極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「その点は策を講ずるしかありませんな。客を酔い潰して床に行き着くまでには眠らせてしまうか、あるいは不意打ちで意識を刈り取るか――。何か方法を考えます」
 源次郎が意を固くする。
「そっか……。お客さんを眠らせてしまうのも確かに手ですよね……。それとも――ねえ、皆さん! ここには賭場もあるってさっきの男の人が言ってましたよね?」
「ああ、そういえばそんなことを言ってたな」
「でしたら――花魁と床を共にできるかどうかを賭けて、お客さんに賭博で勝負してもらうっていうのはどうでしょう」
「賭博だ? どういうことだ」
 レイが片眉を吊り上げながらも興味津々で身を乗り出す。
「俺、じいちゃんからディーラーの技を仕込まれた時に日本の壺振りのやり方も一緒に教わったんです。賽子サイコロを振る丁半ちょうはんっていうやつです」
「――お前さん、壺振りまでできるってのか?」
「ええ、まあ……。俺は日本人だし、故国古来の技も知っておいて損はないって、じいちゃんが教えてくれたんです。だから丁半と花札は一応できます。それに……あまりいいこととは思いませんけど、イカサマで賽子の目を思い通りにする方法も知っています」
 皆は驚いた。この冰のディーラーとしての腕前は言うまでもないが、まさか壺振りに花札、しかもイカサマまで身に付けているとはさすがに驚くところだ。
「それで……その、花魁との床を賭けてお客さんには俺と丁半で勝負してもらうんです。ヘンな話ですが、ここを経営している人たちにとっては、どんな形であれお金が稼げればいいわけでしょう? だったら賭場で稼ごうが床で稼ごうが同じことだと思うんですけど……」
 なるほど、一理ある。
「うむ。案外いい考えかも知れねえな。お前さん、本当にイカサマで狙った目を出すことができるってのか?」
「ええ、大丈夫です。ルーレットの修行と一緒にうんざりするくらい練習しましたから。実際に壺を振らせてもらえれば勘はすぐに取り戻せると思います」
「そうか……。だったらそれこそ倫周にメイクさせて冰を粋な賭博師に仕立て上げれば、店の評判が上がるかも知れねえ。花魁に会うには賭場を通らなきゃならねえってんで、より高嶺の花として評判になるだろうし、面白い趣向といえる。店の方にしても二重で稼げれば文句はねえだろう。まあ、たまには客に勝たせなきゃ疑われるだろうが、その場合はそれこそ酔い潰して寝かすか、峰打ちでもして気絶させちまえばいい」
 都合がいいことには、全員が花魁付きの髪結や下男として共にいられるという現実である。上納金さえ文句なしに稼ぎ出せば、店側とて願ったり叶ったりであろう。文句など出ないはずである。
「よし! じゃあ早速明日、あのじいさんに提案してみよう。しばらくはそれで様子見するとして、焔と遼二との連絡はその内何とかなるだろう」
 今のところは、客として訪れて来る中に信頼できそうな人物がいれば、伝言を頼むしか通信手段はない。問題はその人物の見極めだが、それは現場で直に客を見定めて考えるしかないだろう。
「それじゃ、今夜は休むとするか。明日から忙しくなりそうだ」
 一同はこれからのことに備えて、一先ずは体力の万全に努めることにしたのだった。
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