極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「ほええ……そうだったのか」
「そう言われてみれば確かに昨日は一之宮が踏み切った瞬間に殆ど感触を感じなかった気がするな」
「ああ。えらく軽い印象だった」
 もっと重みと衝撃がくると踏んで覚悟していたものの、殆ど感覚がないくらいだったと言う。それこそ実戦の緊張下だったからこそそう感じただけかと思っていたと周も鐘崎もうなずき合っている。重みを感じなかったのは紫月が体重を消すタイミングがピタリと合っていたという証拠だ。
「……っつーかさ、何で親父たちは俺らのあの技を知ってんだ?」
 当時、練習していたことは飛燕にも内緒でやっていたつもりだ。むろんのこと僚一が知る由もなかったろうにと三人は不思議顔だ。
「いやぁ、実はこっそり僚一と二人でおめえらが稽古してんのを見てたわけだ」
「俺たちは何で成功しねえのか、その理由は分かっちゃいたがな。お前さんたちが一生懸命真剣にやってる姿が可愛くてなぁ」
「いつも二人でおめえらの稽古を覗き見ちゃ楽しんでいたもんだ」
 父親たちの言葉に紫月らは「はぁ!?」と眉間に皺を寄せてしまった。
「まさか知ってたってかー?」
 だったらアドバイスをくれても良かったのにと紫月が頬を膨らませている。
「だがあれは他人に言われたからといって成功するもんでもねえさ。仮に俺たちがアドバイスしたとしても実戦の極限下にならねえとまず上手くはいかなかったろうからな」
「そうかも知れねえけどさぁ」
「俺たちはお前ら三人がそんな技を編み出そうとしていること自体に感動してな。さすがにカエルの子はカエルだと誇らしく思ったもんだ」
 こんなふうに言われれば何ともむず痒いというか嬉しくなってしまう。紫月は照れ隠しの為か、ますますプウと唇を尖らせながらも、それとは裏腹に視線を泳がせながら頬を染めてみせた。
「カエルっつか……親父の場合は虎って感じだけどねー」
「言えてる! カエルなんて可愛いイメージじゃねえな」
「まあ虎ってのはてめえのガキを穴に突き落として酸いも甘いも体験させるスパルタ種族という喩えもあるしな。そういった意味では僚一と飛燕の考えそうなこった」
 鐘崎と周も参戦して父親たちをジトーっと見やる。周などはもはや『親父さんたち』ではなく名前のままで呼び捨てだ。そんな様子に全員同時に噴き出してしまい、鐘崎邸の中庭は大きな笑い声で包まれたのだった。
 ちょうどそんな時に警視庁の丹羽がやって来て、
「何だ、えらく盛り上がってるじゃねえか」
 キョトンと不思議顔で首をかしげた仕草にまた笑いをそそられて、楽しい午後の茶会はますます盛り上がったのだった。
「此度は皆ご苦労だった。お陰で俺たち警察が長い間追っていた無法者たちを逮捕することができた。心から礼を言う」
 丁寧に頭を下げた丹羽の話では、元々あの地下花街を乗っ取った無法者の他にも、彼らが雇い入れた大物のテロリストたちもお縄にすることができて大団円だということだった。
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