極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「クソッ! 三浦屋の狸オヤジめが! ヤツは昔から粋だの雅だのと綺麗事ばかり並べやがるいけすかねえ野郎だったが……」
 焦れる頭を横目に、参謀らしき男が宥めるように口を挟んだ。
「とにかく少し様子を見るしかねえでしょうな。三浦のじいさんがどこから金を捻り出しているかというのもですが、あの花魁と壺振りが実際にはどんな働きをしているのかなど探る必要があります。本当に客を取っているのかどうかも怪しいもんです」
「ンなこたぁ分かってらぁ! だがどうやってそれを確かめるってんだ! 茶屋は連日超満員でやたらと近付けねえって話じゃねえか」
 それまでチビリチビリとやっていた熱燗の盃を勢いよく掘り投げては、寂れた襖にまたひとつ新たな穴を増やす。どうにか威厳を保とうと平静を装ってはいたものの、さすがに限界の様子だ。
「まあ頭、聞いてくだせえ。幸い俺はヤツらにツラが割れちゃいねえですし、明日にでも客を装って実際にこの目で確かめてきますぜ」
「……てめえが直々にか? 客を装うってんなら、てめえ一人で行くことになるぜ?」
 仮に反撃に遭ったとしても、応援の手下がいない孤立状態になりかねない。
「そこいらは上手くやってみせますぜ。まあ、花魁を買うわけですから? ちょいと経費も嵩むってもんですが、そんなモン後から取り返せばいい」
「ふん! それしか手はねえか。くれぐれも抜かるんじゃねえぞ!」
 頭の男は不本意ながらも『チッ!』と舌打ちと共に参謀の目の前へと札束を放り投げた。
「そいつは見せ金だ。必ず取り戻して来いよ」
 無法者たちはすぐに果たし合いには出ずに、先ずは男遊郭の実態を探ることにしたようである。大勢で殴り込みに掛かれば、あるいはすぐにカタがつくとも考えられるが、万が一にも相手が上手だった場合は深手を負いかねない。それほどに紫月から受けた仕打ちが肝を冷やしたということになるのであろう。ともあれ、当の紫月らにとっては時間が稼げる幸いとなったのは事実であった。

 その頃、鐘崎らを呼びに行った倫周の方でもちょっとした困難に陥っていた。上手く連絡がついて鐘崎らを地下施設に連れて来るまでは順調だったのだが、入り口の大門での検閲で難儀な問題が持ち上がってしまったのだ。というのも、紫月らのことを剣客ではないかと疑い始めた敵によって、これまで以上に施設への出入りが厳しくなってしまった為であった。特に働き手として新たに雇われる人材へのチェックが入念になっており、倫周たちが連れて来られた時のように自由にはいかなくなっていたからだ。おそらくは剣客が増えることを懸念した敵が、そこだけは即座に動いたと思われる。
 鐘崎と周はもちろんのこと、組からは幹部の清水や橘、周の方では李や劉をはじめ、紫月の父親の飛燕といった精鋭がまとめてやって来たのだが、このままでは怪しまれて全員が潜り込むのは難しそうだとの連絡が番頭を通して茶屋の皆の元へと届けられた。
「……ッ! 相手も早速動きやがったか……」
「こうなったら仕方がねえ。一度に潜り込むのが無理なら一日一人ずつとかにするしかねえか」
 紫月らは主人に言って、周辺の茶屋にも協力してもらい、各茶屋に潜り込ませる人数を振り分けることにした。鐘崎と周にはすぐにでも合流してもらいたい為、彼ら二人は新規の客という形で潜入してもらうことにする。それでもチェックが厳しく、審査が通るまでには丸一日は掛かりそうだということだった。
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