極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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「今の話だと次なるターゲットは日本国内の企業を狙いたいというわけだろう? だったらウチが一肌脱ごうじゃないか。正直なところ、我々の子会社がお付き合いさせていただいている企業も例の詐欺集団に引っ掛けられたところがあると聞いている。このまま放置すれば、この日本の経済にとっても悪影響を及ぼし兼ねない。悪の芽は早い内に摘むが得策さ」
 鐘崎らにとっては願ってもない申し出だが、万が一にも粟津財閥に迷惑が掛かるようなことがあってはならないと、そこだけは危惧されるところだ。
 だが帝斗は朗らかに微笑んでみせた。
「なに、心配はご無用さ。お前さん方が周焔の社を囮に使ってまでぶっ潰そうという意気込みなのだろう? だったら僕も安心して協力できるというものだよ。それに――これは我が国の経済にとっても重要な問題だ。悪の根が地中深く張る前に刈り取らなきゃ将来が危ぶまれるというものさ」
 帝斗は周ファミリーと鐘崎組に絶対の信頼を置いているからこそだよと言って笑った。
 帝斗の父への事情説明には改めて組長である僚一自らが赴くことにし、鐘崎らは曹と共に具体的な運び方を相談することに決めた。粟津財閥がターゲットであれば敵からの文句は皆無だろう。というよりも、相手が大き過ぎて尻込みするかも知れない。どちらにしても慎重を期する。一同、気を引き締め直して準備に取り掛かることとなった。

 次の日、鐘崎は汐留に出向いて早速に曹へと報告を入れた。
「そうか、粟津財閥にご協力いただけるならこれ以上ないことだな。当初我々が計画していた――香港の周ファミリーのマフィア組織を囮に使う必要も無くなったことになる」
「そうですね。敵も粟津の名前だけで文句はないでしょうし」
「どのみち粟津財閥に迷惑を掛けるような火種を残してはならない。マフィアの組織を囮に使うも大財閥を囮にするも、後々のケアは完璧にしなければならんからな」
「そちらの方は当初の予定通り、うちの親父と周焔の親父殿が始末をつけてくれるそうです。我々は警視庁の丹羽と連携して、敵組織を頭から末端まで刈り取る方に専念しろとのことです」
「香港のボスや遼二のお父上にもご足労をお掛けして申し訳ないが、俺たちも刈り残しがないように神経を尖らせるとしよう」
「はい――」

 一方、曹らと面会を終えた中橋の方では、曹や鐘崎らの思惑とは少々違った企てが話し合われていた。次は香港の企業をターゲットにするつもりでいるという曹の話を中橋が上へと報告したのがきっかけとなったようだ。青山のマンションに戻り、リモートで交信中だ。相手は今回の企業乗っ取りの中心人物、つまりは中橋のボスであった。
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