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チェインジング・ダーリン
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犯人たちが倉庫を後にしたのを確認すると、鐘崎はバスを降りて周囲を確認して歩いた。すると、数ヵ所に爆発物と思われる物を発見――いずれもタイマーが仕掛けられていて、残り時間は二十分ほどと表示されていた。
「クソッ! ヤツらこの倉庫ごと吹っ飛ばす気か……!」
つまりは最初からそのつもりだったのだろう。二十分という時間は離陸までの猶予ということか。外では警察が交渉人らを手配している頃だろうが、そんなに悠長にしている時間はとうにない。モタモタしていれば全員がお陀仏だ。
幸い、周囲には犯人たちが分乗して来たワゴン車などが乗り捨てられている。これを使えば老婦人の救出も可能かも知れない。
「森崎、お前はこのままバスを運転して警察が待機している飛行場の入り口まで行け! とにかく少しでもこの倉庫から離れるんだ。バスを盾にするように停めて、警察と協力して人質たちを降ろせ!」
後は警察が保護してくれるだろう。
「それからここに爆発物が仕掛けられていることを伝えて、間に合うようなら処理班を投入するように言え。ただし爆発までは二十分を切っている。無理なら出来るだけ遠くへ離れるよう伝えろ!」
「分かりました! ですが、鐘崎さんは……」
「俺はこいつに乗って拐われた婦人を救出に向かう。時間がねえ! 急げ!」
鐘崎がワゴン車に乗り込もうとすると、冰がバスから駆け降りて来た。
「鐘崎さん、俺も一緒に行きます!」
「バカ言うな! お前は森崎と一緒にバスで避難するんだ!」
だが冰は聞かなかった。
「二人の方が動きやすいはずです! 微力ですが、それでも何かの役には立てるかも知れません。連れて行ってください!」
「しかし……お前は氷川の……。いいや、絶対にダメだ! 森崎と一緒にバスで避難するんだ!」
そうだ。命に代えても親友の伴侶を危険に晒すわけにはいかない。周がこの場にいない以上、冰を守るのは自分の役割だからだ。
「俺は鐘崎さんたちのように精鋭じゃありませんが、きっと役に立てることがあります。時間がありません! 行きましょう!」
冰は意思のある表情でそう言うと、鐘崎が躊躇している間に助手席に乗り込んでしまった。
「……おい! ――ッ、仕方ねえ、くれぐれも無茶はするなよ! 身を低くしてしっかり捕まってろ!」
「はい!」
鐘崎は倉庫のシャッターを開けると、バスを送り出し、自らもワゴン車で滑走路へと向かった。
犯人たちの多くは既に機内に乗り込んでいるようだったが、拐った老婦人を連れた男の一団が三人ほどで滑走路を小走りしている様子が窺えた。
「間に合うか……。冰、全速力で突っ込むからしっかり捕まってろ!」
「はい!」
「クソッ! ヤツらこの倉庫ごと吹っ飛ばす気か……!」
つまりは最初からそのつもりだったのだろう。二十分という時間は離陸までの猶予ということか。外では警察が交渉人らを手配している頃だろうが、そんなに悠長にしている時間はとうにない。モタモタしていれば全員がお陀仏だ。
幸い、周囲には犯人たちが分乗して来たワゴン車などが乗り捨てられている。これを使えば老婦人の救出も可能かも知れない。
「森崎、お前はこのままバスを運転して警察が待機している飛行場の入り口まで行け! とにかく少しでもこの倉庫から離れるんだ。バスを盾にするように停めて、警察と協力して人質たちを降ろせ!」
後は警察が保護してくれるだろう。
「それからここに爆発物が仕掛けられていることを伝えて、間に合うようなら処理班を投入するように言え。ただし爆発までは二十分を切っている。無理なら出来るだけ遠くへ離れるよう伝えろ!」
「分かりました! ですが、鐘崎さんは……」
「俺はこいつに乗って拐われた婦人を救出に向かう。時間がねえ! 急げ!」
鐘崎がワゴン車に乗り込もうとすると、冰がバスから駆け降りて来た。
「鐘崎さん、俺も一緒に行きます!」
「バカ言うな! お前は森崎と一緒にバスで避難するんだ!」
だが冰は聞かなかった。
「二人の方が動きやすいはずです! 微力ですが、それでも何かの役には立てるかも知れません。連れて行ってください!」
「しかし……お前は氷川の……。いいや、絶対にダメだ! 森崎と一緒にバスで避難するんだ!」
そうだ。命に代えても親友の伴侶を危険に晒すわけにはいかない。周がこの場にいない以上、冰を守るのは自分の役割だからだ。
「俺は鐘崎さんたちのように精鋭じゃありませんが、きっと役に立てることがあります。時間がありません! 行きましょう!」
冰は意思のある表情でそう言うと、鐘崎が躊躇している間に助手席に乗り込んでしまった。
「……おい! ――ッ、仕方ねえ、くれぐれも無茶はするなよ! 身を低くしてしっかり捕まってろ!」
「はい!」
鐘崎は倉庫のシャッターを開けると、バスを送り出し、自らもワゴン車で滑走路へと向かった。
犯人たちの多くは既に機内に乗り込んでいるようだったが、拐った老婦人を連れた男の一団が三人ほどで滑走路を小走りしている様子が窺えた。
「間に合うか……。冰、全速力で突っ込むからしっかり捕まってろ!」
「はい!」
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