極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
969 / 1,212
倒産の罠

しおりを挟む
 もうそんなところまで考えてあるわけか。丹羽は正直なところ驚きを隠せなかった。鐘崎組にこの件を依頼すれば、何らかの知恵をもらえるかとは思っていたものの、まさか囮作戦など考えもつかなかったからだ。しかもその囮役に周一族の社を使うなどということからしても仰天させられる。
 だが、方法としては確かに悪くない。周焔の社は敵にとって甘い汁といえる大企業であるし、例えば仮に敵が非常に優秀であったとして、アイス・カンパニーのバックに香港マフィアがついていると知っていたと仮定する。この作戦が敵を検挙する罠だと勘繰られたとしても、香港マフィア頭領一族である周ファミリーの息が掛かった会社をファミリー自ら囮に使うとはおそらく考えないだろうからだ。上手くすれば将来的にはマフィアの組織そのものを乗っ取れると踏んで、短期間で大々的に勝負に出てくる可能性もある。
 それとは逆にアイス・カンパニーとマフィアの接点を知らなかった場合でも、日本国内では大手の企業だ。金儲けが目的ならば話に乗ってくるはずだ。
 そうなることを見込んでの策なのだろうが、それにしても度胸がいいとしか言いようがない。一歩間違えば、本当に組織ごと乗っ取られることも皆無ではない。そんなことになれば責任問題どころではなくなってくるだろう。今更ではあるが、丹羽は鐘崎組に依頼したことを後悔することにならなければ良いがと祈る心持ちにさせられてしまった。
 そんな丹羽の危惧を他所に裏社会の男たちは着々と計画の手順を語る。
「この計画を実行するに当たって、もうひとつ重要な事柄を伝えておかねばならん。それは事が済むまで我々以外の者に計画を漏らさないということだ」
 どういう意味だと丹羽が首を傾げる。
「計画の実行部隊である我々数人を除く者、しいては我々の家族身内にも本当のことを伝えてはならないということだ」
 身内とはつまり周焔の伴侶である冰や、鐘崎の伴侶の紫月も含めた近しい者にも極秘にしたまま遂行するという意味らしい。
「ご家族にも内緒にされるので?」
「そうだ。我が妻や長男・風の嫁はもちろん、次男・焔の伴侶である冰、それに遼二の伴侶・紫月にも内密とする。理由は敵方からの探りに対する信憑性を確実にする為だ」
 隼に続いて長男の風が捕捉する。
「冰や紫月は我々と違って根が実直だからな。実際には乗っ取られていないと分かっていての演技は敵に不審感を抱かせかねない。逆に冰らが必死に生活を守ろうとする姿こそが敵を欺く要となるだろう」
 むろんのこと、冰らには心労を課すことになるが、この計画を遂行するには致し方ないと周親子は言った。丹羽からすればそれもまた仰天である。
「――鐘崎もそれでいいのか?」
「ああ。敵は企業を乗っ取った後もしばらくの間は前経営者一家の暮らしぶりを偵察しているようだからな。氷川と冰には安アパートに住んでもらい、特に氷川の方には日雇い労働者として工事現場で働いてもらう。冰には地元の図書館など、なるべく手堅い所に勤務してもらう予定だ。二人は表向き従兄弟同士ということにして、アイス・カンパニーは社長と秘書という立場の同族経営でやってきたことにする。ついでに真田氏にも二人と一緒に住んでもらい、年齢のいった父親を抱えて二人が生活に必死だということを認識させる」
 敵方の油断を招いたところで曹来には更に大きな企業乗っ取りを提案させ、いよいよ相手の黒幕が顔を出さざるを得ない状況を作り上げ、一気に摘発に乗り出すという流れだそうだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...