐘崎だろうが一之宮だろうが同じことだ。どっちもお前ら二人の父親だし、お前らは正真正銘俺と飛燕の息子ってことだ。遼二、紫月、これからも鐘崎組と一之宮道場を支えて繁栄させていってくれ」
「親父っさん、ありがとうございます。不束者ですが、今後ともどうぞよろしくお願い致します」
 そう言って頭を下げた紫月に続いて、鐘崎も同様に深く首を垂れた。
「親父さん、親父、どうぞ今後ともよろしくご指導ください」
「ああ。こちらこそよろしく頼むぞ、息子たちよ」
 厳かな儀式が和気藹々とした空気に包まれた頃だ。
「そろそろいいか?」
 鐘崎と紫月にとってはうれしいサプライズといえる面々が部屋の障子の向こうから覗いていることに気がついて、驚かされる羽目となった。
「氷川!」
「冰君! 来てくれたのか!」
 なんと、やはり礼装のようなスーツに身を包んだ周焔と冰が姿を現したのだ。
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