極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 そんな二人にとって驚かされる出来事が起こったのは週が明けた月曜のことだった。なんと一昨日に会った香山が汐留の社屋を訪ねて来たからである。
 それはもうすぐ昼になろうという時刻だった。今日はクライアントとの打ち合わせもなく比較的のんびりとしたスケジュールだったので、ランチをどうしようかなどと李と劉も含めた四人で朗らかに相談していた時であった。受付嬢の矢部清美やべ きよみから少々困惑したような声で内線が入ったのだ。
 清美は一等最初の時、冰が訪ねて来た際に著しく失礼な対応をしたことで李から営業部へと配置換えをさせられた経緯のある気の強い女性だ。だが社を思う気持ちには芯があり、受付嬢は社の顔だと誇りを持って臨んでいるところは尊敬にも値する。冰に対してもきちんと謝罪をして、尚且つ冰が拉致された際にも機転を利かせて即座に李に知らせてよこした功績が認められ、再び受付嬢に返り咲いたという逞しい存在でもある。以後は反省すべき点はわきまえて、客への応対も卒なくこなしてくれている、正に立派な社の顔である。そんな彼女がほとほと困った様子で内線をかけてきたものだから、李らは何事が起こったかと驚かされたわけである。
「実はアポイントはいただいていないお客様なのですが……」
 客には聞こえないように気遣っているのか、声のくぐもり具合からするとおそらく来客の荷物などを預かっておくクローゼットスペースに篭って通話しているようだ。冰の一件以来、きちんと学習して気遣いの感じられる対応といえた。
「アポ無し――とな。例えそうでも仕事に関する要件ならば私が会うが」
 ごくたまに突如飛び込みのような形で営業をかけてくる者もいる為、ゆくゆくは仕事が組める可能性もゼロではないので、アポイントがないからといって蔑ろにするのは浅はかというものだ。李は社長に代わって先ずは自分が会ってみてもいいと思ったようだが、話はそう単純なものではなかった。
「いえ、それが……仕事絡みのご用事ではないとのことでして。以前当社にお勤めになっていらした方なんだそうです。香山こうやま様という男性ですが、身なりなどはきちんとしていらっしゃいます。是非社長に面会されたいと申されておりまして……」
 意外にも押しが強いらしく、それでひとまずは李に判断を仰ごうと思ったらしい。これにはさすがの李も首を傾げさせられてしまうこととなった。
「香山というと……例の香山か?」
 一昨日偶然に街中で出会ったばかりの彼が一体何の用事があるというのだろう。すぐ側に周もいるので、これは本人に意向を仰ぐしかない。
「香山か。まあいい、どうせメシを食いに出ようと思っていたところだ。こちらから階下したに出向こう」
 周がとりあえず用件を聞くと言うので、李と劉、そして冰の四人でランチに出掛けがてらロビーで会うこととなった。
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