346 / 1,212
極道の姐
34
しおりを挟む
「弾は実弾と違って血糊が噴き出すように細工されている。なるべくならば敵の目の前で弾丸を見せないようにした方が賢明だ」
「承知しました」
隼が一通り仕様を確認した後、銃が冰へと手渡される。
「では早速出向くとしよう。もしも中の様子に動きがあったらすぐに通信機で知らせてくれ」
僚一を先頭にして一同はロンらのいるホテル跡地へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
まずは正面玄関からボスの男がロンを呼び出す。その間に僚一と紫月は密かに裏手へと回り、予定通り屋上から潜入することとなった。
「皆さん、演技とはいえ、これから先は皆さんに対しても高飛車な態度をとってしまいますが、どうかお許しくださいね」
律儀にも冰がそんなことを言うので、張もボスの男も微笑ましげにして彼を見つめる。
「兄さん、お若いのに感心なことだな。あんたはマフィアのお偉いさんなんだからな。遠慮なく堂々としててくれ。俺たちを顎で使うくらいの気持ちで構わんぞ」
ボスの男はそう言って笑ったが、内心ではこんなに人の好さそうな青年にロンらを騙す演技ができるのかと心配させられてしまうほどだった。もしも見破られそうになったら手助けをしてやらなければと思っていたのだが、ホテルの玄関が近付くにつれて冰の顔付きも発するオーラもみるみると変わっていく様子に驚かされることとなる。門を叩く頃には、すっかりふてぶてしく変わった冰の雰囲気に唖然とさせられたほどだった。
そうしてボスの男がロンに渡りをつけると、ほどなくして唐静雨も姿を現した。いよいよここからが冰の勝負どころである。片手をポケットへと突っ込んだ不敵な態度で冰は唐静雨の前に立った。
「唐静雨さん、久しぶりだな。俺を覚えているか?」
ふてぶてしい薄ら笑いと共にそう言うと、彼女の方は驚いたように冰を見つめた。むろんのこと、唐静雨にとっては忘れるわけもない憎きライバルの顔だ。何故こんなところに彼がいるのかと、相当に驚いた様子だった。
「あなた……焔の……! まさか……」
もう企てがバレて、冰が側近たちを伴って助けにやって来たのかと思ったようだった。
そこですかさずボスの男がロンと静雨に冰を紹介する。
「この御方はマカオを仕切るマフィアの幹部であられる。お若いが、組織の中でも重鎮だ。此度この御方がお前さんらに加勢したいとおっしゃるんでお連れした」
「マカオのマフィアですって? 何の冗談かしら? あなた、焔とは祝言を挙げたんじゃなくて?」
静雨が警戒心をあらわにしながら棘のある言葉を浴びせ掛ける。冰は薄く苦笑しながら、普段からは想像もつかないような下卑た台詞で受けて立った。
「承知しました」
隼が一通り仕様を確認した後、銃が冰へと手渡される。
「では早速出向くとしよう。もしも中の様子に動きがあったらすぐに通信機で知らせてくれ」
僚一を先頭にして一同はロンらのいるホテル跡地へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
まずは正面玄関からボスの男がロンを呼び出す。その間に僚一と紫月は密かに裏手へと回り、予定通り屋上から潜入することとなった。
「皆さん、演技とはいえ、これから先は皆さんに対しても高飛車な態度をとってしまいますが、どうかお許しくださいね」
律儀にも冰がそんなことを言うので、張もボスの男も微笑ましげにして彼を見つめる。
「兄さん、お若いのに感心なことだな。あんたはマフィアのお偉いさんなんだからな。遠慮なく堂々としててくれ。俺たちを顎で使うくらいの気持ちで構わんぞ」
ボスの男はそう言って笑ったが、内心ではこんなに人の好さそうな青年にロンらを騙す演技ができるのかと心配させられてしまうほどだった。もしも見破られそうになったら手助けをしてやらなければと思っていたのだが、ホテルの玄関が近付くにつれて冰の顔付きも発するオーラもみるみると変わっていく様子に驚かされることとなる。門を叩く頃には、すっかりふてぶてしく変わった冰の雰囲気に唖然とさせられたほどだった。
そうしてボスの男がロンに渡りをつけると、ほどなくして唐静雨も姿を現した。いよいよここからが冰の勝負どころである。片手をポケットへと突っ込んだ不敵な態度で冰は唐静雨の前に立った。
「唐静雨さん、久しぶりだな。俺を覚えているか?」
ふてぶてしい薄ら笑いと共にそう言うと、彼女の方は驚いたように冰を見つめた。むろんのこと、唐静雨にとっては忘れるわけもない憎きライバルの顔だ。何故こんなところに彼がいるのかと、相当に驚いた様子だった。
「あなた……焔の……! まさか……」
もう企てがバレて、冰が側近たちを伴って助けにやって来たのかと思ったようだった。
そこですかさずボスの男がロンと静雨に冰を紹介する。
「この御方はマカオを仕切るマフィアの幹部であられる。お若いが、組織の中でも重鎮だ。此度この御方がお前さんらに加勢したいとおっしゃるんでお連れした」
「マカオのマフィアですって? 何の冗談かしら? あなた、焔とは祝言を挙げたんじゃなくて?」
静雨が警戒心をあらわにしながら棘のある言葉を浴びせ掛ける。冰は薄く苦笑しながら、普段からは想像もつかないような下卑た台詞で受けて立った。
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる