極道恋事情

一園木蓮

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身勝手な愛

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「私は――逃げない。どうせ逃げたところですぐに足がついて捕まりそうだ。そうなればよほど惨めだろう。それよりは潔くここで制裁を受けた方が良さそうだ。……私は何をやっても上手くいかないダメな人間さ。ここいらで覚悟を決めて……あの人の手で始末されるのが一番幸せなのかも知れない」
 ただし、一緒にいる者たちに罪はない。彼らは東南アジア時代の仲間で、自分に同調してくれてついて来ただけだという。自分は残って始末される覚悟でいるが、彼らのことは見逃して欲しいと言って郭芳は頭を下げた。
「分かった。じゃあ通話には俺が出るからこの場所が何処なのか教えて」
「ああ……ここは……香港仔にある港の廃倉庫だ」
「了解――」
 冰はパソコンを抱えている手下の男を手招きで呼ぶと、ヒョイと画面を覗き込んだ。えへへへと苦笑いまで浮かべて手を振ってみせる。
『冰――! 無事だったか! お前、今何処にいる……』
 画面の向こうでは蒼い顔をした周が焦燥感をあらわに身を乗り出していた。
「うん、香港仔って港の廃倉庫。焔兄さん、迎えに来てくれます?」

『――――。香港仔の廃倉庫だな? 十分で行く!』

 周の背後には鐘崎や紫月の顔もあって、すぐに彼らが散ったのが窺えた。即刻こちらに向かってくれたのだ。
『それより冰、こんな紙切れが届いたが――どういうつもりだ? 状況を説明してもらおうか』
 画面の向こうの周は不敵な笑みを浮かべていて、余裕が窺える。今のおちゃらけた態度と『焔兄さん』という呼び方で、また冰が何か策を講じていると理解したのだ。冰もまた、周の不敵な笑みで彼が乗っかってくれたことを知る。
「あー、それはその……会ったら説明しますから、焔兄さん怒らないで僕の言うこと聞いてくださいね。ああ、それから! 兄さんたちが捜してたファミリーの重鎮の方々も僕と一緒にここに居ます。皆さんご無事ですから安心して」
『ほう? お前と一緒に居ると――な?』
「ええ、まあ……。とにかく待ってますから」
『いいだろう。ちゃんと納得のいく説明をしてもらうぞ』
「はいはーい……。それじゃよろしくね、焔兄さん!」
 リモートを切った冰は大きく溜め息をついて肩をすくめた。
「十分くらいで迎えに来るって。郭芳さん、本当にいいの? あの人が来たらあなたマジでヤバいよ? 今からでも遅くないから逃げちゃえば?」
 最後のチャンスだと促したが、郭芳にはもうその気概すらない様子だ。ガックリと肩を落としたまま床にへたり込んで動けずにいる。周が到着したと同時に始末される覚悟でいるようだ。
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