極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

43(絞り椿となりて永遠に咲く 完結)

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「ダイジョブか、遼? 歩ける?」
 おぶってってやろうかと揶揄う視線が悪戯そうで、いつもの紫月を実感させられる。
「いや……おぶられたりしたら逆にやべえ。おめえの背中に風穴開けちまいそうだ」
 こんなジョークで笑いを誘うのも、ひとえに紫月の気持ちを軽くしてやる為だ。彼が自分自身を責めて悩んでいる顔など似合わない。いつも明るく皆を照らす太陽の如く朗らかな気持ちで笑っていて欲しいからだ。
 案の定、紫月はそのひと言にウケた様子で、変わらぬ笑顔を見せてくれたことに安堵する。
「アッハッハ! いつも以上にガチガチバズーカだもんなぁ!」
 スルリとソコに手が添えられ撫でられて、鐘崎はホッと穏やかな気持ちにさせられたのだった。と同時にカラダの方は正直な反応を見せる。愛しい紫月に撫でられれば更に欲情を煽られるというものだ。
「わ……ッたっと……! な、撫でんな!」
 焦ったように一層腰を屈めては鼻息を荒くした。
「んーぬぬぬ……つか、もうそこの客室でいいような気もするが……」
 別棟にある部屋まで歩くのはきついほどに張り詰めた欲情に手を持て余してか、鐘崎はうなだれた。
「いい歳こいて……これじゃヤりてえ盛りのガキんちょと変わらんな」
「はは! いいじゃん! いつまでも若えってことだべ?」
「ああ……。多分な、白髪の爺さんになっても、俺ァこれだきゃ変わらん自信があるぞ」
「マジ? 猛獣爺ちゃんってか?」
 白髪姿で欲情マックス、仁王立ちしている姿が脳裏に浮かんでか、紫月は豪快に笑い転げてしまった。
「んじゃ仕方ねえ。未来の猛獣爺ちゃんを姫抱きでもしてってやっか!」
 言うが早いかグイと抱き上げられて、鐘崎は焦ったように目を剥いてしまった。
「バカ、よせ……ッ! これじゃいくらなんでもカッコつかねえ……!」
「いーじゃん! 俺だってオトコだ。おめえを抱え上げられるくれえの力はあるって!」
 一度やってみたかったんだよと紫月は満足げだ。いつも通りの明るさが戻ってきたことには安堵させられども、さすがに姫抱きされては微妙な気分にもなろうというものだ。
「いや、そのな……おめえが力持ちなのは分かるが……」
 それにしてもこれでは形無しもいいところだ。
「けど……やっぱ重えー! すっげ筋肉量」
「だから言ってんだ……! いいから下ろせって」
「いんや! このまま部屋まで抱いてくんだ」

 な、遼。
 これは俺の詫びっつーかさ。おめえを危険な目に遭わせちまったことへの謝罪でもあるんだ。
 救出の際、今回は殆ど氷川に任せっきりにしちまったけど、どんな窮地でも軽々おめえを担ぎ上げられるくれえになりてえんだ。
 おめえらは亭主が嫁を守って当たり前って言うけどさ、俺たちだって亭主を守りてえって気持ちは一緒だもんよ!
 どんな筋肉質でも、腕がヒクつくくれえ重くても、この世で唯一無二って誓った亭主一人担げねえんじゃ情けねえ。
 だから部屋まで――な? このまま抱いて行かせてくれよ!

 そんな男前な嫁様の胸中を知る由もない亭主殿は、相変わらずにジタバタと大焦りでいる。
「おめえの気持ちは分かった! 分かったからとにかく下ろせ! な?」
「部屋着いたらなぁ。下ろしてやるってー!」
「……ッ、ならケーキ十個! ケーキ十個で手を打とう……」
「あ? なんでここでケーキ?」
「いや、じゃあ二十個! とにかく下ろせって……!」

 頼むから下ろしてくれええええー!

 ギャアギャアと戯れる夫婦の仲睦まじい声を微笑ましげに見つめるかのように、絞り椿の花が宵風に揺れながら、そんな二人をそっと見守っていた。



 紅椿白椿、元は二つだった紅と白の花が重なり合い、ひとつとなって咲く。
 灼熱の太陽が焦がす夏も、
 涼風が郷愁を誘う秋も、
 凍てつく氷に閉ざされた冬にも、
 互いを取り込むように混じり合い、撚り合って咲く。

 次の春もまた、必ず共に迎えると誓う。

 俺とお前は、
 お前と俺は、

 どんな突風にさらされても、どんな雷雨に打たれても、決して分つことのできない絞り椿の花の如く。咲き誇る時も散る時も決して手を離さず生涯共にあらんことを――誓おう。

絞り椿となりて永遠に咲く - FIN -

『極道恋事情』完結



『極道恋事情』は本エピソードをもちまして完結となります。
ご覧くださいました皆様に心より御礼を申し上げます。
※次ページにて完結のごあいさつを綴っております。ここまでお付き合いいたきまして、本当にありがとうございました!
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