1,046 / 1,212
身勝手な愛
35
しおりを挟む
「私は――逃げない。どうせ逃げたところですぐに足がついて捕まりそうだ。そうなればよほど惨めだろう。それよりは潔くここで制裁を受けた方が良さそうだ。……私は何をやっても上手くいかないダメな人間さ。ここいらで覚悟を決めて……あの人の手で始末されるのが一番幸せなのかも知れない」
ただし、一緒にいる者たちに罪はない。彼らは東南アジア時代の仲間で、自分に同調してくれてついて来ただけだという。自分は残って始末される覚悟でいるが、彼らのことは見逃して欲しいと言って郭芳は頭を下げた。
「分かった。じゃあ通話には俺が出るからこの場所が何処なのか教えて」
「ああ……ここは……香港仔にある港の廃倉庫だ」
「了解――」
冰はパソコンを抱えている手下の男を手招きで呼ぶと、ヒョイと画面を覗き込んだ。えへへへと苦笑いまで浮かべて手を振ってみせる。
『冰――! 無事だったか! お前、今何処にいる……』
画面の向こうでは蒼い顔をした周が焦燥感をあらわに身を乗り出していた。
「うん、香港仔って港の廃倉庫。焔兄さん、迎えに来てくれます?」
『――――。香港仔の廃倉庫だな? 十分で行く!』
周の背後には鐘崎や紫月の顔もあって、すぐに彼らが散ったのが窺えた。即刻こちらに向かってくれたのだ。
『それより冰、こんな紙切れが届いたが――どういうつもりだ? 状況を説明してもらおうか』
画面の向こうの周は不敵な笑みを浮かべていて、余裕が窺える。今のおちゃらけた態度と『焔兄さん』という呼び方で、また冰が何か策を講じていると理解したのだ。冰もまた、周の不敵な笑みで彼が乗っかってくれたことを知る。
「あー、それはその……会ったら説明しますから、焔兄さん怒らないで僕の言うこと聞いてくださいね。ああ、それから! 兄さんたちが捜してたファミリーの重鎮の方々も僕と一緒にここに居ます。皆さんご無事ですから安心して」
『ほう? お前と一緒に居ると――な?』
「ええ、まあ……。とにかく待ってますから」
『いいだろう。ちゃんと納得のいく説明をしてもらうぞ』
「はいはーい……。それじゃよろしくね、焔兄さん!」
リモートを切った冰は大きく溜め息をついて肩をすくめた。
「十分くらいで迎えに来るって。郭芳さん、本当にいいの? あの人が来たらあなたマジでヤバいよ? 今からでも遅くないから逃げちゃえば?」
最後のチャンスだと促したが、郭芳にはもうその気概すらない様子だ。ガックリと肩を落としたまま床にへたり込んで動けずにいる。周が到着したと同時に始末される覚悟でいるようだ。
ただし、一緒にいる者たちに罪はない。彼らは東南アジア時代の仲間で、自分に同調してくれてついて来ただけだという。自分は残って始末される覚悟でいるが、彼らのことは見逃して欲しいと言って郭芳は頭を下げた。
「分かった。じゃあ通話には俺が出るからこの場所が何処なのか教えて」
「ああ……ここは……香港仔にある港の廃倉庫だ」
「了解――」
冰はパソコンを抱えている手下の男を手招きで呼ぶと、ヒョイと画面を覗き込んだ。えへへへと苦笑いまで浮かべて手を振ってみせる。
『冰――! 無事だったか! お前、今何処にいる……』
画面の向こうでは蒼い顔をした周が焦燥感をあらわに身を乗り出していた。
「うん、香港仔って港の廃倉庫。焔兄さん、迎えに来てくれます?」
『――――。香港仔の廃倉庫だな? 十分で行く!』
周の背後には鐘崎や紫月の顔もあって、すぐに彼らが散ったのが窺えた。即刻こちらに向かってくれたのだ。
『それより冰、こんな紙切れが届いたが――どういうつもりだ? 状況を説明してもらおうか』
画面の向こうの周は不敵な笑みを浮かべていて、余裕が窺える。今のおちゃらけた態度と『焔兄さん』という呼び方で、また冰が何か策を講じていると理解したのだ。冰もまた、周の不敵な笑みで彼が乗っかってくれたことを知る。
「あー、それはその……会ったら説明しますから、焔兄さん怒らないで僕の言うこと聞いてくださいね。ああ、それから! 兄さんたちが捜してたファミリーの重鎮の方々も僕と一緒にここに居ます。皆さんご無事ですから安心して」
『ほう? お前と一緒に居ると――な?』
「ええ、まあ……。とにかく待ってますから」
『いいだろう。ちゃんと納得のいく説明をしてもらうぞ』
「はいはーい……。それじゃよろしくね、焔兄さん!」
リモートを切った冰は大きく溜め息をついて肩をすくめた。
「十分くらいで迎えに来るって。郭芳さん、本当にいいの? あの人が来たらあなたマジでヤバいよ? 今からでも遅くないから逃げちゃえば?」
最後のチャンスだと促したが、郭芳にはもうその気概すらない様子だ。ガックリと肩を落としたまま床にへたり込んで動けずにいる。周が到着したと同時に始末される覚悟でいるようだ。
29
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる