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7. Double Blizzard
Double Blizzard 1話
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club-xuanwuのオーナーである粟津帝斗が、ホストの龍を伴って少々遅い店入りをしたその時だった。
「オーナー! おはようございます。ちょうど良かった! 今……お電話しようと思っていたところなんです」
フロアマネージャーを務める黒服の男が、何やら焦った様子で駆け寄って来たのに、オーナー帝斗は首を傾げた。
「どうした。何かあったのか?」
とにかくは話を聞かんと穏やかにそう尋ねる。
「はい、あの……波濤さんが……」
少々蒼白な表情で黒服がそう切り出した瞬間、
「波濤がどうした」
帝斗の背後にいた龍が険しい表情でそう訊いたのに驚いて、黒服の男はますます焦った声音を震わせた。
「はい、あの……少し前にご新規で男性のお客様が四名様ほどお見えになられたんですが、その方たちに連れて行かれてしまいまして……」
その説明に帝斗は無論のこと、龍がただならぬ様子で眉をしかめた。
「連れて行かれたってどういうことだ!」
そう問う声もそこはかとなく厳しい。黒服はオタオタとしながらも、できるだけ詳しい状況を語り伝えた。
◇ ◇ ◇
「この店、男の客も入れるんだろ?」
明らかに常連客ではない男の四人連れが、ふてぶてしい態度でナンバーワンの波濤を指名してよこしたのは、つい一時間ほど前のことだった。
「……いらっしゃいませ。はい、勿論でございますが……お客様、当店にお越し戴くのは初めてでいらっしゃいますか?」
何だか良からぬ雰囲気の男たちを目の前にして、少々緊張しつつも平静を装い対応した。
「何? ここって一見はお断りなわけ?」
他の三人を背に従えながら顎をしゃくり上げ、侮蔑丸出しといった調子で訊いてよこす男は、パッと見たところあまり好ましくない客である。が、だからといって無碍に扱うわけにもいかない。とりあえずは丁寧にマニュアル通りの応対を心掛けるしかなかった。
するとその男は店の入り口に並べられたホストたちのパネルを見渡しながら、薄ら笑いを浮かべてこう言った。
「この……ナンバーワンの”波濤”っての? こいつがいいや。指名してやるからすぐに呼べや」
「……波濤でございますか。申し訳ございません、ただいま波濤は別のテーブルに付いておりまして、少しお待ちいただくか、よろしければ他のホストでも……」
極めて丁寧を装いつつ、そううながした側から、少々苛ついたように『却下!』と強い語尾で返された。
さて、どうしたものだろう――正直なところ、得体の知れない新規の、それも男性ばかりが四人という異例の客の要望に頭をひねらされる。だが、考えあぐねる時間さえも取り上げるように、客の男はズケズケと店内に歩を進め出してしまった。
「なあ、ここって個室はねえのか?」
「……は、ご用意してございますが……」
「じゃあ、そこ使わしてよ。それと酒、ルイ何とかってのでいいや。あとフルーツ盛りとー、つまみを適当に見繕えや。そうだな、こっちは野郎が四人だし腹空かしてんだ。豪華に盛ってきてくんない?」
男の指定した酒は店でも”超”が付くほどの高額な部類に入る。メニュー表も見ない内からスラスラとオーダーを言いつけてくるところを見ると、こういったクラブ通いに慣れた客なのだろうかと、黒服はまた頭をひねらされるハメになった。幸い、個室は上客専用なので、今は空いている――これは一先ず要望を聞き入れるしかないだろうかと思案を巡らせていた――その時だった。
「あと、すぐに波濤ってのを呼んで! 金に糸目は付けねえからよ」
男はニヤリと不敵に笑うと、まだ勧めもしない個室のドアを自ら開けて、有無を言わさずといった調子でドカリとソファに腰掛けてしまった。そして、連れの男三人にも遠慮せずに座れと顎をしゃくる。
致し方なしに、一旦はフロアへと下がるしかなかった。
その後、波濤に事情を説明するも、どうやらフロア内でも今の入店の様子を見ていた者がいたようで、割合中堅ホストの純也ともう一人が心配そうに駆け寄ってきた。
「あの客、何なんスか? 良かったら俺らヘルプに入りましょうか?」
彼らはこの店でも常にナンバーテン内には顔を揃える実力者である。波濤の後輩に当たり、新人の頃から彼のヘルプに付いて色々教えてもらった恩もあるのか、本当に心配そうにしていて、役に立ちたいという思いが痛いほど伝わってくる。
