極道恋事情

一園木蓮

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身勝手な愛

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「わしらがもっと若くて力があった頃なら……あんな郭芳ごとき屁でもなかったんじゃが」
 既に隠居前の老体揃いだ。気持ちの上では負けずとも、実際に暴力などを奮われれば勝目はない。
「情けないことよの……。何でも思い通りになって怖いものなどなかったあの頃が懐かしうて堪らんわい」
 そんな話をしながらも胸を押さえたり足をさすったりして、大分に消耗している様子が見て取れる。
 冰は皆の体調を気遣い、寒そうに肩をさすっている重鎮には着ていたジャケットを脱いで掛けてやったりしていた。
「香港は日本と違って比較的温暖ですが――ここは太陽が遮られているせいか肌寒いですね。皆さん、大丈夫ですか?」
 周囲を見渡せど、暖を取れるような物は見当たらない。しかも持病があって薬を飲まねばならない者もいるという。
「わしが普段から飲んでおる処方薬は郭芳に取り上げられてしもうてな。……そればかりではない。携帯電話やら腕時計やら……」
「わしのなんざ指輪まで持って行きおった。おそらく貴金属類には位置情報が組み込まれているやも知れんと思いおったんじゃろうが……」
 そんなところだけは抜かりなく気が回るヤツだと言って悔しそうにしている。
「そういえば……僕の腕時計も見当たりませんね」
 あれさえ有れば周らがGPSを追ってくれるはずだが、未だに助けが来ないところを見ると、やはり取り上げられたのが原因かと溜め息がもれる。
「とにかく少しでも固まって暖を逃さないようにしましょう。次にあの郭芳さんがやって来たら、まずはお薬を返してくれるよう頼んでみます」
 冰は無造作に置かれていた木箱などを引きずってきては、皆を囲むように壁を作って隙間風をしのいだ。
「皆さん、ここに連れて来られてからどのくらい経ちますか? 食事や睡眠などはどうされていらしたのです?」
 冰が訊くと、最低限の食事は与えられ、夜は寝袋を配られるとのことだった。
「ここに来たのは一昨日くらいじゃったな。それまではトラックの中に詰め込められたりしとったんじゃが」
「食事は日に二度、出来合いの菓子パンと飲み物が配られるんじゃ」
 だとすれば体力的には限界か――。冰は何としてでも彼らの体調が尽きぬ内にケリをつけねばと思った。
 郭芳に会わんと倉庫端の扉口まで行って呼び掛けてみたが、返事はない。
「……クッ! 困ったな……。このままでは皆さんの体力が持たない」
 そう踏んだ冰は、床に落ちていた木片を拾い上げてガンガンと扉を叩き始めた。
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