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マフィアの花嫁
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「周さんたちのスマートフォンのみ反応が消えています。電源が落ちていると思われます」
「……ってことは、拉致にでも遭ったってことか」
「断定はできませんが、可能性としては有り得ます。幸い皆さんのピアスや腕時計の方は生きていますので、敵がいるとすればまだ気付かれていないということでしょう」
「……こいつぁやべえ事態かもな。遼は今どこら辺だ? っと、もうウチの近所だな! 源さん、念の為応戦を踏まえて支度に掛かってくれ! 遼が帰ったらすぐ確認に向かう!」
「承知しました!」
源次郎は非常事態を想定して、武器や防弾ベスト、傍受の為の危機やドローンまでを即座に車へと積み込んだ。
その後、数分で鐘崎が帰宅。すぐに汐留へ向かうこととなった。
「念の為、清水はここに残って通信役を頼む。後続部隊の応援が必要になるかも知れん。後を頼んだぞ!」
「承知しました! 若たちもお気を付けて!」
鐘崎と紫月、源次郎、そして幹部補佐の橘と姐さん側付きの春日野の五人で大型のワゴン車に乗り込み、汐留を目指す。他にも若い衆を数人、車種が様々な三台に分乗させて現地へと急いだ。鐘崎や組長の僚一が普段移動に使うような高級セダンタイプのものからスピード重視のスポーツカー、目立たないことを念頭に置いたオーソドックスな車種。どんな事態に転んでもその時々で一番勝手がいい車を使えるようにとの配慮からである。大型のワゴン車には通信機器に武器はもちろんのこと、万が一の怪我などに備えての医薬品なども積み込まれている。
「ピアスのGPSが生きている内にできる限り事態を把握したいと思います」
源次郎がタブレット上の位置を確認しながら言う。
「氷川と李さん、劉さんは同じ位置を示している。ここは――汐留のホテルだな。氷川の社屋からも近い。気になるのは冰の位置だ」
「冰君だけ別行動ってことか」
しかも周ら三人のGPSは一箇所に留まったままだが、冰の方は移動している。
「この早さだと車か――。冰だけ別に拉致されたということか」
「周さんたちのスマートフォンの電源が落ちているということから、お三方は同じ場所で監禁されている可能性が高うございますな。冰さんを人質にして脅しているということかも知れません」
「よし、一旦車を停めて二手に分かれよう。源さんと橘は氷川の方を探ってくれ。俺たちは冰を追う」
「了解しました!」
冰が人質に取られているとすれば、そちらの方に手が必要となってくる可能性が高い。鐘崎は若い衆らの車二台を自分の方に回すことにした。
外はいよいよ台風が近くなってきたのか、風が轟々と音を立てて信号機や電線を揺らしている。雨も然りだ。
「雨風が強くなってきた。急ごう」
と、その時だった。
「お待ちください、若! たった今、周焔殿のスマートフォンのGPSが復活しました!」
「――!? 復活しただと? 氷川のだけか? 李さんや劉さんのは?」
「周殿のだけです」
どういうことだと皆で顔を見合わせたその時、鐘崎の携帯電話が鳴った。相手は周である。
「氷川からの着信だ」
「もしかしたら敵から若に連絡を取るよう言われたのかも知れませんな」
だとすればやたらな返答はまずい。鐘崎はひとまず何も知らないふりを装って通話に出ることにした。
「……ってことは、拉致にでも遭ったってことか」
「断定はできませんが、可能性としては有り得ます。幸い皆さんのピアスや腕時計の方は生きていますので、敵がいるとすればまだ気付かれていないということでしょう」
「……こいつぁやべえ事態かもな。遼は今どこら辺だ? っと、もうウチの近所だな! 源さん、念の為応戦を踏まえて支度に掛かってくれ! 遼が帰ったらすぐ確認に向かう!」
「承知しました!」
源次郎は非常事態を想定して、武器や防弾ベスト、傍受の為の危機やドローンまでを即座に車へと積み込んだ。
その後、数分で鐘崎が帰宅。すぐに汐留へ向かうこととなった。
「念の為、清水はここに残って通信役を頼む。後続部隊の応援が必要になるかも知れん。後を頼んだぞ!」
「承知しました! 若たちもお気を付けて!」
鐘崎と紫月、源次郎、そして幹部補佐の橘と姐さん側付きの春日野の五人で大型のワゴン車に乗り込み、汐留を目指す。他にも若い衆を数人、車種が様々な三台に分乗させて現地へと急いだ。鐘崎や組長の僚一が普段移動に使うような高級セダンタイプのものからスピード重視のスポーツカー、目立たないことを念頭に置いたオーソドックスな車種。どんな事態に転んでもその時々で一番勝手がいい車を使えるようにとの配慮からである。大型のワゴン車には通信機器に武器はもちろんのこと、万が一の怪我などに備えての医薬品なども積み込まれている。
「ピアスのGPSが生きている内にできる限り事態を把握したいと思います」
源次郎がタブレット上の位置を確認しながら言う。
「氷川と李さん、劉さんは同じ位置を示している。ここは――汐留のホテルだな。氷川の社屋からも近い。気になるのは冰の位置だ」
「冰君だけ別行動ってことか」
しかも周ら三人のGPSは一箇所に留まったままだが、冰の方は移動している。
「この早さだと車か――。冰だけ別に拉致されたということか」
「周さんたちのスマートフォンの電源が落ちているということから、お三方は同じ場所で監禁されている可能性が高うございますな。冰さんを人質にして脅しているということかも知れません」
「よし、一旦車を停めて二手に分かれよう。源さんと橘は氷川の方を探ってくれ。俺たちは冰を追う」
「了解しました!」
冰が人質に取られているとすれば、そちらの方に手が必要となってくる可能性が高い。鐘崎は若い衆らの車二台を自分の方に回すことにした。
外はいよいよ台風が近くなってきたのか、風が轟々と音を立てて信号機や電線を揺らしている。雨も然りだ。
「雨風が強くなってきた。急ごう」
と、その時だった。
「お待ちください、若! たった今、周焔殿のスマートフォンのGPSが復活しました!」
「――!? 復活しただと? 氷川のだけか? 李さんや劉さんのは?」
「周殿のだけです」
どういうことだと皆で顔を見合わせたその時、鐘崎の携帯電話が鳴った。相手は周である。
「氷川からの着信だ」
「もしかしたら敵から若に連絡を取るよう言われたのかも知れませんな」
だとすればやたらな返答はまずい。鐘崎はひとまず何も知らないふりを装って通話に出ることにした。
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