極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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 少し行くと、閑散とした倉庫街の中に佇む古ビルが見えてきた。声はその中へ入って行ったようだ。
「追うぞ!」
「はい!」
 目的が強姦ならおそらく武器などの類は所持していないだろう。持っていたとしても刃物くらいだ。
 鐘崎と清水ならば例え相手が三人いたとしても苦ではない。取り押さえんと声のする方に向かって古ビルの中へと潜入、男の怒鳴り声と女の悲鳴が激しくなってくる。
「嫌ぁあああ! やめて! 嫌ぁーーー!」
「そっち押さえてろっ!」
「暴れんな、このクソ女ッ!」
 ガラガラと物が倒れる音が取っ組み合いを想像させる。その音のする部屋を突き止めれば、扉は開け放たれたままになっていた。こんなゴーストタウン同然の廃倉庫街では、どうせ誰も来ないとタカを括っているのだろう。今にも襲われ掛かっている女を助けんと部屋の中へ飛び込んだ時だった。

「――――ッ!?」

「なに……ッ!?」

 部屋は思いの他狭く、小さな事務室といった感じだったが、どうしたわけかそこに人影は見当たらなかった。女どころか襲っていた男たちの姿すら皆無だ。
 部屋を間違えたかと思った矢先だった。突如バタンと轟音を立ててドアが閉められ、鐘崎と清水は同時に扉口を振り返った。外からは鍵の掛けられる音――。それと同時に狭い部屋の片隅からは未だに女の悲鳴と男たちが襲い掛かる様子が鳴り響いている。
「クソッ! やられた……。こいつぁ録音だ!」
 なんと、小型のプレーヤーが大音量で再生されているのに気がついた。悲鳴は録音されたドラマか何かの強姦シーンだったのだ。
 即座にドアに駆け寄り蹴破ろうとするも、それと同時にグラリと目の前の景色が歪んで、鐘崎は側にあった机に手をついた。見れば清水は既に意識朦朧、彼もまたドアへと向かおうとしたようだが、儘ならずに床へと倒れ込んでいた。
「わ……か……ッ」
 すみません――そう言い掛けて清水は気を失ってしまった。
 鐘崎もまた、凄まじい睡魔のようなものに逆らえず、机に寄り掛かって何とか持ち堪えようと踏ん張ったものの、扉口に辿り着いたと同時に意識を失ってしまった。

 扉の外ではゼィゼィと荒い息を押さえながら聞き耳を立てる男が一人。中の物音がしなくなったことにホッと胸を撫で下ろしていた。三春谷だ。
 あろうことか、彼は女が襲われるドラマの音声を流しながらこの小部屋まで先回りして鐘崎らを誘い込んだのだった。鐘崎らが追って来るのを確認しながら危険な薬品の入った瓶を部屋に撒いて扉の外で待機、二人が中に飛び込んだと同時に閉じ込めて鍵を掛けたのだ。
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