極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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「ああ……まあそうですけどね。実は香港や台湾は試験的な意味で手を付けただけでして、我々のボスの考えではここ日本で本格的に事業を展開していきたいという方向です。ですから……できれば次も、というより今後本格的に狙っていくのは日本国内の企業が好ましいのですが」
「――おや、そうですか。国内の企業ね」
 さて、困った成り行きになった。計画では香港のファミリーが経営する五つ星ホテルをターゲットにする予定だったからだ。実のところ、日本国内ではここアイス・カンパニーの他はこれといって囮にできる伝手はないし、仮に事の全容を明かしたとしても囮として協力してくれるような企業は思い当たらない。
 とはいえ、ここで困った素ぶりを見せれば今までの計画が水の泡だ。曹はとりあえず平静を装いながら余裕の態度をしてみせた。
「お考えは分かりました。では日本国内でまた目星をつけるといたしましょう。ただし少々お時間をいただきますよ。何せ私が目をつけていたのは香港の企業でしたからね。鞍替えするにもそう急にとはいきませんよ」
「結構です。まあとにかくこの社を乗っ取れただけでも大手柄です。当分はここの業績を上げることに専念してもらいつつ、次のターゲットのことも念頭に置いてもらえればと――」
「いいでしょう。考えておきますよ」
 とにかくは面会を終え、中橋らは社を後にしていった。

 残された社長室では曹と鐘崎が頭を抱えていた。
「さて、困ったことになったな。まさか日本の企業を狙えと言ってくるとはな」
「ということは――敵にとって一連の企業乗っ取りは単に金目当てというだけではないということでしょうか?」
「――かも知れないな。ただ金を儲けるだけなら、ターゲットが国内であろうが海外であろうが構わんはずだ。ヤツらには何か別の目的があるのかも知れんな」
「とりあえず紫月から報告のあった青山のヤサをもう少し重点的に探ってみましょう。さっきの中橋ってヤツは敵のボスとも割合近い間柄のようですし、もしかしたらいずれボスというのと接触するかも知れません」
「そうだな……。そっちは鐘崎組に任せるとして、我々はここアイス・カンパニー以上の大企業を探さねばならん」
 これは難儀だぞと、さすがの曹も苦い顔つきだ。囮になってくれるような企業に伝手が無いのは事実だし、香港ならばともかく日本で――となると、顔が効く範囲も限られてくる。
「それについては親父とも相談して、ターゲットに協力してもらえそうなところを探すしかありませんね」
 鐘崎は本拠地住まいの立場から、ここは自分たちが中心となって対処すべきと思っていた。
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