44 / 69
マフィアの花嫁
19
しおりを挟む
「良くやってくれた! あとは冰だが……」
ロープは巨大な倉庫の壁半分くらいの位置まで吊り下げられていて、引き上げるには強度的に危うく、何より時間が無い。かといって冰に飛び降りさせるには高過ぎる。加えてこの嵐だ。
「とにかく――爆弾をなんとかするっきゃねえ。俺がロープで冰の所まで降りる!」
とはいえ、なんとか外せたとしても下へ放れば倉庫に多大な被害が出るのは確実だ。爆発の煽りで自分たちも無事ではすまないだろう。
「爆弾を切り離して海へ沈めるっきゃねえ! 冰! そいつは首から下げられているんだなッ!?」
「そうです……!」
首輪のように巻かれたロープから爆弾が吊られていて、冰の腹の辺りでぶらぶらと風に揺られているらしい。かなり重さもあると見えて、嵐に揺られる度にロープが冰の細い首を締め付けているようだ。その証拠に先程から冰の声が掠れていて苦しそうにしている。
「……ッ、まずいな。悠長にやってりゃ冰の首が絞まるぞ」
とするならナイフでそのロープを切り落として海へ投げ込めば、ひとまずは何とかなりそうだが問題は時間だ。こうしている間にも既に数分が経過している。
「冰が吊り下げられた時刻から考えれば――おそらくあと五分もねえ」
どうする――。
考えている間にも一分一秒が刻々と過ぎていく。
「鐘崎さんッ! 逃げてくださいッ! ここにいたら皆さんが危ない! 俺に構わず行ってくださいッ!」
冰は必死に叫んでいる。彼を吊っているロープは雨風の影響でジリジリと亀裂が大きくなっている。おちおちしていれば重さに耐えられなくなって冰が落下するだろう。
それと同時に衝撃で爆弾も爆発する――。
「……ッ! こうなったら一か八かだ……。紫月、おめえの日本刀で飛び降りざまに爆弾のロープを切り落とせるか? まず俺とお前をロープで繋ぐ。俺が先に冰の所へ降りてヤツを支え、首から下がっている爆弾付きのロープを前に突き出して狙いやすいように固定する……」
鐘崎も紫月も命綱として互いの身体を結び、爆弾に繋がるロープを切って海へと放る。上手くいったとしても紫月が宙吊りになる際の重力で、鐘崎も紫月も受ける衝撃が大きいことは容易に想像できる。ロープが身体に食い込むのはもちろんのこと、下手をすれば骨が砕けるか内臓破裂も十分に有り得る。だが爆破時刻が迫っている今、他に選択肢は無い。
「遼、やろう。幸いにして風はめちゃくちゃ強え! 宙吊りになるタイミングで――風を使って出来る限り体重を消すようにする。おめえは冰君を吊ってる方のロープが切れても彼を下へ落とさねえようしっかり支えてやってくれ!」
「分かった。では行くぞ――!」
春日野が持参してきたライトで冰の位置を照らす。
組員たちが資材庫から調達してきたロープを大急ぎで身体に巻き付けると、鐘崎は冰の位置を目指して壁伝いに降りて行く――。
男たちの命を賭けた必死の救出劇が始まった。
ロープは巨大な倉庫の壁半分くらいの位置まで吊り下げられていて、引き上げるには強度的に危うく、何より時間が無い。かといって冰に飛び降りさせるには高過ぎる。加えてこの嵐だ。
「とにかく――爆弾をなんとかするっきゃねえ。俺がロープで冰の所まで降りる!」
とはいえ、なんとか外せたとしても下へ放れば倉庫に多大な被害が出るのは確実だ。爆発の煽りで自分たちも無事ではすまないだろう。
「爆弾を切り離して海へ沈めるっきゃねえ! 冰! そいつは首から下げられているんだなッ!?」
「そうです……!」
首輪のように巻かれたロープから爆弾が吊られていて、冰の腹の辺りでぶらぶらと風に揺られているらしい。かなり重さもあると見えて、嵐に揺られる度にロープが冰の細い首を締め付けているようだ。その証拠に先程から冰の声が掠れていて苦しそうにしている。
「……ッ、まずいな。悠長にやってりゃ冰の首が絞まるぞ」
とするならナイフでそのロープを切り落として海へ投げ込めば、ひとまずは何とかなりそうだが問題は時間だ。こうしている間にも既に数分が経過している。
「冰が吊り下げられた時刻から考えれば――おそらくあと五分もねえ」
どうする――。
考えている間にも一分一秒が刻々と過ぎていく。
「鐘崎さんッ! 逃げてくださいッ! ここにいたら皆さんが危ない! 俺に構わず行ってくださいッ!」
冰は必死に叫んでいる。彼を吊っているロープは雨風の影響でジリジリと亀裂が大きくなっている。おちおちしていれば重さに耐えられなくなって冰が落下するだろう。
それと同時に衝撃で爆弾も爆発する――。
「……ッ! こうなったら一か八かだ……。紫月、おめえの日本刀で飛び降りざまに爆弾のロープを切り落とせるか? まず俺とお前をロープで繋ぐ。俺が先に冰の所へ降りてヤツを支え、首から下がっている爆弾付きのロープを前に突き出して狙いやすいように固定する……」
鐘崎も紫月も命綱として互いの身体を結び、爆弾に繋がるロープを切って海へと放る。上手くいったとしても紫月が宙吊りになる際の重力で、鐘崎も紫月も受ける衝撃が大きいことは容易に想像できる。ロープが身体に食い込むのはもちろんのこと、下手をすれば骨が砕けるか内臓破裂も十分に有り得る。だが爆破時刻が迫っている今、他に選択肢は無い。
「遼、やろう。幸いにして風はめちゃくちゃ強え! 宙吊りになるタイミングで――風を使って出来る限り体重を消すようにする。おめえは冰君を吊ってる方のロープが切れても彼を下へ落とさねえようしっかり支えてやってくれ!」
「分かった。では行くぞ――!」
春日野が持参してきたライトで冰の位置を照らす。
組員たちが資材庫から調達してきたロープを大急ぎで身体に巻き付けると、鐘崎は冰の位置を目指して壁伝いに降りて行く――。
男たちの命を賭けた必死の救出劇が始まった。
22
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる