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4. Allure
Allure 4話
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「てっ……めっ、いきなり何しやがるッ……」
抵抗の言葉はほんの建て前だということを、熟れた頬が物語ってしまう。
こんな展開を待っていたわけではない。
けれども望んでいなかったわけでもないのだ。
またしてもどうしたいのか分からずに翻弄される。揺れ動く自身の気持ちが、歯がゆく思えて仕方なかった。
「放せバカ……! 何でいきなりこーゆー展開に……なんだよ……!」
「いきなりじゃねえな。俺はずっとタイミングを窺ってた。タクシーの中からずっと。いつお前にキスしようかってそればっかり考えてたぜ?」
「はあっ……!? 何言ってんの、てめ……」
「お前は違うのか? いつ俺にキスされんじゃねえかって、ずっと期待して待っててくれたんじゃねえのか?」
「バッカ野郎ッ! 誰が期待なんかっ……! ……ッそ、龍……ッ」
――んっ……んーッ!
有無を言わさず深く舌を絡め取られ、口中を掻き回されて呼吸もままならない。あふれて行き場を失くした甘い滴が、双方の唇の端からこぼれて落ちた。
と同時に、背筋から独特の疼きが湧き上がる。身体の中心――腹の下あたりが掬われるように熱くなる――。
「よせっ……バカ、龍ッ……!」
せめて抵抗の言葉を口にしなければ、流されてしまいそうだった。だが、龍の方はそれとは正反対に、雄の色香がダダ漏れといわんばかりの射るような視線と共に次を求める。
「よさない。この半月、ずっと待ったんだ。あれ以来、お前は俺のことを巧妙に避けてくるし、これでも機会見計らうのに苦労したんだ」
「誰っ……が……いつそんなことしたよ……!? 避けてなんかねーじゃんよっ!」
「表面上はな。お前そういうの得意だから。誰にでも愛想良くって気さくで――ってか? 他の連中と何変わりなく俺にも確かに笑い掛けてくれたが、逆に白々しいだろうが。他の奴らには分からなくても俺には解る。お前が微妙に俺との距離を取りたがってること……。そんなに俺が嫌いか?」
そんなに俺が――――
「嫌かよ……?」
◇ ◇ ◇
切なげに見える瞳は酔いのせいだ。
苦しげな吐息は、夜半まで飲み過ぎた疲れのせい。
これまでは何とか抑えてきたはずの想いさえコントロールがきかなくなりそうだ。熱いキスを受け入れて、流されて、この腕の中にすべてを預けてしまいたくなる。耳たぶを甘噛みされて、首筋にチュッチュッと幾度となく愛撫を落とされて、今にも嬌声があふれそうになった。
「そんなに俺が嫌いか? でも俺はお前が好きだ」
「……ん……なのッ……知らね……俺はッ……」
「波濤、素直になれ。お前だって本当は俺を好きだろう? 何をそんなに頑なになることがある」
「勝手……なこと、抜かしてんじゃ……ねぇよ。俺がいつお前を好き……だなんて」
「お前を見てりゃ分かる」
「何が……どう分かる……ってんだよ」
「波濤――抱きたい。今すぐお前が欲しい」
ゾクゾクと背筋を這い上がる欲情の兆しに、波濤はそれらを抑えんと唇を噛み締めた。
「……金っ……取るぞ……っ」
そんなことを言うつもりではなかった。
『そんなにヤりたいのなら、この前みたく金を取るぞ』だなどと本心から思ったわけじゃ決してない。
だが、焦りのせいか、怜俐な言葉だけが先走ってしまうのをとめられなかったのだ。
本当のところをいえば、龍に流される自分を目の当たりにするのが怖かっただけかも知れない。
龍の気持ちを受け入れて流されても、その後のことを思い描いては、臆病になっている。のめり込んだ挙句、もしも飽きられたらどうしようとか、気持ちにすれ違いが生まれたりしたらどうしようなど、マイナス思考ばかりが脳裏を侵す。
そんな気持ちの裏返しからか、思ってもいないような残酷な台詞が口をついて出てしまったのだ。
申し訳ない、悪かった、そう思いつつも、自身の放った信じ難いひと言へのショックの為か、波濤は謝罪どころか言い訳すら口にすることができなかった。唯一できるのは、小刻みに身を震わせることだけだ。
そんな様子に龍はわずかに瞳をしかめ、甘い抱擁を止めた。額と額をコツンと合わせたまま、
「分かった。お前がそれでいいなら払うぜ、金……」
まるで落ち着き払った、ともすれば感情のないような声音でそう呟いた。
その直後、いきなり手首を掴み上げられたと思ったら、引き摺られるようにして寝室へと連れて行かれた。酔っているにしてはしっかりとした足取りで、しかも早足だ。
そんなどうでもいいようなことが目に付くのは、自身の放ってしまった言葉の衝撃がそれほど大きかったからだろうか。とにかく波濤は言われるまま、されるがままに龍に引き摺られ、気が付けば彼のベッドの上へと投げ出されていた。
今までとは打って変わった狂暴な視線が射るように突き刺してくる。
抵抗の言葉はほんの建て前だということを、熟れた頬が物語ってしまう。
こんな展開を待っていたわけではない。
けれども望んでいなかったわけでもないのだ。
またしてもどうしたいのか分からずに翻弄される。揺れ動く自身の気持ちが、歯がゆく思えて仕方なかった。
「放せバカ……! 何でいきなりこーゆー展開に……なんだよ……!」
「いきなりじゃねえな。俺はずっとタイミングを窺ってた。タクシーの中からずっと。いつお前にキスしようかってそればっかり考えてたぜ?」
「はあっ……!? 何言ってんの、てめ……」
「お前は違うのか? いつ俺にキスされんじゃねえかって、ずっと期待して待っててくれたんじゃねえのか?」
「バッカ野郎ッ! 誰が期待なんかっ……! ……ッそ、龍……ッ」
――んっ……んーッ!
