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一園木蓮

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6. Red Zone

Red Zone 3話

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 波濤はふてくされたように龍の首筋へと顔を埋めると、
「……んだよッ、ヒトがせっかくサービス根性出してやりゃあ、その言い草……!」
「サービスしてくれるのか? お前が?」
わりィかよ……いっつもてめえにいいようにされてんじゃ癪っつーか……面目ねえし」
 黙って言う通りにさせろといわんばかりに、波濤は再び龍を組み敷くと、首筋から鎖骨へと愛撫の続きを始めた。
 胸板を唇でなぞり、筋肉の盛り上がった肩を掴みながら、意外なほどに固いその感覚にドキッと頬が赤らむ。この腕にいつも抱き包まれているのだと思ったら、熟れて落ちるほどに赤面させられてしまいそうだ。
 が、ここで引いてはそれこそ癪だ――。気を取り直し、その先を続ける。広い胸板に口づけながら脇腹を撫で下ろし、女のものとは違う色素の濃い胸の突起がチラリと視界に入って、更に頬が熱を持った。
「くすぐってえよ波濤」
 まるで女子供をあやすかのような大らかな微笑みを向けられて、羞恥心が破裂しそうになった。
「そうやって一生懸命になってるお前も可愛くてしかたねえ。そんなウブな愛撫されたら別の意味でたまんねえな」
 リラックスしきった様子で腕枕をし、余裕たっぷりの笑みで見下ろされて、波濤はアタフタと視線を泳がせた。まるで反応かんじるどころか、自身の拙い愛撫を微笑ましげに見守っているようにさえ窺える。初体験自慢の年頃じゃなし、これじゃ面目丸潰れもいいところだ。
「か……可愛いって言い草ねえだろッ! ホント、てめえ……マジで口悪ィ!」
 ヘタクソで悪かったなというようにそう言って、ベルトを解いてやれば、下着の中でくっきりと大きさを増しているのを確認して、呆れ半分に唇を尖らせた。
「ふ……ん、何だかんだ言ってしっかりソノ気になってんじゃねえの」
 半ば勃ちあがり始めている雄を意地悪く突付きながら、お返しとばかりに不適に微笑んでやった。

 ココに触れるのは初めてだ。

 龍とは既に数回身体を重ねたが、いつもはたいがい一方的に弄られ高められるだけで、自ら彼のモノに触れたことはそういえばない。気をゆるめれば、すぐにもまた染まりそうな頬の熱をわざと無視しながら、波濤はその行為にだけ没頭しようと意識を集中させた。
 鈴口のくびれを舌先で突付き、しつこく丁寧に舐め上げて、時折チュウーっと吸うように先端を咥え込んでやる。
 今更だがオトコのココにこんなことをするのは不慣れというわけじゃない。それどころか嫌というほど経験済みだ。少なくとも経験値からいえば、この龍よりも勝るのだろうと思う。そんなことは自慢のひとつにもならないが、今はともかく別だ。
 それを証拠に頭上からは想像以上にハマっているのか、あまり聞いたことのないような余裕のない吐息が、少しの嬌声をも伴って漏れ始めているのに驚かされた。
 太腿の隙間からチラリとその様子を見上げれば、わずかにしかめられた表情が確かに快感を物語っていて、荒くなり出した吐息が肩をも上下させている。
 波濤は何だか誇らしげになって、
「気持ちいい……か?」
 竿を舐め上げながらそう訊いた。
「ああ、悪くねえ……な」
 答える声もとぎれとぎれで余裕がない。きたいのを我慢しているのか、ふくらはぎまでが時折ビクリと突っ張るように筋立つのを目にすれば、更に気持ちはほころんだ。

「だろ? 俺、チンコしゃぶんのは得意だから」

 悪気があったわけじゃない。
 自慢したかったわけでも――ない。
 龍が反応かんじてくれているのが単純にうれしくて、ついこぼれてしまった台詞だった。



◇    ◇    ◇



 急にピタリと止んでしまった欲情の気配に気付いた時には既に遅かった。覆水盆に返らず――だ。
 それまではやさしく撫でられていた髪が痛いくらいに鷲掴みにされて、急激にグイとそのまま顎までをも掴まれて、ようやくと何で彼が怒っているのかを悟ったところでもう遅い。
 まるで乱暴に、癪に障ったように腕を掴まれ、引きずり寄せられ、体位をひっくり返され――気付いた時には組み敷かれていて、波濤は蒼白となった。
「悪ィ……ついその……冗談だって……。言葉のアヤっての……?」
 おどけてなだめようと試みたが、そんなものは通用しない。当然か――。
 彼の視線は苛立ちをあらわにしていて、不機嫌そのものだ。急に押し黙り、眉間には深く皺が刻まれて、鋭く睨み付けてくる瞳は狂暴さをも伴って、ギラギラと怒りを讃えていた。
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