極道恋事情

一園木蓮

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陰謀

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 一時間後、周が出先から戻るとすぐに李は事の次第を報告した。周は自分に息子がいるということに驚いたようだが、それと同時に子供ができるようなことをした覚えはないと言って苦笑した。
「あの時の一家の娘――か。名は確か――スーリャンだったな」

 ――やはりスーリャンで合っていたか。

「覚えておいででしたか……。私は不覚にも……先程あの女性から名前すら聞くのを失念しておりまして……」
 まあ李にとってもそれほどの衝撃だったということなのだろうと周は苦笑した。
「しかし――まさか俺のガキができていたなどとはな。お前がうろたえるのも当然だ」
「……失礼ですが、そのような可能性があったのでしょうか?」
「ふむ、身に覚えはない――と言えるが、俺はあの家族に助けられてから意識を取り戻すまでに一週間を要したと当時彼らから聞いた。兄貴もほぼ同じだったと思う。実際、カレンダーで確かめたが、確かに滑落事故に遭ってから気がつくまでの間は一週間ほどだったようだ」
 つまり意識がない間にそういったことがあったとすれば、子供ができた可能性もゼロではないということだ。
「むろん気がついてからのことはしっかり覚えているがな――」
「では老板が意識を取り戻すまでの間にあの娘がそのような行為をしたかも知れないと?」
「あくまで可能性として考えるならば――だ。とにかく女とその息子というのに会ってみんことには何とも言えん」
「……はあ、左様でございますね。それで老板、彼らとお会いになる場所ですが――」
 李は先程鄧から提案のあったDNA鑑定のことも含めて人目につかないホテルの個室がいいのではないかと言った。
「――そうだな。どこかのスイートでも取るか」
「この近辺ですと粟津財閥のホテルでは如何でしょう」
 粟津家のホテル、グラン・エーならばセキュリティの面でも信頼できるし、ホテルへの出入りも一般の客とは別に秘密裏の裏口を使わせてもらうことも可能だ。以前鐘崎組がドイツのブライトナー医師の警護で使った出入り口である。まあ粟津家の嫡男、帝斗にはある程度事情が知れてしまうかも知れないが、伝手のないホテルを使ってやたらな噂が立つよりはマシである。今の時代だ、いつどこで誰の目があるか分からないからだ。周辺には取引先である企業も数多い。アイス・カンパニーの氷川社長が見知らぬ外国人の女性を連れてホテルのスイートに入って行ったなどと、要らぬ噂が立たないとも限らないわけだ。
「――そうだな。では粟津に言って融通してもらうか」
 そんな話をしていたちょうどその時だった。鐘崎から電話が入って、今晩食事でもどうだと誘われたのである。鐘崎は仕事の依頼で今日は紫月も連れて丸の内まで出て来たので、もしも都合が合えばと思ったらしい。
「カネ! ちょうど良かった。実はちょっとこちらも厄介なことになっていてな……」
 簡潔に事情を説明したところ、鐘崎はそれだったら自分も同行させて欲しいと言ってくれた。しかも、冰に余計な心配をさせないようにと、彼の方には紫月から食事に誘わせるとまで気を回してくれた。
『こっちは橘と春日野が一緒に来ているから、護衛がてら四人で食事に行かせればいい。俺とお前はシノギのことで急な相談が入ったということにする』
 ついでに粟津の方にも連絡を入れてくれるとのことだ。
「すまねえな、カネ。助かる」
 偶然とはいえ鐘崎が一緒に来てくれるなら周にとっても心強い。紫月にも事情を話し、冰へは直接紫月から誘いの電話を入れてくれることとなった。
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