極道恋事情

一園木蓮

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極道の姐

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 残された兄弟は互いを見合いながら呆れまじりの溜め息をこぼし合っていた。
『……ったく、おかしなことになっちまったな。兄貴、身体の方は何ともねえか?』
『ああ、少しばかりこの縄がキツいが、どうってことはねえ。それより焔、もしもあの男が言ったように俺たちが撃ち合いをしなきゃならねえ事態に追い込まれた時のことをどうするかだ。目の前で遼二を人質に取られれば、最悪は本当にヤツが遼二を殺らねえとも限らん』
『……そうだな……。上手いこと相討ちしたように見せ掛けるくらいはしなきゃならねえかもだ』
『急所を外して撃ち合ったとして、ヤツらは俺たちが本当にくたばったかどうかの確認くらいはするだろうからな。痛みを堪えて死んだフリをするのは正直骨が折れるぞ』
『確かに。なあ、兄貴。撃ち合いをさせるつもりなら、その前にこの縄は解かれるはずだよな?』
『おそらくは』
『反撃に出るならその時が勝負じゃねえか? 縄を解かれたと同時にねじ伏せる。むろん、カネが人質に取られているわけだから、相手はロンの他にも何人か仲間が付いてくるだろうが、タイミングさえ測れれば、俺と兄貴でヤツらを狩ることは可能だと思うんだが』
『撃ち合いを避けるならそれしか方法がねえだろうな。お前の言うようにロンには他に数人の仲間がいるようだしな。さっきっから階下で歩き回るような足音も聞こえている』
『まあ、今頃は李や源次郎さんたちも俺らが消えたことに気付いているだろうが、今の状況をどこまで掴んでくれているか分からんしな』
『GPSを追い掛けてくれていれば有り難いんだが……』
 李も源次郎もこの道のプロであるし、非常事態を察してからの行動には信頼がおけると思うものの、こちらからの通信手段が絶たれている現状では、彼らが気が付いて行方を追ってくれていることを祈るしかない。
『とにかくあまり悠長にしてはいられねえということだけは確かだ。食事も丸一日摂っていねえわけだし、ヤツらをねじ伏せるにしても体力勝負になる。瞬発力と判断力が鈍らねえ内にカタをつけなきゃならん』
 兄の風の言葉に周も覚悟のある表情でうなずいた。



◇    ◇    ◇



 一方、集音器の前で一連の会話を聞き入っていた紫月らの方でも、具体的な救出方法を思い巡らせていた。
「二人が言ってるようにあまり悠長にはしていられねえな。女たちが起きてくるまでに何とか乗り込むしかねえ。親父っさん、俺らが向かいの建物へ潜入することはできそうですか?」
 紫月は鐘崎の父親の僚一に、敵地の様子を詳しく尋ねた。
「先程、機器を仕掛けに行った時の様子だと、敷地内に入り込むのは割合容易いと見えた。建物内にはロンの他に男が五、六人は確認できたが、ヤツらは皆、ホテルロビーに固まっている様子だった。飲み食いをしていたところをみると、女が起きてくるまでは手持ち無沙汰といったところだろう。ただ、部屋数は多いから、他にも仮眠などを取っている仲間がもう数人いるかも知れん」
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