黒服もその方が安心だと思い、一先ずは純也らの好意に甘えることにした。
「オーナー! おはようございます。ちょうど良かった! 今……お電話しようと思っていたところなんです」
フロアマネージャーを務める黒服の男が、何やら焦った様子で駆け寄って来たのに、オーナー帝斗は首を傾げた。
「どうした。何かあったのか?」
とにかくは話を聞かんと穏やかにそう尋ねる。
「はい、あの……波濤さんが……」
少々蒼白な表情で黒服がそう切り出した瞬間、
「波濤がどうした」
帝斗の背後にいた龍が険しい表情でそう訊いたのに驚いて、黒服の男はますます焦った声音を震わせた。
「はい、あの……少し前にご新規で男性のお客様が四名様ほどお見えになられたんですが、その方たちに連れて行かれてしまいまして……」
その説明に帝斗は無論のこと、龍がただならぬ様子で眉をしかめた。
「連れて行かれたってどういうことだ!」
そう問う声もそこはかとなく厳しい。黒服はオタオタとしながらも、できるだけ詳しい状況を語り伝えた。
◇ ◇ ◇
「この店、男の客も入れるんだろ?」
明らかに常連客ではない男の四人連れが、ふてぶてしい態度でナンバーワンの波濤を指名してよこしたのは、つい一時間ほど前のことだった。
「……いらっしゃいませ。はい、勿論でございますが……お客様、当店にお越し戴くのは初めてでいらっしゃいますか?」
何だか良からぬ雰囲気の男たちを目の前にして、少々緊張しつつも平静を装い対応した。
「何? ここって一見はお断りなわけ?」
他の三人を背に従えながら顎をしゃくり上げ、侮蔑丸出しといった調子で訊いてよこす男は、パッと見たところあまり好ましくない客である。が、だからといって無碍に扱うわけにもいかない。とりあえずは丁寧にマニュアル通りの応対を心掛けるしかなかった。
するとその男は店の入り口に並べられたホストたちのパネルを見渡しながら、薄ら笑いを浮かべてこう言った。
「この……ナンバーワンの”波濤”っての? こいつがいいや。指名してやるからすぐに呼べや」
「……波濤でございますか。申し訳ございません、ただいま波濤は別のテーブルに付いておりまして、少しお待ちいただくか、よろしければ他のホストでも……」
極めて丁寧を装いつつ、そううながした側から、少々苛ついたように『却下!』と強い語尾で返された。
さて、どうしたものだろう――正直なところ、得体の知れない新規の、それも男性ばかりが四人という異例の客の要望に頭をひねらされる。だが、考えあぐねる時間さえも取り上げるように、客の男はズケズケと店内に歩を進め出してしまった。
「なあ、ここって個室はねえのか?」
「……は、ご用意してございますが……」
「じゃあ、そこ使わしてよ。それと酒、ルイ何とかってのでいいや。あとフルーツ盛りとー、つまみを適当に見繕えや。そうだな、こっちは野郎が四人だし腹空かしてんだ。豪華に盛ってきてくんない?」
男の指定した酒は店でも”超”が付くほどの高額な部類に入る。メニュー表も見ない内からスラスラとオーダーを言いつけてくるところを見ると、こういったクラブ通いに慣れた客なのだろうかと、黒服はまた頭をひねらされるハメになった。幸い、個室は上客専用なので、今は空いている――これは一先ず要望を聞き入れるしかないだろうかと思案を巡らせていた――その時だった。
「あと、すぐに波濤ってのを呼んで! 金に糸目は付けねえからよ」
男はニヤリと不敵に笑うと、まだ勧めもしない個室のドアを自ら開けて、有無を言わさずといった調子でドカリとソファに腰掛けてしまった。そして、連れの男三人にも遠慮せずに座れと顎をしゃくる。
致し方なしに、一旦はフロアへと下がるしかなかった。
その後、波濤に事情を説明するも、どうやらフロア内でも今の入店の様子を見ていた者がいたようで、割合中堅ホストの純也ともう一人が心配そうに駆け寄ってきた。
「あの客、何なんスか? 良かったら俺らヘルプに入りましょうか?」
彼らはこの店でも常にナンバーテン内には顔を揃える実力者である。波濤の後輩に当たり、新人の頃から彼のヘルプに付いて色々教えてもらった恩もあるのか、本当に心配そうにしていて、役に立ちたいという思いが痛いほど伝わってくる。
黒服もその方が安心だと思い、一先ずは純也らの好意に甘えることにした。
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