極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の涙

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 真田が提供してくれるブランチに呼ばれながら、鐘崎は自らの予想を話して聞かせた。
「俺なりに考えてみたんだが、やはり汰一郎の社が代田憲の銀行をあの地下街に紹介したことがどうにも気に掛かってならねえんだ。仮に両親を殺された復讐を企んでいるとして、わざわざあの特殊な地下街に引っ張り込む必要があるかということだ。その気になりゃ、何処ででも代田を殺ることは可能なはずだ」
 仮にあの地下の花街で復讐を遂げたにせよ、その後逃げるという点から考えればこの地上で事に及ぶ方が安全といえるだろう。周もまた、鐘崎の意見に同調する素振りをみせた。
「確かにな。もしも汰一郎ってヤツの復讐が殺害ではなく、単に代田を嵌めたいだけだとするならうなずけるんだがな。この前一之宮も言っていたが、あの地下街で代田って野郎にひと騒動起こさせてパクらせるだけが目的とも考えられる。だが、それだとカネの邸に仕掛けた盗聴器の意味するところが分からねえ。それ以前に、てめえが一緒になろうって女がいる置屋に代田のような危ねえ連中を差し向ける気が知れねえな」
「俺もそれを考えていた。汰一郎はわざわざ涼音の店に代田を送り込んで暴れさせ、一方ではその涼音が危ねえ目に遭いそうだからと源さんに助力を頼みに来ている。やっていることがチグハグ過ぎて理解に苦しむところなんだが――」
 鐘崎と周が予想を闘わせる傍らで、紫月がポツリと突破口になるようなことをつぶやいた。
「こんな時にメビィちゃんでも居りゃあなぁ……。汰一郎ってヤツが何を考えてるのか心理分析してもらえるんだけども」
 何気ないそのひと言で旦那二人はハッとしたように瞳を見開いた。
「そうか、心理分析か! だったらメビィでなくとも――うちの鄧も頼りになると思うぞ!」
 ご存知の通り鄧は医師だ。少し前、香港でメビィに会った際も彼女が心理学をやっていたことを真っ先に見抜いたほどだから、おそらく鄧自身もそういった知識があるのだろう。
 周はすぐに鄧を呼んで、ダイニングに来てもらうことにした。



◇    ◇    ◇



「なるほど――確かに不可解な行動をなされるお人のようですね」
 鄧は粗方の経緯を聞いた後で、これまでの出来事を時系列で書き出してみましょうと言った。
「まずは二十年前の事件のことから整理しましょう」
 源次郎と汰一郎が出会った瞬間から、誰がどのように行動したのかという事実と、それとは別枠でその時々でそれぞれの人間がどのように感じたかという想像を当人たちの立場になって書き出していくのだという。それによって今まで見えなかったものが見えてくるような心持ちとなった。
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