極道恋事情

一園木蓮

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陰謀

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「――なるほど。言語の件は理解した。そこで提案だが――正直に言ってあんたと俺の間に息子ができていたと急に聞かされて、俺は驚いている。あんたの言うことを疑うわけじゃねえが、一度医学的に親子鑑定をさせてもらえないか? その結果、彼が本当に俺の息子だと判明すれば俺も納得できる。あんたらには気分を害する申し出と思うが、こちらの気持ちも汲んでくれたら有り難いのだがな」
 そう言った周に、それまで黙って皆のやり取りを窺っていた息子・アーティットが口を挟んだ。
「ふん……! 言いようだね。親子鑑定なんて言うけどさ、あんたらマフィアなんだろ? 本当はこの前ここで会った時に親子鑑定に必要なモンを採取して帰ったんじゃねえの?」
 その内容にも驚かされるが、それより何より注目すべきは言語の方だ。たった今、この息子が放ったのは流暢な中国語だったからだ。
「ほう――? お前さんの方は中国語が分かるのか?」
 周に指摘されて息子はビクリとしたように表情を強張らせた。
 が、すぐに開き直ってこうつけ足す。
「あ……当たり前だろ? お、俺が生まれたのは母親が村を出てからだ……。と、友達と話すのも……学校でも皆んな中国語だし……」
 確かに鐘崎の調べで彼ら一家は上海に移り住んだと聞いている。この息子が生まれたのも上海ということになろうから、流暢で当然といったところか。
 ところがそれを聞いて焦ったのは女だ。彼女はひどく慌てて息子を振り返った。
「あなたは黙ってて! 余計なことを言っちゃダメ!」
 言語は村の言葉で、しかも早口だったが、李はしっかりと録音して密かに翻訳結果の画面を確認――驚きに目を見張った。それとなく周に耳打ちして胡散臭いのではと伝える。
 女はさすがに大人なだけあって余計なことを口にせずにいたが、息子の方はつい本音に近いことが口をついて出てしまったのかも知れない――李は咄嗟にそう判断したのだ。
 やはり二人は母子ぐるみで周を騙そうとしているのかも知れない。そんな疑問が色濃くなったように思えてならない。周もまた同様、やはりこの母子は何かを隠しているように感じたのか、穏やかな口調ながらこう訊いた。
「まあいい――。言語の点では納得だ。それよりアーティット、お前さんは何故そう思う。この前俺たちがキミら母子の遺伝子でも採取して帰ったと――そう思うわけか?」
「べ、別に……! マフィアっていうならそういう汚ねえこと……平気でしそうだと思っただけだよ! 映画とかでも……そーゆうのいっぱい観てきてるし!」
 しどろもどろで息子は言うと、そっぽを向いてしまった。
「周さん、お願いあるます! あなたと二人で話したい……」
 女が焦りながらすがるようにそう言った。
 状況が芳しくなくなってきたから今度は色仕掛けか――李は咄嗟にそう思い、険しく眉根を寄せた。だが周は承諾し、冰を含め、李と劉、それに息子の四人は隣のコネクティングルームで待つこととなった。
 周にとっては、冰が息子を気遣いながら隣の部屋へと向かう後ろ姿に胸が痛む思いがしたが、とにかくは女が何を思い、何を目的としているのか、引き出せるだけ引き出さねば始まらない。むろんのこと、李が感じたように二人きりになれば女が抱きついてきたり涙を見せたりと、色仕掛け的なことが起こり得るのも予測できてはいたものの、そうした触れ合いの中でしか見えてこない本音もあることを周は知っているのだ。
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