極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 自分たちがアジトにしているここいら界隈にも女がいないわけではないが、殆どがあまり金にならなかったりで茶屋でも持て余されていたような者ばかりだ。莫大な資金を投じて男花魁を買い続けているような男が満足するとは思えない。
「ふむ、それならちょうどいい女がいる。ここから数件ばかり行ったところに美濃屋みのやってのがあるだろう。あそこで御職おしょくを張ってる酔芙蓉すいふようって女郎がいてな。あの女なら打ってつけかも知れん」
 御職遊女とは店の女たちの中でもトップに立つ稼ぎ手のことで、今でいうところのナンバーワンホステスのようなものである。その女のことなら参謀の男も知っていたようだ。
「酔芙蓉ですかい……。そういや、ここへ来たばかりの頃に一、二度相手にしたことがありましたぜ。確かにツラは別嬪だが、性質がからっきしですわ。あんまりにも可愛げがねえんでそれっきりでぇ」
 酔芙蓉は容姿だけで言えばすぐにも花魁になれそうな美人なのだが、中身がまるで伴っていない女である。琴や三味線が弾けないくらいはともかくとしても、踊りひとつまともに舞えず、だが男の酒の相手をするのだけは非常に巧い。金や地位に対してもかなりの強欲で、少しばかり太そうな客と見れば自分から色を押し売りするような性根たくましい女なのだ。
 彼女がいる美濃屋からはまだ花魁格の遊女は出ておらず、店の規模もそうたいして大きくはないのだが、出世欲の強い酔芙蓉はせめて店の御職くらいは張り続けなければと躍起になっているようだ。ともすれば美濃屋を出て、いずれは三浦屋のような大手の茶屋に鞍替えしたいと狙っているのは聞かずとも想像がつく。
「なに、いずれ花魁にしてやるとでも言や、あの強欲女のことだ。飛び付いてくるに違いねえ。床も巧い酔芙蓉にかかりゃ、その傷野郎だってすぐに堕ちるだろうぜ。ヤツが女に夢中になった頃合を見て、女を盾にこっちの仲間に引き入れりゃいい」
「はぁ……、まあ策としては悪くはねえと思いますが、そう上手くいきますかね? 傷野郎が根っからの男色だとすりゃ、女を充てがったところで逆効果ってなことも考えられますぜ?」
 参謀の男が苦笑する。
「そこは上手くやるさ。こいつを使うんだ」
 頭の男は煙草盆の引き出しから小瓶を取り出すと、ニヤッと企みめいた笑いをしてみせた。
「そいつぁ何です?」
「神経系等を狂わせる薬だ。意識を混濁させることができる。こいつを数日盛り続けるってーとな、下手すりゃ記憶も曖昧になるっておっかねえ代物さ。まだ人間で試したことはねえが、実験するにはちょうどいい機会だ。ついでに催淫剤でも混ぜて傷野郎に飲ませれば一撃だろうが!」
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