有無を言わさず深く舌を絡め取られ、口中を掻き回されて呼吸もままならない。あふれて行き場を失くした甘い滴が、双方の唇の端からこぼれて落ちた。
と同時に、背筋から独特の疼きが湧き上がる。身体の中心――腹の下あたりが掬われるように熱くなる――。
「よせっ……バカ、龍ッ……!」
せめて抵抗の言葉を口にしなければ、流されてしまいそうだった。だが、龍の方はそれとは正反対に、雄の色香がダダ漏れといわんばかりの射るような視線と共に次を求める。
「よさない。この半月、ずっと待ったんだ。あれ以来、お前は俺のことを巧妙に避けてくるし、これでも機会見計らうのに苦労したんだ」
「誰っ……が……いつそんなことしたよ……!? 避けてなんかねーじゃんよっ!」
「表面上はな。お前そういうの得意だから。誰にでも愛想良くって気さくで――ってか? 他の連中と何変わりなく俺にも確かに笑い掛けてくれたが、逆に白々しいだろうが。他の奴らには分からなくても俺には解る。お前が微妙に俺との距離を取りたがってること……。そんなに俺が嫌いか?」
そんなに俺が――――
「嫌かよ……?」
◇ ◇ ◇
切なげに見える瞳は酔いのせいだ。
苦しげな吐息は、夜半まで飲み過ぎた疲れのせい。
これまでは何とか抑えてきたはずの想いさえコントロールがきかなくなりそうだ。熱いキスを受け入れて、流されて、この腕の中にすべてを預けてしまいたくなる。耳たぶを甘噛みされて、首筋にチュッチュッと幾度となく愛撫を落とされて、今にも嬌声があふれそうになった。
「そんなに俺が嫌いか? でも俺はお前が好きだ」
「……ん……なのッ……知らね……俺はッ……」
「波濤、素直になれ。お前だって本当は俺を好きだろう? 何をそんなに頑なになることがある」
「勝手……なこと、抜かしてんじゃ……ねぇよ。俺がいつお前を好き……だなんて」
「お前を見てりゃ分かる」
「何が……どう分かる……ってんだよ」
「波濤――抱きたい。今すぐお前が欲しい」
ゾクゾクと背筋を這い上がる欲情の兆しに、波濤はそれらを抑えんと唇を噛み締めた。
「……金っ……取るぞ……っ」
そんなことを言うつもりではなかった。
『そんなにヤりたいのなら、この前みたく金を取るぞ』だなどと本心から思ったわけじゃ決してない。
だが、焦りのせいか、怜俐な言葉だけが先走ってしまうのをとめられなかったのだ。
本当のところをいえば、龍に流される自分を目の当たりにするのが怖かっただけかも知れない。
龍の気持ちを受け入れて流されても、その後のことを思い描いては、臆病になっている。のめり込んだ挙句、もしも飽きられたらどうしようとか、気持ちにすれ違いが生まれたりしたらどうしようなど、マイナス思考ばかりが脳裏を侵す。
そんな気持ちの裏返しからか、思ってもいないような残酷な台詞が口をついて出てしまったのだ。
申し訳ない、悪かった、そう思いつつも、自身の放った信じ難いひと言へのショックの為か、波濤は謝罪どころか言い訳すら口にすることができなかった。唯一できるのは、小刻みに身を震わせることだけだ。
そんな様子に龍はわずかに瞳をしかめ、甘い抱擁を止めた。額と額をコツンと合わせたまま、
「分かった。お前がそれでいいなら払うぜ、金……」
まるで落ち着き払った、ともすれば感情のないような声音でそう呟いた。
その直後、いきなり手首を掴み上げられたと思ったら、引き摺られるようにして寝室へと連れて行かれた。酔っているにしてはしっかりとした足取りで、しかも早足だ。
そんなどうでもいいようなことが目に付くのは、自身の放ってしまった言葉の衝撃がそれほど大きかったからだろうか。とにかく波濤は言われるまま、されるがままに龍に引き摺られ、気が付けば彼のベッドの上へと投げ出されていた。
今までとは打って変わった狂暴な視線が射るように突き刺してくる。
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