club-xuanwu

一園木蓮

文字の大きさ
60 / 60
8. Flame

Flame 7話

しおりを挟む
 堂々も過ぎる程の物言いに、場の誰もが唖然状態――、
「おい、龍……いきなり何だ……!」
 こんなところで初対面の若者相手に暴露することじゃないだろうと、波濤は思い切り眉をしかめる。
「別に隠す必要ねえだろ。本当のことだ」
 そりゃそうかも知れないが――!
 苦虫を潰したような波濤の表情からは、文句を言いたいのが丸分かりだ。
 この店のホストたちには現役引退を機会に二人の仲を公表していたので、辰也と純也は驚かないながらもタジタジと苦笑を隠せない。龍さんの”嫁自慢”がまた始まったよ――くらいに思っているのだろう。だが、入店の面接に来たばかりの若者相手に突如そんなことを打ち明ける神経が分からないとばかりに、波濤は今にも白目を剥きそうになっていた。
 が、そんな波濤の懸念も若い二人には無用だったようである。
「あの……もしかして、お二人は付き合っていらっしゃるんですか?」
 驚くというよりは興味津々な調子で茶髪の紫月の方が身を乗り出す。続いて、黒髪の遼二の方が二人の左手薬指にはまっている揃いの指輪に気が付いて、何とも興奮気味に瞳を輝かせた。そしてすかさず、
「分かりました。俺、ボーイじゃなくていいです。付き人でも用心棒でも何でもやります! やらせてください!」
 遼二としては、先程この龍が言った『枕営業は必要ない』というひと言が絶大な信頼を生んだようである。目の前のテーブルに突っ伏すように頭を下げながらそう言った様子を見て、龍はこの上なく満足そうにうなずいてみせた。
「よし、決まりな! まあ、安心しろ。お前にはこの店の商品の仕入れとか経理関係なんかを主に手伝ってもらうようにするから。月の半分以上は”嫁”と一緒にいられるぜ?」
 ニヤッと冷やかすようにそう言った龍の脇腹に、ゴツンと波濤の肘鉄が命中する。
「――っと! 相変わらず油断ならねえな」
 嬉しそうに言いつつ、懲りないどころかもっと強く肩を抱き寄せては、頬摺りまでしてみせるオマケ付きだ。
(油断ならないのはどっちだ――!)
 そう言いたいのを呑み込んで、
「と、とにかく……! ”こんな”オーナーの店だが、二人とも本当に入店……でいいんだな?」
 龍の抱擁を押しこくりながら、波濤は若い二人に確認した。
「勿論です! 俺たちも……一日も早くオーナーと代表みたいになれるように、目標持ってバリバリ頑張りますんで!」
「よろしくお願いします!」
 二人揃ってビシッと礼をする。これから勤める先の経営者が、自分たちと同じように男同士で恋仲であると知ったからなのか、はたまた龍と波濤の人柄そのものに惹かれたのかは定かでないが――彼らの表情は生き生きとして、青葉萌えるこの季節の如くだった。



◇    ◇    ◇



 宵闇の降りる頃、街は煌めき出し、ネオンの海の中に幾つもの人生を紡ぎ始める。

 先のオーナーだった帝斗も、その言葉通りにちょくちょくと店へやって来ては、取引先の接待などで盛り立ててくれている。
 龍に気に入られた新入りの遼二は、大忙しながらもやり甲斐を見つけたようで、率先して仕事も覚え、精を出す。片や波濤の下でホストとしてデビューした紫月は、その美麗な容姿からしても目立つことこの上なく、しかも美形を鼻に掛けないフランクな天然さが客受けして、ぐんぐんと業績を伸ばしているらしい。
 そんな紫月にあわやトップをさらわれては立つ瀬が無いと、現役ナンバーワンの辰也や純也らも根性を見せる。
 今宵もホストクラブxuanwuには賑やかで明るい笑い声が満ちあふれていた。



 嬉しいことがあった時、誰かにその幸せな気持ちを聞いて欲しい時、もしくは、寂しかったり辛かったりすることがあった時には――ふらりと此処を訪れてみませんか?
 xuanwuのホストがいつでも全力であなたをお迎えします。
 あなたと一緒に祝い、あなたと共に喜び、時にあなたを癒やし、あなたに元気を贈ります。
 いつでもあなたが心からの笑顔に満ちて過ごせますように――!

「いらっしゃいませ! 今宵もclub-xuanwuへようこそ!」

 心躍る煌めく世界を作るのは、街のネオンの輝きでも店内のシャンデリアの電球でもない。人を思いやる温かな気持ちが紡ぎ出すものなのだと思う。
 いつの時代もそれは変わることのなく――この先も手と手を取り合って、永遠の輝きを貴女と共に――。

-FIN-
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

交際0日婚の溺愛事情

江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。 だから緩やかに終わりを探して生きていた。 ──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。 誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。 そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。 ■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。 ■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

処理中です...