極道恋事情

一園木蓮

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慟哭

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 半開きの引き出しはスマートフォンを見つけ易くする為だろうか。今しがたの犯人との通話には妙な動きをするなという指示がなされていた。当然源次郎他、組員たちにも事情を伝えられないと踏んだ紫月が、異変を知らせる手掛かりとして置いて行ったのかも知れない。
 あるいは――彼のスマートフォンには鐘崎や周をはじめとする貴重な連絡先が入っている。万が一敵に取り上げられた時のことを考えて、それらを流出させない為に持って出なかったということか――。
「若! 姐さんのピアスが港の倉庫街を示しました! ですがスマフォは事務所に置いて行かれています。今、私の手元にあります」
『スマフォを置いて行っただと! 何故――』
 このことから鐘崎もまた、紫月の異変と配慮を感じ取った様子だ。
『俺は港へ向かう! 念の為、そのスマフォに何か手掛かりが残されていないか調べてくれ!』
「分かりました! 私もすぐに追います!」
 とにかくピアスだけでも繋がったことにホッとするも、紫月の安否が気に掛かる。スマートフォンの向こうでは鐘崎が焦燥感に打ち震えていた。
『組員を二手に分けて、源さんはすぐに現地へ向かってくれ! その間、組が空になるのはまずい。犯人から何らかの連絡が入るかも知れんし、留守をついて組自体が狙われるという可能性もある。留守番にある程度の人数を割いてすぐに現地へ向かってくれ! 俺は氷川に応援を要請する!』
「承知しました!」
『それから武装も忘れるな!』
「万全にして参ります!」
 通話を終えると、源次郎は幹部補佐の橘を筆頭に組の留守番を預け、門を厳重に閉じた上で警備室には自分たちが戻るまで誰も邸へ入れるなと言伝る。武装を万全にし、春日野と残りの組員を連れて港へと向かうことにした。
「姐さんは組を出る時に徒歩で行かれている。自治会館までは歩いてすぐだから、我々に疑わせない為にそうされたのだろう。とすればどこかで車を拾ったはずだ。若い者らに言って、手分けして近隣のタクシー会社を当たらせてくれ!」
 その橘には一之宮道場にも連絡してくれるように言い、紫月の父親にも事情を伝えるよう指示するのも忘れなかった。
 一方の鐘崎は何を置いても紫月の位置情報が示す港の倉庫街を目指しながら、周焔へと応援を要請した。
 父の僚一は大阪だ。敵の目星をつけるにしても組員だけでは人手が足りない。こんな時は互いの背中を預けられる周がいてくれることが何よりの支えであった。
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