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身勝手な愛
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「あいつらは……あの人が妾の子だからと白い目で見ていた張本人たちだ。今でこそ『焔老板』などと丁寧な呼び方をしているが、腹の中では何を考えてるか分からない狸共ですよ。アンタがいくらあいつらの為に心を砕いてやったところで、ここから解放されれば百八十度態度を裏返すような腹黒い連中さ! まあバカを見たければ別に構いませんがね」
ほら、薬だと言って投げてよこしながら郭芳は勝ち誇ったように笑った。
「今しがたファミリーに例の書類を送りつけてきたところです。返事が来次第、アンタにはさっき言った通りにリモートで周家との縁を切りたいと話してもらいますからそのつもりで」
郭芳は薬と水を押し付けると、三人の男たちを連れて扉の向こうへと引っ込んでしまった。
倉庫の端から重鎮たちの元へ戻ると、彼らは先程冰がこしらえた木箱の囲いの中で固まりながら不安そうな顔で見上げてよこした。
「皆さん、薬を返していただきましたよ!」
皆、恐縮しつつも有り難いと言って手を合わせる。
「冰さん……あんた、わしらの為に……」
「ヤツは何と?」
倉庫内はだだっ広いので、郭芳が冰に話していた会話が聞き取れたわけではないのだが、重鎮方にしてみれば自分たちの為に危険を顧みずに郭芳らと掛け合ってくれたことに申し訳なさでいっぱいといった表情でいた。
薬を飲み終えた一人も、服用できたというだけで安堵感を覚えたようだ。
冰が木箱で囲ってくれたお陰で肌寒さもしのげたし、誰もが心から感謝の思いでか、はたまた自分たちの不甲斐なさを悔いる気持ちもあるのか、意気消沈したように肩を落としてはうなだれていた。
天窓から差し込んでくる陽射しが橙色に染まり、そろそろ夕闇が近いことを告げている。冰が拉致に遭ってから丸一日が経とうというところか――重鎮たちにとっては既に一週間余りこの状態が続いていると予測される。
「もうすぐ日暮れですね……。郭芳さん、早くお父様たちとのリモートを繋げてくれるといいのですが」
冰がポツリとそんなことを口走る傍ら、誰ともなしに冰への謝罪のようなことを口にし始めた。
「冰さん、さっきあんたが薬を取り返しに行ってくれた時じゃが……」
「――はい?」
「郭芳があんたに何を言ったか分からんが――おそらくヤツの考えていることはだいたい察しがついておるんじゃ。ヤツはわしらがその昔、焔君を邪険に扱っていたと、そう言ったのではあるまいかの?」
「え……? いえ、そんな……」
「隠さんでもええ。本当のことじゃからの……」
「皆さん……」
重鎮たちは昔を懐かしむように、あるいは悔やむようにといった方が正しいか。肩を落とし、瞳を細めながら当時のことを語り始めた。
ほら、薬だと言って投げてよこしながら郭芳は勝ち誇ったように笑った。
「今しがたファミリーに例の書類を送りつけてきたところです。返事が来次第、アンタにはさっき言った通りにリモートで周家との縁を切りたいと話してもらいますからそのつもりで」
郭芳は薬と水を押し付けると、三人の男たちを連れて扉の向こうへと引っ込んでしまった。
倉庫の端から重鎮たちの元へ戻ると、彼らは先程冰がこしらえた木箱の囲いの中で固まりながら不安そうな顔で見上げてよこした。
「皆さん、薬を返していただきましたよ!」
皆、恐縮しつつも有り難いと言って手を合わせる。
「冰さん……あんた、わしらの為に……」
「ヤツは何と?」
倉庫内はだだっ広いので、郭芳が冰に話していた会話が聞き取れたわけではないのだが、重鎮方にしてみれば自分たちの為に危険を顧みずに郭芳らと掛け合ってくれたことに申し訳なさでいっぱいといった表情でいた。
薬を飲み終えた一人も、服用できたというだけで安堵感を覚えたようだ。
冰が木箱で囲ってくれたお陰で肌寒さもしのげたし、誰もが心から感謝の思いでか、はたまた自分たちの不甲斐なさを悔いる気持ちもあるのか、意気消沈したように肩を落としてはうなだれていた。
天窓から差し込んでくる陽射しが橙色に染まり、そろそろ夕闇が近いことを告げている。冰が拉致に遭ってから丸一日が経とうというところか――重鎮たちにとっては既に一週間余りこの状態が続いていると予測される。
「もうすぐ日暮れですね……。郭芳さん、早くお父様たちとのリモートを繋げてくれるといいのですが」
冰がポツリとそんなことを口走る傍ら、誰ともなしに冰への謝罪のようなことを口にし始めた。
「冰さん、さっきあんたが薬を取り返しに行ってくれた時じゃが……」
「――はい?」
「郭芳があんたに何を言ったか分からんが――おそらくヤツの考えていることはだいたい察しがついておるんじゃ。ヤツはわしらがその昔、焔君を邪険に扱っていたと、そう言ったのではあるまいかの?」
「え……? いえ、そんな……」
「隠さんでもええ。本当のことじゃからの……」
「皆さん……」
重鎮たちは昔を懐かしむように、あるいは悔やむようにといった方が正しいか。肩を落とし、瞳を細めながら当時のことを語り始めた。
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