極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「いや、まだだ。ここのオヤジも俺のことは単なる客としか思っていねえだろう。遊女の方の遊郭にはかなり足を運んだからな。やっと最近になって常連と認識してもらえるまでに漕ぎ着けたという塩梅だが……何とか力になってやりたいと思っている。真っ当な商売をしようとギリギリまで頑張っていたようだからな」
 だが上納金の催促は増えるばかりで、いよいよ理想を言っていられる状況ではないところまで追い込まれてしまったということか。
「とにかく、ここの親父たちのような元々からいた者たちの為にもまずは乗っ取りを図った組織を潰すしかねえ。だが相手は無法者の集まりだ。正攻法では手に負えんことは我々警察も承知している」
 丹羽曰く、それ故に近々鐘崎組と周への助力を願おうと思っていたところだったのだそうだ。
「先日、ちょうどお前さん方が拐われた日に俺は鐘崎らと昼メシを共にしただろう? その時にチラっと助力の話はしていたんだが――危険が伴うのも事実だ。詳しい話はもう少し下準備を整えてからと思っていたが、まさかこんな形でお前さん方が当事者になっちまうとはな……」
 とんだ偶然もあったものだと丹羽は苦笑してみせた。
「だがまあ、こうなっちまった以上は仕方がねえ。お前らがこの茶屋に連れて来られたのは不幸中の幸いと言える。仮に他所のもっと扱いが酷い店だったら今頃はこんな悠長にしていられなかったろうからな」
 ここは街の中でも入り口の大門に比較的近い位置にあり、高級な茶屋が立ち並ぶ一画だそうだ。奥へ行くほど茶屋の質も落ち、乗っ取り班たちがアジトにしている区域では殆どスラムと化しているようだと丹羽は言った。やはりここの主人はまだ誇りを捨てていなかったということだろう。
「予定より少し早いが、すぐに鐘崎と周に応援を要請するとしよう」
 ただ、ここへの出入りは厳しくチェックされる為、丹羽の紹介状付きの客か、あるいは下男や用心棒のような働き手として二人を迎え入れる形を取るしかないという。
「なるべく迅速にやるつもりだが、もうしばらくの間は何とか踏みこたえてくれ。俺も男花魁が気に入ったということで、ちょくちょく顔を出すようにする」
 丹羽にも都合があるのだろうが、こうなった以上は如何に危険が伴おうとも一刻も早く鐘崎と周に合流してもらうのが得策といえる。いっそのこと、ここの主人にこちら側の正体を明かして、店ぐるみで協力してもらった方がいいのではと源次郎は思った。
「そうしたいのは山々だが、万が一にもそれが他所に漏れねえとも限らん。主人の伊三郎氏や番頭くらいまでは信用できるとしても、ここに勤める者たちの中に敵のスパイが潜り込んでいないとも言えねえからな。敵を出し抜くには味方からというのもある」
 なるほど、一理あるか。今しばらくは秘密裏に動くしかなさそうである。だがまあ、とにかくはこれで外との連絡も付きそうだし、ひとまずは安泰と思えた。丹羽はこの遊郭で紫月らがどういった役割をさせられているのかを詳しく聞くと、表向きは賭場を破って花魁をモノにできた初の客という形にして座敷を後にしたのだった。
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