極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「あの人が失脚した後、アタイ……いえ、アタシには彼が残した膨大なツケだけが残ったわ。あの人は確かに地位もお金もあったけど、店に来る時は大概がツケだった……。アタシもまさか踏み倒されるなんて思ってもいなかったから、気が付けばそれが当然のようになってたわ。今思えば甘かったとしか言いようがない。完全にアタシの落ち度だわね」
 これまでの話し方から徐々に普段の言葉使いへと変えながら女は苦笑まじりで経緯を話した。
「なるほどな。あの男は確かに力も資産もあるヤツだが、裏じゃ金に汚ねえという噂もあったからな。まさか飲み代までツケにしていたとは驚きだ」
 僚一が眉をひそめたのを見て、女はまたしても驚いたように首を傾げてみせた。
「あの男って……言ったね? あんた、アタシを騙した男のことまで調べたってわけ?」
 僚一の口ぶりから、いったいどこまで知っているのだと驚き顔でいる。
「いや、さすがにそこまでは知らなかったさ。だがあんたが姿を消した時期と賄賂で失脚した政治家と聞けば、誰のことかくらいは想像がつくというものだ」
「は……ホント大した人ね! そう、あの人が残したツケのせいでアタシは女将を解雇されたわ。膨大な借金を返すあてもなく途方に暮れていた時に、今の店、美濃屋のお父さんがアタシを救ってくれたってわけ。お父さんはお客としてよく料亭に来ていたから……アタシを不憫に思ってくれたんだと思うわ。借金を全額肩代わりしてくれて、アタシにこの地下の花街でやり直さないかって言ってくれた。それがここへ来たきっかけだったわ」
 だが、彼女が勤めて三月もした頃に例の輩たちがやって来て、街ごと乗っ取られてしまったということだった。
「奴らが来てからこの地下の街は様変わりしてしまった。芙蓉に勤めていた頃から顔馴染みだった芸妓ちゃんたちも次々とここへ連れられて来る子が増えて……中にはよく知っている子もいたわ。まだ若くて一生懸命いい芸妓になる為に見番けんばんで稽古事に励んでいた子たちもいて、そんな彼女たちが無理矢理遊女にさせられていくのを目の当たりにしたわ。中には修業したばかりの生娘きむすめだっているっていうのに……」
 そんな娘たちが色を売らされるのを見ていられずに、自分が美濃屋の御職となって稼ぎの為に貢献しようと思ったのだと女は言った。
「アタシは彼女たちと比べれば、既に汚れまくっている女だからね。こんなアタシでも若い芸妓ちゃんたちや美濃屋のお父さんの為に少しでも役に立てるならと思ってね」
 女は吐き捨てるように苦笑したが、その強がりとは裏腹に、どこか寂しげな瞳が諦めの胸中を物語っているようでもあった。
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