極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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「遼二さん、あなたが――? でもそれじゃ危険だわ。万が一のことでもあったらさすがに申し訳ないわ」
 メビィはためらっていたが、鐘崎は是非とも自分にやらせて欲しいと言った。
「昨日会ったCEOの感じだと身長は俺と大差なかった。彼は眼鏡をかけていたし、少し老けたメイクを施して帽子を目深に被れば何とかごまかせるだろう。何と言ってもヤツらの目的はシステムの在処だ。背格好さえ似ていればそうそう疑われることもあるまい」
 アタッシュケースにパソコンをセットして持参し、そこからシステムにアクセスできると言って実際に彼らの目の前で開いてみせればおそらく飛びつくはずだ。持って来た人間が本物だろうが偽物だろうが、さして影響はないだろうというのだ。
「……分かったわ。確かに遼二さんの変装術は信頼できるし、うちのエージェントよりも様々なケースに対応していただけるのは事実ね」
 メビィは了承すると、その代わり自分も秘書として付いていくと言った。
 ところがそれを聞いていた本物の秘書の女性が、是非とも自分に行かせて欲しいと言い出した。
「どうか私に行かせてください! CEOと子涵君が心配で……気が気でないのです!」
「……お気持ちは有り難く存じますわ。ですが危険です。一般人を巻き込むわけには参りませんし、ここは我々に任せていただきたく思います」
 メビィが説得したが、秘書の女性は頑なだった。
「元の奥様と一緒に社を去った男性が犯人だというのでしたら、彼は私の顔をよく知っているはずです。一時期は同じ部署で仕事を共にしたこともありますから……。それに――今の皆さんの計画ですと私が一緒にいればこの鐘崎様が本当のCEOだと信じてくれるはずです!」
 何とか上手く話をごまかして信じてもらえるように持っていきますから――と、彼女は必死だ。それだけ本気でCEOと子涵少年のことを思っているのがひしひしと伝わってきた。
「――そうだな。危険には違いないが、彼女が一緒に行ってくれれば敵も信じるかも知れん。こうなったら援護の体制を万全にして、ここはご厚意に甘えるのが良さそうだ」
 鐘崎が承諾を口にすると、だったらメビィも秘書の側付きということで同行させて欲しいと言った。
「確かに画期的というくらいのシステムだ。側付きが数人付いて来たとしてもおかしくはないだろう。メビィの他にもう一人二人――男連中にも同行してもらうか」
 鐘崎はメビィのチームから男性を二人ばかり見繕うつもりでいたが、だったら俺が行こうと周が名乗りを上げてくれた。
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